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矢野 雅哉(広島)内野手のルーキー回顧へ







矢野 雅哉(亜細亜大4年)遊撃 171/72 右/左 (育英出身) 
 




 「ねちっこい」





 強肩や快速ぶりに目を奪われがちな 矢野 雅哉 。しかし今どき珍しいぐらい、ネチネチファールで粘ったり、セーフティバントで揺さぶったりできる貴重なタイプなのだ。


走塁面:☆☆☆☆ 4.0

 一塁までの塁間を、3.8秒台で走り抜けるなど走力もプロでも上位クラスの脚力。昨秋は6盗塁・今秋も5盗塁と、出塁すればすかさず次の塁を陥れてくる。また、上記にも記したように、セーフティで相手を揺さぶるなど走力を全面に出したプレースタイルなのだ。盗塁技術が図抜けているかはまだ疑問だが、根本的な走力があることは間違いない。

守備面:☆☆☆☆★ 4.5

 ネチネチした打撃とは対照的に、守備は実にスケールを感じさせる。フットワークも柔らかく、プレーにもスピード感溢れる遊撃手。ただ動きが良いだけでなく、最初の一歩目の反応も鋭く、それでいて安定感も悪くない。なにより、肩に関しては球界でも指折りになれるのではないかというぐらい滅法強い。守備に関しては、日本人としては規格外の領域まで行っても不思議ではないだろう。


(打撃内容)

 昨秋は、打率.415厘で東都リーグの首位打者に。しかし今秋は、打率.200厘と低迷。しかし出塁率に関しては、10四死球を選び.400厘と貢献した。強く・鋭くというよりは、当てて転がす嫌らしいタイプ。ミート力自体は、高いものを持っている。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が下る時につま先立ちして、投手の重心が前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ツーステップを採用すると始動がリリース直前になりがちですが、この選手はそこまで遅くならないところは良いところ。ボールをできるだけ引きつけて叩く、典型的な二番打者タイプなのだと言えるでしょう。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 小さくステップし、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」が取れないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプ。昨秋はインステップして踏み込んでいたのですが、今秋は真っ直ぐ踏み出すオーソドックスな踏み出してに変わっていました。彼のような足を武器にする選手は、長い目で見ればそちらの方が良いのではないかと思います。一歩目の走り出しが早くなったことで、一塁までの到達タイムも上がりました。

 また踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレずに我慢。元々逃げてゆく球や低めの球に、喰らいついてゆくのは得意です。特に、三遊間に転がす打球が多いのも特徴の一つですから。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、始動が遅くても速い球に立ち遅れる心配はありません。バットの振り出しは、インサイドアウトでもしなりを活かすスイングでもなく、両者の中間的なスイング。インパクトまでのロスもそれほど感じませんし、インパクトの際にバットの先端であるヘッドが下がらず、フェアゾーンにボールを飛びやすい形を作れています。

 鋭くコンパクトではあるのですが、やはりひ弱なイメージは拭えません。ファールで粘ってネチネチという、日本ハムの 中島卓也 的な打撃をしてきます。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが小さく、目線の上下動が少ないのが良いところ。身体の開きも我慢できていますし、軸足にも粘りが感じられます。

(打撃なまとめ)

 踏み込んで打っていたのを、少しオーソドックスにしたところが大きな変化か? それ以外は、それほど変わったところはないのでは? ファールで粘ったり、ライナーで鋭くというよりは三遊間を転がしてゆくタイプで、今の野球の主流とは少し逆行するところはあります。しかし個人的には、大変こだわりがあって好きなタイプです。守備・走塁が目立つだけに、どうしても打撃の弱さは否めません。しかしこだわりが感じられる選手なので、面白いのではないかとみています。


(最後に)

 メジャー級の遊撃守備と、抜群のスピード感を感じさせる走力。打撃も粘っこく、実に喰らいつく姿勢が良いです。プロのスピード・球威に苦労することは予想されますが、それを克服できれば根本的なミート力もあります。昨今では小柄な選手でも、バレルゾーンを意識したような大きな打撃をする選手が多いなか、自分の特徴を活かそうという筋の通ったプレーヤー。下位指名ですが、カープのニ遊間を担うような選手に育ってゆくのではないかという、期待を抱かせてくれる選手でした。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)









矢野 雅哉(亜細亜大3年)遊撃 173/71 右/左 (育英出身) 





「プロっぽくはないけれど」 





 バットを短く持って、コツンコツンと当ててくるスタイルの 矢野 雅哉 。秋のリーグ戦では、東都の首位打者を獲得。俊足・強肩・巧打が持ち味だが、パッと見ドラフト候補というよりも社会人タイプには見えて来る。





走塁面:
☆☆☆★ 3.5

 一塁までの塁間を、左打席から3.95秒前後で到達する俊足。その上セーフティバントをしようと魅せて相手を揺さぶったり、隙きあらば次の塁を果敢に狙いにゆく積極的な走塁も光る。また3年秋のシーズンでは6盗塁を記録するなど、ドラフト候補としても 上の下 クラスの脚力はあると見て良いのではないのだろうか。

守備面:
☆☆☆☆ 4.0

 非常にフットワークも柔らかく、プレーにもスピード感を感じる遊撃手。ただ動きが良いだけでなく、秋のシーズンでは13試合に出場し無失策の安定感。2年秋・3年春と打撃が低迷しても使い続けたのは、それだけ彼の守備を高く評価していたからだろう。また高校時代は、投手として148キロも記録したというほどの強肩。地肩の部分でも、プロの遊撃手として見劣る心配は無さそうだ。実際生で見ていても、かなり上手いと思わせてくれる選手。どの領域の守備力なのか、最終学年では注意深く見極めて行きたい。





(打撃内容)

 けして力感のあるスイングではなく、むしろ少しひ弱にも感じるぐらい。しかし当てるのは上手く、ミート力には光るものがあります。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。バットを短めに握りつつ、腰の据わり具合・全体のバランス・両眼で前を見据える姿勢もまずまず。打席で、ちょっと嫌らしくて面倒なタイプという雰囲気は漂わせている。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が下がり始める時にベース側につま先立ちするも、本格的に動き出すのは投手の重心が前に移動する段階の「遅めの仕掛け」を採用。ボールをギリギリ見定めてから動き出すので、生粋のニ番打者タイプ らしい仕掛けとなっている。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」は短いので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められます。ベース側にインステップして来るように、外角への意識が強いようです。

 踏み込んだ前の足はしっかり止まっており、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつけます。バットを短く持っていても、踏み込んで打ちにゆくように当て逃げしようという意識はありません。あくまでも、コンパクトにしっかり振り切ります。ただし左の巧打者がインステップすると、どうしても最初の一歩目が遅くなるので率が残し難いというデメリットも存在することは否定できません。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配は無さそう。バットの振り出しは、極端なインサイドアウトでも、バットのしなりを活かすようなスイングでもなく、その中間的なものかと。それでもボールを捉えるまでにはロスは感じなく、コンパクトにかつシッカリ振りきってきます。

 インパクトの際にはバットの先端であるヘッドも下がっていませんし、フェアゾーンにボールが飛びやすい形を作っています。右投げ左打ちの打者に見られる、独特のひ弱さはありますが、上手くそのへんも理解して外角の球に対応できているようには感じました。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げも小さく、目線の上下動も生じ難いです。身体の「開き」も我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて軸回転でスイングできています。調子の波も少なそうですし、軸足も粘りが感じられます。頭を上手く残して、左方向にもしぶとく流します。

(打撃のまとめ)

 まだスイングが凄く鋭いとか、甘い球を絶対逃さない隙き無しの凄みを感じるとか、そういった特別ものまではありません。しかし技術的にも完成されており、当て勘も悪くないと思います。あとは、プロの球に対し力負けしないだけの、強さなり鋭さをいかに磨いて行けるかではないのでしょうか。


(最後に)

 しっかり守れる遊撃手を探している球団としては、興味を惹かれる人材ではないかと。位置づけとしては、大学JAPANの遊撃手・児玉 亮涼(九州産業大)を左にしたようなタイプでしょうか。いずれにしても最終学年において、何か内から滲み出るような凄みが出てくるようだと、プロ入りへの旬を迎えたと判断しても良いのかと。そういった内面の部分に注目して、最終学年は追いかけてみたい。


(2019年 秋季リーグ戦)