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佐藤 輝明(阪神)のルーキー回顧へ







佐藤 輝明(近畿大4年)三塁 187/94 右/左 (仁川学院出身) 





  「規格外な男」





 この男が繰り出すスイングからは、私の想像を超えた打球が飛んでゆく。それも一度や二度ではなく、見ているものの先入観を常にぶち壊してゆく。それが、佐藤 輝明 が、「規格外の男」 と呼ばれる所以なのだろう。


走塁面:☆☆☆★ 3.5

 フルスイングしてから走り出すからなのだろうか? 一塁までの到達タイムは 4.2~4.4秒 ぐらいと左打者としては速くはない。このタイムは、プロの中に混ぜても 中の下 ぐらいのタイム。またこの秋こそ10試合で3盗塁を決めるなど、走塁への意識も高まりつつあった。しかし元来は、それほど足でアピールする、そういったプレースタイルではなかった。

 しかし50メートル6秒を切るような俊足であるのは確かなようで、長打を放った時のベースラニングは実に速い。三塁への到達タイムは、11.5秒前後とかなりの脚力の持ち主であるのは間違いない。プロの世界に入って走塁への意識が高まれば、足でもアピールできる選手になりうるかもしれない。

守備面:☆☆☆ 3.0

 元々は外野を守っていたが、三塁にコンバート。その守備も、だいぶ板についてきた。今でも打球の反応が鈍く、キャッチングにも危なっかしいところが見受けられ、またプロで毎日試合に出るようになったら、ミスは相当するだろうなといった感じはする。フットワークは重苦しく、キャッチングも危なっかしい。強肩であるのは確かなので、スローイングの制球はともかく送球に強さを感じさせるものがあるのは確か。

 しかしアマ時代に佐藤より劣るレベルでも、遥かにうまくなった選手もいる。根本的な身体能力はあるので、鍛え方と本人の意欲次第では、プロの基準レベルの三塁手になっても不思議ではないだろう。何よりプロで守備がうまくなる選手は、センスや持って生まれた身体能力よりも、ミスしてもめげないハートの方が大きいという。彼には、周りの声に動じないだけの独特の鈍感力 がありそうなので、その点では期待が持てる。

 守備でも走塁でも技術的にはまだまだだが、意識や意欲次第では水準以上のレベルまで行けるだけの身体能力とマインドを持っているとは判断したい。またチーム事情によっては、外野にコンバートという選択肢もあるだろうし。


(打撃内容)

 脆いというか粗いというか、タイミングのとり方がうまくないのが打撃に大きな影響を及ぼしてます。その一方で、タイミングがあった時の打球の飛距離のみならず、タイミングがズレているのにスタンドインしてしまったり長打にしてしまうところなどは、この選手の最大の凄みなのではないのでしょうか。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高く引き上げたままバットを倒して構えます。背筋をしっかり伸ばし立てていますが、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスは並ぐらい。全体的には、やや硬さが感じられる構えです。それでも、打席での雰囲気は只者ではありません

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。生粋のスラッガーに見える選手ですが、実は対応力を重視したアベレージヒッターに多く見られる始動のタイミングなのです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を軽く引き上げて、少しベースから離れたアウトステップ気味に踏み込んできます。始動~着地までの時間はあるのですが、足の上げが小さい上にすぐに地面を捉えてしまっているので「間」がうまく取れていません。このへんが、この選手のタイミングのとり方の下手さと独特の脆さに繋がっているのではないのでしょうか。

 軽くアウトステップするように、内角への意識が若干強いように感じます。踏み込んだ足元は、インパクトの際に動かず止まっています。そのため逃げてゆく球や、低めの球にもついて行くことは可能ではないかとは思います。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」に近い位置に早めにバットを引いて来るので、速い球に立ち遅れるといった心配はありません。バットの振り出しをみていると、外角の球に対しては大きなロスはなくインパクトできています。バットの先端であるヘッドも下がることなく、広い面でボールを捉えます。外角の球に対しては、それほど打球が上がるスイングではありません。

 むしろ内角の球をさばく時には、バットを上から振り下ろし脇も閉じてキレイに振り抜けています。バットもボールの下を捉え、打球に角度をつけて飛ばすことができています。彼の長打は、内角寄りの球をさばく時に起きやすいのではないかと思われます。技術的に荒っぽく見える選手ですが、スイング自体は悪い癖がないのが大きな特徴としてあげられます。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 ボールを捉えにゆく時に、大きく頭が動きます。そこで目線がブレて、打ち損じを誘発しやすいのかもしれません。それでも強い上半身の振りに対しても、下半身も負けずに踏ん張れるバランスの良さがあります。軸足の内モモの筋肉も発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 日本人離れしたスイングと規格外のパワーが目を惹きますが、実はスイング軌道に癖はなく、下半身もしっかり受け止められるだけのバランスの良いスイングをしている点は見逃せません。しかし課題は、「間」を作れない下半身の動きにあり、タイミングをうまく図るセンスに欠けているということ。この辺を、プロでうまく改善できるかに懸かっているのではないのでしょうか。


(最後に)

 守備も走力も、現時点で高いレベルにあるとは言えません。しかし持っている走力・地肩はあるので、本人の意欲次第ではこれを売りにして行けるだけのポテンシャルは秘めています。打撃に関しては、パワーは間違いないですが対応力に大きな課題を抱えています。この辺を、プロの指導で改善されたり、本人が経験を積む中で何かを見つけて行けるかではないのでしょうか。かなり危うい素材だとは思いますが、こういう選手を一流にしてこそのプロだと思うので、そのへんは阪神の育成力が問われます。セ・リーグにこういった選手が入った記憶がないぐらいの規格外の素材ですが、低打率でも本塁打王みたいな、そんな尖ったな選手に育つことを期待してやみません。イメージ的には、規定打席最低打率ながら本塁打王に輝いた ランス(広島) を彷彿とさせる選手です。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)


 








佐藤 輝明(近畿大3年)三塁&外野 187/92 右/左 (仁川学院出身) 
 




 「ドラフトの目玉になるかも」





 本命なき今年のドラフト戦線において、一気に主役に躍り出るかもしれないのが、この 佐藤 輝明 。アマ屈指の飛ばし屋で、和製大砲が欲しいと思っている球団にとっては魅力的な素材なのだ。最終学年でのアピール次第では、複数球団が1位に入札しても不思議ではない。

走塁面:
☆☆☆ 3.0

 50メートルを5秒台で走ると言われる脚力だが、一塁までの塁間は左打席から4.2秒~4.4秒ぐらい。これはドラフト指名される左打者としては、中の下 ぐらいのタイムであり、けして突出した数字ではない。1年春からレギュラーとして試合に出続けているが、過去6シーズンでの最多盗塁は僅か2個。それだけ現時点では、足でアピールするタイプでもないのだろう。

守備面:
☆☆★ 2.5

 高校時代は捕手もやっていたそうだが、近大入学後は外野手に専念。また3年秋からはサードにコンバートされているが、正直動きは危なっかしい。ただし3年秋のシーズンでは、13試合で無失策。肩も強そうで、最終学年では上のレベルでもサードを任されるほどの力量なのか見極めて行きたい。


(打撃内容)

 打てるポイントが限られているのかわからないが、脆いというか粗い印象は否めない。それでも、けしてしっかり芯で捉えていたとも思えない打球がレフトスタンドに入るなど、そのパワーは2020年度の候補の中でも屈指のものがあるといえるであろう。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えバットを寝せて構えます。腰の据わり具合・両眼での前の見据え方、全体のバランスとしては並みぐらい。打席では少し固さは感じられるものの、大きな体で威圧感がある。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを迎える直前に動き出す、「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅い段階での始動は、日本人のパワーやヘッドスピードを考えると使いこなすのは難しいのだが、外人並の筋力とヘッドスピードのある彼ならば、このタイミングでも結果を残せるかもしれない。そういっった意味では、個人的には大変興味深いものはあります。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を少しだけ浮かし、軽くベースから離れたアウトステップを採用。始動~着地までの「間」がほとんどないので、それだけ狙った球を打ち損じないだけの「鋭さ」が求められます。現状そこまでの技術がないので、打ち損じることが多く粗さを感じさせる要因に。

 軽くアウトステップするように、内角への意識が高いように思います。ステップの幅も狭い気はするものの、インパクトの際に前の足はしっかり止まっており、上半身と下半身のバランスが取れているのは非凡なところ。内角寄りを引っ張るのを好むものの、外角でも甘めの外角球や高めのゾーンの球ならば、けしてさばけないわけではありません。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、特に力みなくボールを呼び込めている。内角の球をさばくときは、インサイドアウトで振り出せており、インパクト後は下から上に振り抜くのでホームランになりやすい。また外角の球に対しては、振り出しはシンプルで癖がなく、インパクトの際にもバットの先端であるヘッドも下がらずにボールを捉えることができている。こちらの打球は元来あまり角度がつき難いが、尋常じゃないパワーでライナーのままスタンドに叩き込むことがある。

 気になるのはボールを呼び込む際にバットのヘッドが投手側に倒れてから振り出す分、インパクトまでヘッドの移動距離が長くなりロスが大きい点。それでもフルスイングによって、強烈な打球を生み出すことができている。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動はそれなり。体の開きは我慢できているものの、ステップが狭いぶん足元は少々窮屈に感じられ、打撃に幅が限られていることが伺われます。

(打撃のまとめ)

 タイミングのとり方に幅がないので、どうしても打てるポイントは限られている気がします。またボールを捉えるまでの動きにもロスがあり、打ち損じも少なくないのではないかと。タイミングさえあれば、強靭な肉体から繰り出されるフルスイングで、強烈な打球や飛距離を生み出すことができます。今後その確率を、いかに高めて行けるかではないのでしょうか。基本的にチェンジアップのような抜く球や、縦の変化球の対応は苦手にしているように見えました。


(最後に)

 脚力や肩はあるのかもしれませんが、それを実戦で活かし切れていないように感じます。打撃もポイントが限られた粗い打撃を、将来的に改善できるかは微妙な気はしています。ポテンシャルは間違いなく一級品ですが、プロで活躍できるのか?という観点では、まだまだ懐疑的な見方はしています。それでも最終学年である程度の存在感を示せれば、上位指名は揺らがないのではないのでしょうか。問題は本人が、どのぐらいのレベルを追求しているのかに懸かっていると思います。そんな本人の目指すべきところを、最終学年では感じ取れればと思っています。


(2018年 神宮大会)