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山下 舜平大(オリックス)投手のルーキー回顧へ







 山下 舜平大(福岡大大濠3年)投手 189/93 右/右





 「こんなに変わった投手も珍しい」





 2年春の九州大会で実際に生で見たことがある投手だったのが、この 山下 舜平大。その当時からすでに140キロ前後の球速は投げていたものの、スラッとした体型でマウンドさばきに優れた好投手タイプだった。そのため私は、来夏まで成長しても大学進学タイプになるのかと、さほど興味を示せなかった。しかしこの一年もの間に、見違えるほど身体付きが立派になり、骨太の剛腕投手へと変貌していて驚いた。


(投球内容)

 マウンドさばきの良い投手から、荒削りでも力でグイグイと押すスケール型に変貌。ただし以前からポンポンとテンポ良く投げ込んでくる割に、意外に実戦的なタイプかと思いきや、制球力にアバウトなところがありボールが制御できないところがあった。

ストレート 常時140キロ台後半~151キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 ズシリと重いボールの迫力は、今年の高校生の中でも屈指の迫力があります。コンスタントに150キロ前後のボールを投げ込み、それを試合終盤でも記録できる馬力があります。昨春の頃は140キロ前後だった球速が、一年半もの間に10キロぐらい上がったことになります。当時からボールが高めに抜けることがあり、そのへんは今もあまり変わりません。両サイドには適度に散るものの、高低の制球力に課題があると言えるでしょう。

変化球 カーブ 
☆☆☆ 3.0

 この暴れるストレートでも投球が破綻しないのは、ナックルカーブのような120キロ台のカーブがあるから。この球でしっかりカウントを整えることができるので、四死球で自滅することなく試合をまとめることができていた。逆に昨夏の福岡大会では、このカーブが曲がり切らず決まらず、ストレートも暴れるので投球にならなかったのを覚えている。まさにこの球が決まるかどうかが、現状彼の投球の生命線だと言えるであろう。

 速い球と緩い球、現状これしか球は持っていない。当然プロでは、中間球であるスライダーやチェンジアップなどを織り交ぜて来ないと通用するとは考え難い。あえて彼の才能を考慮して投げさせなかったかもしれないが、これからプロではこういった球の習得に取り組んでゆくことになるのだろう。あるいは今までも取り組んできたものの、中途半端であえて実戦では使える代物ではなかったのかもしれないが。

その他

 合同練習会でも鋭い牽制を魅せていたように、元々牽制はうまい。クィックも1.05~1.10秒ぐらいで投げ込むことができ、基準以上のレベルにある。フィールディングも落ち着いてボール処理ができており、特に投球以外に大きな欠点は見当たらない。

 ポンポンとストイラクを先行させて、テンポ良く投げ込んでくるのが元来の彼の姿。細かい制球力はないものの、元々マウンドさばきの良さは持っている選手だった。

(投球のまとめ)

 制球の粗っぽさや球種の少なさから、野球センスに欠けるポテンシャル型に見えるかもしれない。しかし投球以外の動作にも優れたり、ポンポンと投げ込んで自分のペースに相手を引き込むのは上手く、技術が伴ってくれば元来持っているセンスの良さも引き出されるのではないのだろうか。そのため現在の投球よりも、器用さやセンスはある選手ではないかとみている。それは、初めてみた2年春の時がそういった投手だったからだ。現在は、まだ技術と彼のセンスが上手く合致していないと考えられる。


(投球フォーム)

 では技術的にはどうなのか? フォームを分析してみましょう。ランナーがいなくても、セットポジションで足をクイッと高く引き上げてきます。軸足の膝から上がピンと伸び切り力みを感じる部分はあるのですが、軸足一本で立った時のバランスは悪く有りません。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に落ちています。したがって身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった球種には適しません。そのためフォームの構造上は、あまりこのカーブを投げるのに適したフォームには見えません。

 「着地」までには少し前に足を逃しているものの、地面を捉えるのが早く身体を捻り出す時間も充分ではありません。このカーブしか投げないのは、他の球種も試したものの、あまり芳しくない成果しか得られないので、あえて実戦では使っていなかったという可能性を感じさせるフォームです。まぁ腕の振りは良いですし、難しいカーブを操れていることを考えれば、他の球種も投げられる器用さはありそうなものですが・・・。

<ボールの行方> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。またフォーム全体が縦推進のため、軸がブレ難く両サイドへのコントロールは安定しやすい。しかし足の甲の地面の捉えは浅いので、浮き上がろうする力を抑え込めていない。球持ちは平均的でありボールも押し込めていないので、力を入れて投げるのとボールが高めに集まりやすいフォームなのだろう。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻が落とせない割にカーブを投げてくるので、窮屈になりがち。そのため、肘などを中心に負担がかかっているのではないかと心配になります。また腕の送り出しを見ていても、ボールを持っている方の肩が上がり、グラブを持っている方の肩を下げる負担の大きな投げ方。このへんは、肩を中心に故障の可能性が心配されます。それほど力投しなくても、一定水準のボールを投げられるだけの投手なので、疲労は溜め難いとは思うのですが ・・・ 。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りがさほどない上に、ボールの出どころは平均的。フォームも直線的なことを考えると、打者としてはタイミングは合わせやすいフォームだと考えられます。あとは腕が高い位置から出てくるので、角度によって芯が微妙にズレやすいという特徴はあるのではないかと。

 腕は振れているので、打者としては吊られて空振りを奪いやすい。しかしその一方で球筋がいち早く読まれやすいフォームなので、その効果も薄まり将来的に縦の変化球を習得しても手を出してくれない不安が残ります。ボールにもまだ体重を乗せきる前にリリースを迎えており、それでいてこれだけの重いボールを投げられているのは逆に驚きではあります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「着地」と「体重移動」に課題を残します。また故障のリスクは高く、制球は高めに集まりがちな傾向が強いのが気になります。今後も、武器になる変化球を習得して行けるのか? ピッチングの幅を広げて行けるのかにも疑問は残すフォームです。そのため将来的にも、荒削りな投球を改善してゆくためには、かなり周りの指導力・本人努力などで上手く運ばないと伸び悩む要素は大きく、リスクの高い素材であることは否定できません。


(最後に)

 非常に危うい素材であるのは確かであり、ポテンシャルはピカイチもそれを一軍で通用するレベルまで引き上げさせることは容易ではないと私は考えます。そのため安易に手を出しては行けない選手であり、確かな指導者・方向性を持っている球団に指名して欲しいと願うばかりです。それでも、この未完成さで凄い球を投げるわけですから、秘めたるポテンシャルは破格と言わざるえません。ドラフトでは外れ1位では指名されると思いますが、悪くても2位の早い段階で消えることになるのではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2020年 プロ志望合同練習会)


 








山下 舜平大(福岡大大濠2年)投手 186/80 右/右 





 「思ったほど実戦的ではなかった」





 2年春の九州大会で直に見た時は、手足の長い投手体型から140キロ前後の速球を投げ込んでいた 山下 舜平大。凄みのある素材というよりは、マウンドさばきが良く実戦的な好投手との印象を受けていた。そのため、あまりドラフト候補といった印象を当時は受けなかった。そして続く夏の大会・祐誠戦での投球を見る限り、変化球は抜けて入らず、ストレートも収まり悪く制球に苦しむ登板だった。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。ポンポンとテンポ良く投げ込んでくる投手なので、ストライクが決まる時は自分のペースに相手を引き込むのが上手いタイプなのでしょう。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台前半 
☆☆★ 2.5

 下級生の高校生としては、すでに140キロ前後記録するという意味では悪くない。しかし実際生で見た時は、89マイル(143キロ)まで記録したが、それほどインパクトのあるボールではなかった。当時のメモにも高めに集まりやすいと記していたが、夏の大会ではボールが抜けて制御できずに苦しんだ。元来は、両サイドに散らすコントロールはある程度ある投手だと思うのだが。

変化球 カーブ? 
☆☆ 2.0

 ストレートが制御できなかったので、変化球でと思ったが、変化球も抜けて使い物にならず。この選手の変化球は、スライダーではなくカーブを使ってくる。これが曲がり切らず抜けてしまうと、ストレート頼みになって苦しくなる。普段ならば、この球がしっかりコントロールできるのだろうが。問題は、緩いカーブ以外にカウントをしっかり整えられる変化球が欲しい。決め球云々は、その後の問題かと。

その他

 牽制はかなり鋭いものを織り交ぜ、クイックも1.1秒台と基準レベル。フィールディングも、落ち着いてボールを処理できていた。元来マウンドさばきも良く、野球センスには優れたタイプだと思うのだ。

(投球のまとめ)

 手足の長い投手体型・マウンドさばきの良さからも、今年の福岡を代表する投手ではあると思う。しかし実戦的と思いきや、意外に実戦的でもないところもあり、その辺高校からプロとなるとどうだろうか? それほど制球が乱れがなかった春季大会の投球でも、個人的にはチームメイトの 深浦 幹也 の方に惹かれるものがあったので。


(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、軸足に体重を乗せることなく重心を沈ませる、クィックモーションのように投げ込んでくるタイプです。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、ある程度は落とせている。そういった意味では、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も負担が少なく投げられるのではないのだろうか。

 着地までの地面の捉えも平均的で、可もなく不可もなくといった感じ。充分に身体を捻り出す時間が確保できないので、キレや曲がりの大きな変化球の習得が難しいかもしれない。こういった投手は、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことが求められる。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めている。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは? しかし足の甲の地面への捉えが浅く、浮き上がろうとする力を充分には抑え込めていない。さらに肘を立てて投げるフォームではなく、「球持ち」も浅くボールが押し込めていないので、どうしてもボールは高めに抜けやすい。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブは多く投げるものの窮屈になることは少ないのではないのだろうか。そういった意味では、肘への負担は少なめではないかと。腕の送り出しにも無理を感じるというほどではなく、さらに力投派でもないで疲労も溜め難いではないかと。全般的には、故障はし難いのではないかと考えられる。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りも、ボールのみやすさも並ぐらいなので、特に合わされやすいわけでも苦になるほどのフォームでもない。それゆえに、コントロールミスというのは気をつけたいタイプかと。

 それ以上に手足が長い体型の割に、振り下ろした腕が身体に絡んで来るような勢いや粘りがないのは気になるところ。またリリースも体重を乗せてから放せていないので、上半身や腕の振りでキレを生み出してゆくしかなくなるのである。ボールの質がいまいちなのも、体重移動が不十分だからではないのだろうか?

(投球のまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全てに平凡で特に「体重移動」に物足りなさを残している。足の甲の地面の捉えが浅くボールが押し込めないためにボールが高めに抜けてしまう欠点があり、将来的にも武器になる変化球を習得して行けるかは微妙なフォーム。強味は、負担が少ないので故障し難く、新しい技術習得に専念しやすい部分ではないのだろうか。


(最後に)

 2年夏までの投球を見る限りは、高校からプロというよりは大学タイプなのではという印象が強かった。しかしこの一年の間に、どのぐらい実戦力とポテンシャルを引き上げて来ているのかは興味深い。しかしすでに甲子園中止が発表され、代替大会の開催も危ぶまれる福岡において、彼の成長した姿を確認する機会はあるのだろうか?


(2019年夏 福岡大会)



 









 186/80 という、非常に手足の長い投手体型。球速は、130キロ台後半~MAX89マイル・143キロを記録するスリークォーター。スライダーではなく、緩いカーブとのコンビネーションで投球を組み立ててくる。凄みのある素材というよりは、どちらかというとセンス型。

 それでも2年春で140キロ台を越えてくることを考えると、来夏までにはドラフト候補へと変貌していても不思議ではない。気になったのは、球筋全体が高いところであり、この辺が低めに集められるようになると粘っこい投球も可能になりそうだ。

(2019年 春季九州大会)