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| シャピロ・マシュー・一郎(22歳・富山GRNサンダーバーズ)投手 193/105 右/右 (国学院栃木-国学院大出身) | |||||||||||
高校時代は135キロ前後の球速ながら、将来的に大幅に速くなりそうと高く評価されていた シャピロ・マシュー・一郎。あれから5年、最速153キロを記録するまでに成長した。そしてその投球は、荒削りな素材型というより、非常に落ち着いた姿に驚かされた。 (投球内容) 国学院大卒業後、進んだ先は日本海独立リーグの富山サンダーバーズ。チームでは主にリリーフとして起用された。大学通算0勝の男が、わずか1年でドラフト注目の存在へ成長した。今季の成績は以下の通り。
セイバーメトリクス指標(25回ベースで計算) FIP:2.45(守備非依存防御率 - 投手の責任のみで計算。実際の防御率2.16よりやや高く、運の影響を示唆) K/9:7.56(9回あたりの奪三振数 - 三振能力の標準指標) BB/9:3.60(9回あたりの四死球数 - 制球力の標準指標) WHIP:1.40(1イニングあたりの出塁許容率 - 出塁を抑える総合力) ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5 球速的には常時145キロ前後と驚くほどではない。ただし、球筋に角度があり、要所で打者の内角を厳しく突いて見逃し三振を奪うケースが多い(K/9 7.56の支え)。多少高めに集まる傾向はあるが、両サイドへの制球力は良好だ(WHIP 1.40の要因)。 横変化 スライダー ☆☆★ 2.5 横滑りするスライダーを時折投げるが、精度・キレはもう一歩。カウントを稼ぐために使うことが多い。 縦変化 フォーク ☆☆☆ 3.0 速球との主なコンビネーションはこの縦変化球。ストンと落ちて空振りを誘うことは少ないが、沈んで引っ掛けさせるケースは少なくない。ストライクゾーンに沈むことも多く、チェンジアップ的な色彩が強い(FIP 2.45の低さを支える)。 緩急 ? 確認した試合では、緩いカーブの使用場面は見られなかった。滅多に使わない球種だろう。 その他 ☆☆☆ 3.0 クイックは1.05秒前後とまずまずで、牽制も適度に鋭い。走者への目配せやボールを長く持って焦らす投球術は目立たないが、ピンチでも落ち着いて自分の投球ができていた。 (投球のまとめ) 絶対的な球速や決め球はないが、角度のある真っ直ぐと縦変化による引っ掛けピッチングが特徴。セイバーメトリクスではFIP 2.45、WHIP 1.40と安定(BB/9 3.60はやや高めで制球改善余地)。一年目から一軍活躍は難しいが、二軍で1年ほど漬け込めば、良いリリーバーになれるだろう。 (投球フォーム) 今後の可能性を考える上で、フォームを分析する。セットポジションから足を引き上げる勢いは平均的で、比較的高い位置まで引き上げる。軸足一本で立つ際、膝から上がピンと伸び切らず力みがなく、全体的に適度なバランスを保っている。高校時代はノーラン・ライアンのような高い足上げが見られたが、現在は控えめだ。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばし、お尻の一塁側への落としがしっかりできているため、体を捻り出すスペースを確保。カーブやフォークのような捻り系球を無理なく投げられる。 ただし、着地までの粘りは平均的。体を捻り出す時間は並みで、曲がり幅の大きな変化より、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げるタイプだろう。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブを体の近くに抱え、遠心力を内に留めているため、軸がブレにくく両サイド制御がしやすい。一方、足の甲での地面捉えが浮きがちで、力を入れると上吊りや高め集まりやすい。「球持ち」は平均的だが、高校時代よりボールを押し込めるようになっている。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としが良く、カーブやフォークを投げても窮屈になりにくい。実際にフォークかスプリット系を多用するが、肘への負担は大きくないだろう。腕の送り出しも高い位置から自然で、肩への負担を感じない。力投派ではないため、疲労蓄積も少ないはずだ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 着地までの粘りやボール出どころが平均的で、フォームに嫌らしさはない。これが被安打の多さに繋がっている可能性がある。体重を乗せてリリースでき、打者の手元まで力のあるボールを投げている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作(着地・球持ち・開き・体重移動)では、体重移動以外が平均的で、改善余地が残る。高め集まりやすい制球と、武器になる変化球の習得が今後の鍵。体への負担が少ないため、プロで新しい球種に取り組みやすい強みだ。 (最後に) 恵まれた体格を活かしたボールと、想像以上の冷静さが印象的。一年目から一軍でバリバリ活躍は微妙だが、二軍で1年成長を促せば大きく化ける可能性がある。下位指名なら本会議指名があっても不思議ではないと評価する。 蔵の評価:☆(下位指名級) (2025年 リーグ戦) |
| シャピロ・マシュー・一郎(国学院栃木3年)投手 191/95 右/右 | |
DeNAの一軍戦力として活躍する 国吉 佑樹 も、秀岳館時代は今の シャピロ・マシュー・一郎 ぐらいの投球だったと記憶している。球速こそ135キロ前後ではあったが、その球速がプロ入り後20キロ程度速くなっても全然不思議ではない。そう思えるぐらい、伸び代を秘めた素材ではないのだろうか。 (投球内容) ノーラン・ライアンのように、足をクィッと高い位置まで引き上げて投げ込んできます。 ストレート 常時135キロ前後(MAX137キロ) ☆☆★ 2.5 球速は常時135キロ前後と、ドラフト候補としては物足りません。またアメリカン人を父に持つハーフ選手なのですが、それほどまだ球威があるといった感じはありません。コントロールもアバウトなのですが、四死球を出すといったほどではありませんでしたが。 やはりこの投手の魅力は、現在の力量ではなく、将来凄く良くなりそうだという予感めいた部分にあるのではないのでしょうか。 変化球 カーブ・スライダー ☆☆★ 2.5 横滑りスライダーでカウントを整えつつ、時々緩いカーブも交えてきます。現状武器になるというよりは、目先を変える・カウントを整えるといった役割にとどまっています。 その他 牽制は、適度に入れてきて平均的。クィックは、1.2秒台と、けして素早くはありません。フィールディングの動きは悪くはありませんが、悪送球などをするなど技術的には微妙です。現状は、細かい駆け引き云々ではなく、力のある球を右打者外角に集めてくるといった投球です。 (投球のまとめ) 細かい駆け引きやコントロールはないものの、右打者外角クロスへの速球やスライダーへの球筋は安定しています。そのため、ここでカウントを整えられるので、四球でランナーを出すということはありませんでした。ただしこの夏の大会でも、登板は極めて限られており、大事なところを任せるのにはまだまだ不安があるということでしょう。スペックは高そうですが、今の完成度で指名して来る球団があるかどうかだと思います。ただし、ロマンはある素材なので、育成あたりならば将来性に賭けてみたいと思う球団は出てくるのではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。足を高い位置まで引き上げて来るフォームで、軸足一本で立ったときに膝から上がピンと真っ直ぐにならないので、力みなく立てていると言えるでしょう。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻は比較的一塁側に落とせています。したがって身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった球種を投げるのに無理はありません。 しかし「着地」までの粘りは平凡で、身体を捻り出す時間が物足りません。これだとキレや曲がりの大きな変化球の習得が厳しくなるので、「着地」までの時間を稼ぐ意識と動作が求められます。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは内にしっかり抱えられているわけではないが、最後まで身体の近くにはある。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ訳はしやすい。足の甲の地面への押しつけは浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」も浅く、ボールを押し込めていないので、低めに良い球が現状行かない。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻は落ちせているので、カーブやフォークをなどを投げても窮屈にはなり難い。またカーブこそ使って来るが、縦の変化球は見当たらず肘への負担は少ないのではないかと考えられる。 腕の送り出しを見ても、それほど無理は感じられない。肩への負担も少なそうで、力投派でもないので(むしろセーブして投げている感じ)疲労も溜め難いのではないのだろうか。故障し難いので、投げ込み等新しい技術は習得しやすいのではないかと考えている。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りも平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。特に合わせやすいわけでも、苦になるほどのものは感じない。むしろ投げミスなどで、甘く入らなければ痛手はそれほど喰らわないのではないのだろうか。 腕はしっかり振れて勢いは感じられるので、空振りは誘いやすいのでは? ただし、カーブを投げる時は多少腕が緩んでいるようにも見える。ボールへの体重の乗せ具合は発展途上で、ウエートがグッと乗せてからリリースできるようになると、球威のある球が投げられるようになりそうだ。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも平均的で可もなし不可もなしといった感じ。別の言い方をすれば、意識や取り組み次第でまだまだ良くなる余地が残されているということ。 コントロールを司る動作には粗さはあるものの、故障のリスクが低いのは明るい材料。「着地」までの時間が確保できれば、もっと武器になる変化球を習得して行ける余地は残されている。現状、技術的にも発展途上だと言えそうだ。 (最後に) 現状の投球内容からすれば、本会議での指名は厳しいのではないのだろうか? ただし高い将来性を感じさせる素材であることを考えると、育成枠 でならば、指名して来る球団が出てきても不思議ではない。いずれにしても、少し長い目で見てあげて欲しい選手ではないのでしょうか。 (2020年 栃木大会) |