18ky-4


 




野村 佑希(日ハム)内野手のルーキー回顧へ







野村 佑希(花咲徳栄3年)投手&三塁 185/90 右/右 
 




 「A級ではない」





 18年度の高校球界では、トップクラスのスラッガーと位置づけられる 野村 佑希 。しかし昨年ドラフト1位で指名されたスラッガー達に比べると、ワンランクからツーランク劣る印象は否めない。しかしそれは、あくまでも高校の時点での話。果たして将来的には、どのような位置づけの選手になってゆくのだろうか。


走塁面:
☆☆ 2.0

 一塁までの到達タイムは、右打席から4.5秒前後。これを左打者に換算しても、4.25秒前後とプロの選手としては中の下レベル。昨夏の甲子園では2盗塁を記録したが、今年の夏は予選での6試合に甲子園での2試合でも盗塁は0個。投手をやっていたというのもあるのだろうが、足でアピールしようという意志は感じられない。まぁスラッガーなので、そこまで走力を気にする必要はないだろう。

守備面:
☆☆ 2.0

 2年秋は右翼手として、3年春は三塁手として、そして最後の夏はエースとして大会に臨んできた。右翼手としても打球への反応がイマイチだったが、三塁手としても一歩目のスタート・フットワークがもうひとつで、足回りが良くないのが気になる。肩は投球練習をしないままマウンドに上っても、140キロ台を連発するぐらいの地肩の強さはあるのだが。

 将来的に鍛えればプロのサードを担えるのかと言われると疑問で、結局はプロでは一塁か左翼あたりに落ち着くのではないかとみている。三塁の守備力は、智弁学園時代の 岡本和真(巨人)ぐらいではないかと。





(打撃内容)

 投手に専念するようになって、打者としての陰が薄くなっていた県大会。しかし甲子園では、2試合で10打数ながら、4安打・2本塁打・6打点と、それなりに大器の片鱗は見せてくれた。

<構え> 
☆☆★ 2.5

 打席では前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり・両眼での前の見据え・全体のバランスは、可も不可もなしといった感じ。特にこれだけの強打者の割に、打席では細く見え威圧感が感じられないのは気になる材料だ。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。昨夏は始動が遅すぎたことを考えれば、動き出しを早くすることで動作に余裕は生まれたのではないのだろうか。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出して来る。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいといったタイプ。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にもブレずに止まっている。そのため逃げてゆく球や、低めの球にも食らいつくことができるだろう。昨夏は、踏み込んだ足がブレてしまっていて、「開き」を充分我慢できなかった。その点を改善できたことは、昨夏よりも確実に成長を感じる部分。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はない。遠回りに出ていたバットを、今は上から振り下ろすようになり、インパクトまでの軌道は大幅に改善。インパクトの際にもヘッドは下がりすぎることはなく、大きな弧で最後まで振れています。ただしインサイド・アウトのスイング軌道になったぶん、内角寄りの球を引っ張っての本塁打は増えた。しかしそのぶん、外角の球をバットのしなりを生かして飛ばすようなスイングは少なくなったのではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは大きくないが、目線の上下動は並ぐらい。体の「開き」は抑えられているが、昨夏も指摘したように踏み出すステップの幅が狭いのか? 軸足の形が崩れ窮屈に感じる。そのため軸回転にならず、下半身を使ってのスイングがまだできていない。

(打撃のまとめ)

 目に見えて凄みを増した感じはしていなかったが、始動を早めて確実性を増し、遠回りだったスイング軌道を内から出るようになったことは大きな成長だと評価したい。まだまだ甘い球を打ち損じたり、粗い部分は目立つ。しかしけして無理しなくてもオーバー・フェンスできる圧倒的なパワーは、今年の高校生野手の中でも一、二を争う飛ばし屋ではないのだろうか。


(最後に)

 イメージ的には、高校時代の 岡本 和真(巨人)に近い感じはする。しかし技量・精神面といった部分では、岡本の高校時代の方がワンランク上だったのではないのだろうか。

 強打者としては、積極的というか攻撃的なものが感じられない性格が気になる。強打者特有の、オーラというか凄みが感じられず良い意味で見下ろしてプレーすることができない。それでも貴重な右打ちでサードを担う長距離砲ということで、ドラフトでは2位~3位あたりでは指名されるのではないのだろうか。

 個人的には、強打者に不可欠な思考回路、また守備位置も一塁か左翼になるのではないかという起用の幅なども考えると、あまり高い評価はできない。確実にモノになるといった素材ではなく、チームの中における長距離候補の一人といった存在になるのでは。しかしうまくものになったときにはリターンが大きく、チームの中軸を担うような選手に育つ可能性も秘めている。「アジャ」こと、井上晴哉(亜大-ロッテ)が5年目でブレイクしたことを考えれば、ある程度時間をかければ性格的な部分も改善して行けるのかもしれない。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年夏 甲子園)









野村 佑希(花咲徳栄2年)右翼 185/87 右/右 





                    「毎年いるレベルのスラッガー」





 「ミレニアム世代」と呼ばれる2018年度の球児達だが、ことスラッガータイプの逸材は少ないように思える。4人の強打者がドラフト1位指名された17年度に比べると、その様相は明らかに違う。そんな中、数少ないスラッガー候補といえるのが、今回ご紹介する 野村 佑希 なのだ。果たしてどのような選手なのか? 今回も考えてみたい。


(どんな選手?)

 1年秋から、花咲徳栄の中心選手としてメンバー入り。2年夏には、甲子園でも2本の本塁打を放つなど4番打者として全国制覇に貢献。高校通算30本塁打近いホームランを放っており、18年世代を代表する長距離打者として注目されている。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、右打席から4.5秒前後。これを左打者に換算すると、4.25秒前後と平均的。全く動けない選手ではないが、走力はあまり期待できないと見て良いだろう。

 最初はサードとして登場してきましたが、2年夏の予選では一塁手に。そして、秋季大会では右翼を守っていました。右翼手としては、まだまだ打球勘が悪く、キャッチングまで含めて下手で、ひと冬越えてどのぐらいのレベルまで引き上げて来るでしょうか?ただし全くブルペンで肩慣らししていなくても右翼からマウンドに上がり、140キロ台を連発する地肩の強さは確かです。将来的には、間違いなく野手の素材だとは思いますが。


(打撃内容)

 もっとガッチリした体型かと思っていたのですが、実際見てみると意外に線が細く、筋力はこれから付けてゆくという感じの体型でした。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、前の足のカカトを浮かして構えています。グリップは高めに添えた強打者スタイルで、腰の据わり・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスと並ぐらいでしょうか。なんとなく雰囲気は、右と左の違えど高校時代の鈴木尚典(ベイスターズ)を思い出します。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が下る時に、つま先立ちします。そして本格的に動き出すのは、リリース直前といったタイミング。このタイミングだと、日本人のヘッドスピード・筋力を考えると、木製バットでプロの球に対応するのはどうしても厳しくなります。そのためどうしても、打撃に必要な動作を端折って対応しようとするため、消化不良のスイングになってしまうわけです。

<足の運び> 
☆☆★ 2.5

 足を地面から軽くステップして、真っ直ぐ踏み出します。始動~着地までの「間」が取れていないので、どうしても打てるタイミングは限られます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいというタイプ。踏み込んだ足元も、インパクトの時にピッタリは止まっていないので、どうしても打ち損じやパワーロスが生じやすいのは気になります。

 またステップの幅が狭いので、ボールを捕まえられる球が限られているように感じます。完全に 点 のスイングのため、よほどタイミングが合わないと結果に残せません。

<リストワーク> 
☆☆★ 2.5

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、それほど力みが感じられないのは良いところ。ただしバットの振り出しは遠回りであり、インパクトまではロスを感じます。バットの先端であるヘッドは下がらないので、ドアスイングというほどではありませんが。また外の球に関しては、得意なのではないのでしょうか? スイングの弧は大きく強打者らしいのですが、けしてフォロースルーを活かしてボールを運ぶタイプでもありません。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。まだ充分に「開き」が我慢できているとは言い難く、またステップの狭さからか? 軸足の捌きが窮屈に感じられます。内角を捌くのも、現時点では厳しいでしょう。軸足の内モモ自体には適度に強さが感じられ、まともに捉えられれば強烈な打球が飛んでゆくはずです。

(打撃のまとめ)

 技術的にも課題が多く、打てるポイント、捌けるコースが非常に限られています。そのためどうしても、粗い・脆い印象は現時点では否めません。花咲徳栄自体が、技術をしっかり教えるというよりも、選手の感性を大事にして、上のレベルに託すという指導をしているよういに感じます。そのため高校の時点では、良い資質は持っていても、課題が修正できないまま高校生活を終える選手が少なくないという印象があります。


(打撃への意識)

 まだまだ細かい部分への意識、プレーへのこだわりは強く感じられない普通の高校生という感じが致しました。また甘い球を簡単に見逃したり、追い込まれても見逃すなど、強打者の割に積極性に欠けるマインドは正直気になります。


(最後に)

 素材的には、1年ぐらい前の同時期の 安田 尚憲(履正社)ぐらいと同ランクぐらいかなと感じます。しかしすでにこの時期から、安田からは強いプレーへのこだわりが感じられるなど、高校生離れした意識の高さが感じられました。その点で、安田以上の存在になれるのか?と言われると正直疑問は残ります。

 大型サードとしての期待もあるのですが、どうするのですかね? 高校時代は右翼手として、プロでは左翼あたりを担うような選手かもしれません。スケールが大きな選手に育って欲しいところですが、強打者にしては積極性に欠けるところもあり、個人的にはちょっと心配な選手かなという印象を受けました。一冬越えて、その辺がどのぐらい変わっているのか、ぜひ春季大会でも直に確認してみたい1人です。


(2017年 秋季関東大会)