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 池田 陽佑(立教大3年)投手 183/92 右/右 (智弁和歌山出身)





 「評価は難しい」





 3年秋までのピッチングを見る限り、池田 陽佑 の評価は難しい。確かに、最速で150キロ近いボールを投げ込み、総合力も高い実力派。さりとて、高い評価でプロから指名されるほどのインパクトがあるのかと言われると意見が別れるところではないのだろうか。最終学年での内容次第では、有力な社会人チームに流れても不思議ではないとはみている。


(投球内容)

 3年秋のシーズンは、7試合に登板して、2勝1敗 防 2.33(4位) と、これまた微妙な成績ではある。12月に行われた、全日本大学選抜・松山合宿 にも選出されていた。

ストレート 常時140~150キロ ☆☆☆ 3.0

 最速で150キロ近い球速は記録して来るものの、それほど真っすぐに勢いや威圧感は感じられない。3年秋のリーグ戦では、44回1/3イニングを投げて、11四死球。四死球率は、24.8% と低く、両サイドに中心にボール散らし制球に不安がない

 その一方で、この秋こそ被安打率が 85.7% と悪くなかったが、通算の被安打では投球回数を上回るなど合わされやすい傾向が観られた。このへんは、課題が改善されたと見るべき、たまたまだったのか? は、最終学年のパフォーマンスを観て確認する必要がありそうだ。特にドラフト候補としては、現状真っ直ぐに関しては平均的と見るのが妥当ではないかとみている。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 カットボールのような小さなスライダーや、チェンジアップ系の小さく沈む球でカウントを整えてくる。時々緩いカーブを交えたり、フォークのような縦の変化も織り交ぜてきて、打者に的を絞らせないコンビネーションが売り。ただし、44回1/3イニングで27奪三振と、1イニングあたり 0.61個 と、三振をバシバシ奪うようなピッチングスタイルではない。三振を奪うときは、右打者外角に切れ込むスライダーを振らせるか、ストレートを良いところに決めて、見逃しで奪うことが多い。

その他

 牽制は適度に鋭く、けして下手ではない。クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとそれなり。ベースカバーへの入りは早いなど、投球以外の部分にも大きな欠点は見当たらない。

(投球のまとめ)

 確かに総合力が高く、150キロ近く投げられるスピード能力もあります。ただし、プロとなると、もうワンパンチ欲しい気もして、強力なプロ志望で中位以下でもプロ入りをという意気込みがあれば指名もあるかもしれません。そのため高い順位での指名となると、最終学年でのさらなる上積みが欲しいかなといった印象は受けます。


(投球フォーム)

 最終学年でのさらなる上積みを望むためには、技術的に何が物足りないのか考えてみます。ランナーがいなくても、クィックのように軸足に体重が乗り切る前に重心を沈ませてきます。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすので、お尻は一塁側にしっかり落とせます。したがって体を捻りだすスペースは確保できており、カーブやフォークを投げるのに無理はありません。

 「着地」までの地面の捉えが平均的で、体を捻り出す時間は十分には確保できていません。したがって、曲がりの大きな変化は現状あまり望めません。多彩な球種を操る下地はありますが、武器になるほどの変化球を身につけられるかには疑問が残ります。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで内にしっかり抱えられてはいないので、軸はブレやすく両コーナーへの制球はアバウトになりやすい。しかし実際は、両サイドへのコントロールは安定しているので、その点はあまり気にしなくても良さそう。

 足の甲での地面の捉えも浅いので、浮き上がる力を充分抑え込めていない。力を入れて投げるとボールが上吊りそうなのものだが、この点もそうだとも言えない。「球持ち」が特別良い感じもしないのだが、指先の感覚が良いのか? 制球が大崩れしない。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は一塁側に落とせているので、カーブやフォークを無理なく投げられる。またボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩は下がり気味だが、それほど極端でもないので、肩への負担もさほどでは無さそう。まして、それほど力投派というほどでもないので、疲労もそこまで溜まりやすくはないのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。特に合わせやすいわけでも、合わせ難いわけでもない。以前のフォームがわからないが、この辺が改善されたから被安打が減ったのかはよくわからない。

腕は振れているように見えるものの、投げ終わったあと体に絡んで来るような粘っこさはない。また、充分に体重を乗せてからリリースできているという感じでもないので、球速の割にあまりボールが手元まで来ている感じがしてこない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」がもう少し改善されると、打者を威圧できるような真っ直ぐが投げられるのではないのだろうか。

 故障のリスクはあまり高く無さそうなのと、動作の割に制球が悪くないので、その点はあまり気にしなくてもと。多彩な球種を操れる土台はあるものの、空振りを誘えるような決め球を身につけられるかには疑問が残ります。投球は実戦的ですが、フォームはさほど実戦的とは言えません


(最後に)

 実際の投球もそうだが、けして悪い内容でもないのだけれども、プロとなるとややインパクトが薄い。そのため、明確なプロ志望があって下位でもプロにという姿勢を魅せないと、企業チームに進むことになるのかなといった印象を受ける。そのため、最終学年で明らかに変わってきているなという印象をもたれるかどうかで、指名の有無が決まってくるのではないのだろうか。


(2022年 秋季リーグ戦) 









池田 陽佑(智弁和歌山3年)投手 183/84 右/右 
 




 「急成長」





 選抜の時点では、130キロ台の球がほとんどだった 池田 陽佑 。特に気になる存在ではなかった彼が、センバツ以後大きく成長した。夏の大会では、MAXで150キロに到達。その活躍も認められ、∪18の日本代表にも選出された。まさに、劇的なな成長ぶりだと言わざるえない。


(投球内容)

ストレート 常時140~MAX150キロ ☆☆☆★ 3.5

 先発をしていても常時140キロ台を記録するようになり、適度な勢いと球威が感じられる球になってきました。ボールもある程度両サイドにコントロールできていますし、元々の良さを残しつつ素直にパワーアップを図れたことがわかります。この夏の甲子園でも3試合に登板し、20回1/3イニングで3四死球と余計な四死球は出しません。何か投球に訴えて来るような迫力はないので、高校からプロいうよりも大学などで実績を残してからといった匂いがぷんぷんとしてきます。

変化球 スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 身体の近くで小さくキュッと曲がるスライダーで、カウントを整えます。時々縦の変化球も投げるのですが、割合見極められて手を出してもらえないことが多いです。まだ縦の変化球の精度には課題がありますし、他にチェンジアップなどを織り混ぜ投球を組み立てています。縦の変化球が効果的になると変わってくると思いますが、現状はそれほど三振をバシバシ奪ってくるわけではありません。それでも甲子園では、20回1/3イニングで16奪三振でした。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまず。牽制等の技術はよくわからなかったのですが、適度に試合をまとめられる野球センスの高いタイプではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 なんとなくプロ志望届けを出さないのだろうなという選手は観ているだけでわかるものですが、この選手も大学にゆくのだろうなといった感じがします。元々好投手タイプだっただけに、あまり投球に凄みみたいな訴えかけてくるものがありません。ただしすでにかなりのレベルまで来ているので、大学でも下級生の頃からの活躍が期待できます。そこでも志しを高く持って精進し続ければ、4年後は計算できる即戦力候補として上位指名も狙える素材ではないのでしょうか。


(投球フォーム)

セットポジションから、足をスッと引き上げて投げ込んできます。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻は適度に一塁側に落とせており、甘さは残しているもののカーブで緩急をつけたりフォークを投げるのには問題は無さそう。「着地」までの粘りも前に大きく前にステップさせることで、「着地」までの時間は稼げている。したがって将来的には、キレや曲がりの大きな変化球を習得できる可能性は高い。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に抱えられているわけではないが、最後まで身体の近くにはある。したがって、両サイドへのコントロールはつけやすい。しかし足の甲の押しつけが浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それでも「球持ち」はよく、前でボールを放せている。そのため、指先の感覚も悪くないのだろう。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としも悪くないので、窮屈さを感じずらく肘への負担は少なそう。また現時点では、ほとんどカーブは観られず、フォークなどもそれほど頻度が高いわけではない。今後の縦の変化を多投するようになれば、多少肘への負担も増すだろうが。

 腕の送り出しをみても、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいというタイプでもないのではないのだろうか。そういった意味では、故障のリスクの少ないフォームだと言えよう。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りを適度に作れている上に、ボールの出どころも隠せている。そのため、けして合わせやすいといったフォームでもない。

 振り下ろした腕も適度に身体に絡んでおり、体重もある程度乗せて投げられている。したがって、打者の手元まで球威のある球が行っている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち「開き」「体重移動」では、どれもまずまずでレベルが高い。制球を司る動作・故障のリスクも低ければ、将来的にも武器になる変化球を習得できる可能性も感じられる。けして見た目はそんなに理想的には見えないのだが、大きな欠点のない実戦的なフォームとして高く評価できる。


(最後に)

 こういった投手が、リーグ戦でどのぐらいの実績を残せるのかは大変興味があります。総合力的には、今プロ入りしても全く通用しないということはないとは思います。ただこういったタイプは、アマでよりレベルの高い野球を経験することで、段階的に能力を伸ばしてくるタイプ。そのため能力的にはドラフトにかかるレベルにはあると思いますが、あえて指名リストには名前を残さず、アマでの成長を促してみたいものです。


(2019年夏 甲子園)