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村上 頌樹(阪神)投手のルーキー回顧へ







 村上 頌樹(東洋大4年)投手 174/75 右/左 (智弁学園出身)
 




 「物足りない・・・」





 今年唯一登板した、東都秋季リーグ戦。その開幕戦でマウンドにあがった 村上 頌樹 は、右前腕肉離れにより4回で降板した。しかし、試合序盤からその影響があったのか? 久々にみる彼の投球には、良い頃に比べると精彩を欠く内容だった。そんな最終学年での、村上 の投球を振り返ってみたい。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込む中背の好投手。春季リーグがコロナで中止になり、その中でも開幕戦での途中降板しか最終学年ではアピールできませんでした。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0

 唯一登板した秋のリーグ戦では、130キロ台後半ぐらいと、明らかにボールの勢い・球威ともに物足りませんでした。好調時には140キロ台中盤を叩き出し、糸を引くような真っ直ぐが球速以上の威力を感じさせます。時々高めには抜ける球があるのですが、両サイドにきっちり投げ分けられるコントロールがあります。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 打者の手元で、小さく鋭く変化するスライダーでしっかりカウントを整えられます。他にも緩いカーブや左打者にはチェンジアップやフォーク系の球もあります。昨年から気になるのは、低めの変化球が見極められてしまうこと。この秋の登板でも、4イニングで1三振とあまり変わっていた感じはありませんでした。変化球でカウントは整えられますが、三振を奪えるような武器はありません。

その他

 牽制は、鋭いものを積極的に混ぜて刺しに来ます。またクィックは、1.05~1.10秒ぐらいとまずまず。フィールディングも落ち着いて処理できており、投球以外の動作にも欠点はありません。

 普段はポンポンとテンポ良く投げ込み、自分のペースに相手を引き込むのが上手い。また、ランナーを背負うと長くボールを持ち、打者や走者を焦らすこともできています。コース一杯に投げ込んだりと、微妙な出し入れで勝負できるコントロールや投球術もあります。そういった野球センスの高さは、この投手の一番の持ち味かと。

(投球のまとめ)

 明らかに秋季リーグでの登板は悪すぎて参考になりませんでしたが、何か上積みの片鱗があったのか?と言われると正直わかりませんでした。そういった意味では、下級生のとき良い時の内容を、どう判断するかによって評価は別れそうです。


(投球フォーム)

 実際の投球では変化がよくわからなかったので、フォームの観点から考えてみたいと思います。セットポジションから、スッと適度な勢いで引き上げます。軸足一本でたった時に、あまり膝に余裕はないのですが、バランスとしては平均的な立ち方でした。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としにはやや甘さは残すものの、カーブやフォークといった捻り出して投げるボールが投げられないほどではないと思います。また「着地」までの粘りも平均的で、身体を捻り出す時間もそれなりといった感じでしょうか。昨年よりは、お尻の落としが少し一塁側に落ちているようにも見えました。

<ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。そのため、両サイドへの投げ分けはコントロールしやすいと考えられます。足の甲での地面への捉えも浅くないので、力を入れて投げてもそれほどボールは上吊らないのでは?また「「球持ち」も良く、指先まで力を伝えられるので、細かい制球力もつけやすいはずです。実際には、少しボールが高めに抜けてしまうボールもあるのですが・・・。それでも、制球を司る動作はハイレベルです。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残りますが、カーブやフォークが投げられないほどではないように見えます。また、これらの球種もさほど多くは使って来ることもありません。そのため窮屈になって肘に負担がかかるということも、現状の状況ならばないのでは。

 ボールの送り出しを観ても、肩に負担がかかるようには見えません。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いと考えられます。したがって故障へのリスクは、かなり低いフォームだと言えるでしょう。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりですが、ボールの出どころがやや見やすい傾向にあります。そのためコースを突いたような球を打ち返されたり、縦の変化球を見逃されてしまうのはそのせいかもしれません。

 腕は適度に振れて勢いはあるので、空振りは誘いやすいのでは。またボールにも適度に体重を乗せてリリースできており、打者の手元まで伸びのあるボールを投げ込めています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に優れている一方で、「開き」が早いのが気になります。それでもコントロールを司る動作に優れ、故障のリスクも比較的低いと考えられます。武器になるほどの変化球が習得できるかが微妙ですが、あとの動作は高いレベルでまとまったフォームではないのでしょうか。


(最後に)

 元々スケールで魅了するというよりも、完成度とまとまりで勝負するタイプ。いざプロで勝負した時に、先発タイプではあるけれど、プロで先発を任されるほどスケールがあるかと言われると疑問は残ります。特に、球界でも指折りの投手陣が揃う阪神ではなおさらです。むしろこの選手は、須田幸太(DeNA)のような、リリーフの方が天性の投球センスが活かせるタイプかもしれません。まずは調子を戻すことから始めたいところですが、それは短期間のうちにも可能でしょう。問題は、今後の上積みがどの程度残されているのか? ある意味好調さをアピールできていたとしても、中位での指名は妥当だったのではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2020年 秋季リーグ戦)










村上 頌樹(東洋大3年)投手 174/75 右/左 (智弁学園出身) 





 「完成度が高い」





 智弁学園の下級生時代から、完成度の高いピッチングが際立っていた 村上 頌樹 。東洋大進学後には、3年春に6勝をあげ最優秀防御率に。続く秋のシーズンも、防御率 1.26で東都2位の好成績を残した。さらに磨きのかかった投球で、プロでも即戦力になることが期待されている。


(投球内容)

凄みよりも、コントロールの良さが光る実戦的なタイプ。

ストレート 常時140キロ台~中盤 
☆☆☆★ 3.5

 回転数の高いストレートを、低めやコーナーにしっかり集めることができます。球速は140キロ~中盤ぐらいとドラフト候補としては平均的なのですが、ボールの質とコマンドの高さが光ります。以前よりも、ボールの威力・コマンド力に磨きがかかっている感じがします。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 打者の近くで、小さく鋭く変化するスライダーでしっかりカウントを整えられます。また左打者の外角低めには、チェンジアップなどを使ってきます。他にも緩いカーブでカウントを整えられるなど、変化球の投げミスも少ないのが特徴。その反面、低めのボールゾーンに切れ込む変化球を、簡単に見逃されてしまうのが今後の課題かと。こういった球を振らせられるようになると、プロでも即戦力として活躍できるレベルに到達したと言えるのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒とまずまず。牽制も鋭いですし、フィールディングも落ち着いて処理できています。動作に際立つものはないのですが、落ち着いて自分のプレーをして来る安心して見ていられるタイプです。

ポンポンとテンポ良く投げ込み、自分のペースに相手を引き込むのが上手いです。微妙なところに集めて出し入れできる、投球術や制球力もあります。細かいところまで神経の行き届いた、投手らしい投手です。

(投球のまとめ)

 冒頭にも書いたように、けして体格にも恵まれていませんし、プロの打者を圧倒するような凄みのある投球をしているわけではありません。そのへんで、好投はしても結果が残り難いレベルにはまだあるように感じます。繊細なコントロールや完成度の高い投球術を魅せて、ボールになる変化球を振らせられるようにならないと、投球が汲々としてしまいプロでも苦労してしまいそう。そこが、最終学年における、この選手の見極めのポイントになるのではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、今後の可能性などについて考えてみたいと思います。セットポジションから足を引き上げ、空中で足を曲げ延ばししてから投げ込んできます。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっているので、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球には適さない投げ方です。「着地」までの粘りもさほどではなく平均的で、将来的に武器になるような決め球を習得できるのかには疑問が残ります。ただし指先の感覚に優れ器用さはあると思うので、いろいろな球を織り交ぜ目先をかわして行くことはできるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆★ 4.5

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。そのため軸がブレ難く、両サイドへの制球を中心に安定しやすいです。また足の甲でも深く地面を捉えているので、浮き上がろうとする力も抑えられています。ボールも上吊り難く、低めへの投球を実現できています。

 球持ち」も素晴らしく、指先の感覚も抜群。ギリギリまでボールに力が伝えられるので、繊細なコントロールが可能だと言えるでしょう。ことコントロールを司る動作に関しては、最高水準のフォームです。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせないフォームですが、カーブやフォークの頻度は多くないので、そこまで悲観しなくても良いとは思います。今後こういった球種が増えるようだと、窮屈になりがちなので肘への負担などが増すとは考えられます。

 腕の送り出しには無理がなく、それでいてしっかり前で叩ける腕の振りです。したがって肩への負担は少なく、まして力投派でもないので疲労も溜め難いのではないのでしょうか。気になるのは球威・球速がプロレベルだと並なので、これを無理に抑え込もうとして能力以上のものを出そうと頑張り過ぎた時ですね。自分の持ち味を、最後まで見失わないことが求められます。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りが並で、タイミングが合わせ難いフォームではありません。ましてボールの見どころもそれほど見難くはないので、甘く入ると簡単に打ち返されてしまう危険性があります。ボールの質は良いので、いち早くボールを見極められても、想像以上の伸びで打ち損じを誘うということは期待できるかもしれません。

 またそのためか? 球筋がいち早く読まれやすいようで、変化球なども見逃されてしまうことが多いのではないのでしょうか。ボール自体にしっかり体重を乗せてから投げられており、打者の手元まで生きた球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に優れており「着地」や「開き」といった打ち難さを司る動作は平凡なのがわかりました。

 コントロールを司る動作が特筆もので、それでいて故障のリスクも高くはありません。しいて言えば変化球を見極められてしまっているように、今後も武器になる変化球を習得できるのかに不安が残る動作だということでしょうか。


(最後に)

 キャパ的には、これ以上球威・球速を増して圧倒しようとするのはどうかと思います。むしろ変化球を振らせるなどの技術を磨いたり、ボールを小さく動かして芯をズラすなどそういった実戦的な術を磨くことでパフォーマンスを向上させて行くタイプではないのでしょうか。

 現状絶対的なものがないのが気になるところで、そこに改善が見られるかでドラフト順位も変わってきそう。今年の内容次第だと思いますが、現状は2・3位ぐらいの候補かなと思っています。あるいはあまり芳しくない最終学年を過ごすようだと、キャパがあるタイプではないので、名門・強豪社会人チームに進むことになるかもしれませんね。その見極めは、春のシーズンの内容で決まるとみています。


(2019年 秋季リーグ戦)