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桑原 秀待(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







桑原 秀侍(神村学園)投手 175/80 右/右 





 「この夏急浮上」





 夏の鹿児島大会が始まるまでは、正直ドラフト候補としては良く知らなかった 桑原 秀侍 。今年の鹿児島を代表する投手だという評判を訊いて、その投球に注目していた。なるほど噂どおりの剛腕で、140キロ台後半のボールをビシバシ投げ込んで魅せた。そんな男が、プロ志望合同練習会に出場してきた。


(投球内容)

中背の体格ながら、全身をめいいっぱい使って投げ込む力投派です。

ストレート 常時140キロ台~MAX149キロ ☆☆☆★ 3.5

 非常に気持ちのこもったボールを投げ込み、勢いも感じさせますし実際空振りも誘えます。かなりボールは暴れるのですが、甘いゾーンにあまり入って来ないところは良いところ。夏の鹿児島大会準決勝・樟南高校戦では、7回1/3イニングで1四死球と、アバウトでも四死球連発といった危うさはあまりありません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーやカット系のボールでカウントを整えられる一方で、追い込むと落差のあるフォークやチェンジアップで空振りを誘えます。フォークは130キロ台で高速で沈み、チェンジアップはカーブのような100キロ台で落差よく沈むという独特の球種です。荒っぽい速球派に見えながら投球を破綻させないのは、しっかりカウントを整えられる変化球があること。そして、追い込むと速球だけでなく縦の変化球で空振りが奪えるというのは、ポイントが高いところです。

その他

 クィックは、1.05秒と基準以上。投げていない時は、ショートでも動きの良い選手なので、フィールディングなどは非常に鋭い。バッティングにも良いものを持っており、まずは150キロ投げられる投手としての才能を試されると思うが、状況次第では野手にコンバートされても不思議ではない。個人的には、実は野手の方が将来性は高いのではないかとみている。

(投球のまとめ)

 全身を使った力投派で、今後の伸び代・余力という意味ではどうだろうか? しかしこの投球でも、試合終盤でも勢いが落ちない馬力は確かなものがある。また要所では良いところにズバッと決められたりと踏ん張れ、荒削りでも制球を乱して自滅するとかそういったところがないのは良いところ。またこれだけの速球がありながら、変化球レベルが低くないところも評価できる。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を良く高くまでクィっと引き上げて来る力投派。それでも軸足一本で立ったときには、膝に力みがなくバランス良く立てている。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻が一塁側に落ちてゆくのが遅いのは気になるが、ある程度は身体を捻り出すスペースは確保できている。落差が鈍る可能性はあるが、カーブやフォークといった球種を投げられないほどではないだろう。実際に、縦の変化球の落差も悪くない。

 足を前に大きくステップさせることで、身体を捻り出す時間を確保。この選手の変化球がいいのは、こういった部分の動作がしっかりできているからだと考えられる。そのため将来的にも、武器になる変化球を身につけて行ける可能性は広がってゆく。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブをしっかり抱えられていないので、外に逃げようとする遠心力が抑え込めず、軸が大きくブレてしまいがち。そのため両サイドの制球を中心に、コントロールが乱れやすい。また足の甲での地面の捉えも浮いてしまっているので、浮き上がろうとする力を抑え込めずボールが高めに集まったり抜けやすい。それでもなんとか投球を成り立たせているのは、非常に「球持ち」が良いことで、ボールをある程度制御できているからではないのだろうか。それを可能にしているのも、「着地」までの地面の捉えを遅らせることができているから。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークを投げられないというほどではないように思います。現状それほどそういった球種も多くは使ってきませんし、この点はあまり気にしなくても良さそうです。

 気になるのは、振り下ろす腕にかなり角度を付けて投げているところ。ボールを持っている方の肩は上がり、グラブを持っている方の肩はかなり下がって投げるフォームなので、肩への負担が大きいのではないかと。それもかなり全身を使った力投派でもあるので、消耗も激しいのではないかと心配する。日頃から、身体のケアには充分注意してもらいたい。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りが作れているので、打者としては一辺倒に見えて意外に合わし難いのではないかと。ボールの出どころは並ぐらいで、可もなく不可もなし。コントロールミスをしなければ、痛手はさほど食わないのではないかと。

 腕は非常に強く振れて勢いがあるので、変化球も効果的で空振りが誘えるのでは? 足の甲の地面の捉えができていないのは気になるが、前に覆いかぶせさるようなリリースで、体重もグッと乗っていっているようには見える。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」こそ並だが後はしっかりできている。制球を司る動作や故障のリスクが高いのは気になるが、将来的に武器になる変化球の習得などピッチングの幅を広げて行ける可能性は感じられるタイプ。けして力任せなだけな、荒削りなだけの素材ではない


(最後に)

 胸をすくような力投派で、見ていても気持ちがいい。素材として今後の伸び代や余力があるかと言われると疑問だが、けしてただ力押すだけの投手でもない。それだけに、面白い素材ではないかとみている。評価的には、おそらく本会議の下位指名~育成会議での指名になるのではないかとみているが、いずれにしても何かしらの形では指名されるのではないのだろうか。気持ちのこもった、リリーフタイプが欲しい球団が指名してくることになりそうだ。


蔵の評価: (下位指名級)


(2020年 プロ志望合同練習会)