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阿部 雄大(22歳・ENEOS)投手 183/84 左/左 | |
酒田南時代から、将来楽しみな左腕として期待してきた 阿部 雄大 。社会人4年目に、公式戦でもちょくちょく見かけるようになってきた。しかし都市対抗を優勝したENEOSにおいても、試合を決した8回ツーアウトで打者一人と対戦したのみの登板に留まった。それだけに実績的には、現段階でプロ入りするのには時期尚早なのかもしれない。 (投球内容) ちょっとソフトバンクの 和田 毅 的な小さめなテイクバックで投げ込んでくる。それでいて、183センチの体格から、力のあるボールを投げ込んでくるので、けして技巧派といったタイプではない。 ストレート 135~143キロ ☆☆☆ 3.0 球速的には、ドラフト候補の左腕としては平凡です。高校時代は、キレや勢いを感じさせる球質でした。しかし今は、空振りを誘うというよりも球威のある球でつまらせるイメージ。現状は、細かいコースの投げ分けというよりは、ストライクゾーンの枠の中にどんどん投げ込んでくる感じでしょうか? 今年は、投球回数の半分以上のペースで四死球を出しており、やはり大事なところを任されないのは、制球の不安定さが顔を覗かせるときがあるからではないかと考えられます。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆★ 2.5 投球の多くが速球で構成されている印象だが、時々スライダーや緩いカーブにツーシームのように小さく右打者外角から逃げるチェンジアップ系の球がある。むしろ高校時代の方が、スライダーが大きく曲がって特徴があったような記憶があるのだが。現状は、軸になるほどの変化球は見当たらない。 その他 クィックは、1.15秒前後と平均的。高校時代は、元々はゲームメイクできるまとまり型のサウスポーだった。それだけにマウンドさばきや投球センスは悪くなかったはずなのだが、今はボールの力で押してくるポテンシャル型の投手という印象を持ってしまう。 (投球のまとめ) 高校時代は、もう少し肘の下がった左のスリークォーターといった感じで、左打者に強い左ピッチャーという色彩が強くかったと記憶する。しかし今は、135キロ前後あった球速が5キロ前後上がったものの、そのぶんオーソドックスなサウスポーに近づきつつある。そのため、スカウトへのアピールには好いが、特徴が薄れてしまった印象は否めない。これから、どういった色を出して行けるかで、今後の野球人生も変わって来るのではないのだろうか。 (投球フォーム) 現状のフォームについて考えてみたい。ランナーがいなくても、セットポジションから非常に勢い良く高い位置まで足を引き上げて来る。エネルギー捻出は大きいが、フォームの上下動が激しくなる恐れはある。また軸足一本で立った時に、膝が真っ直ぐ伸びてしまって力みやすいが、高く足を引き上げることで適度にバランスはとれて立てている。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて、またピンと伸ばすことなく抱えたまま重心を沈ませてくる。したがってお尻は、バッテリーライン上に落ちがちで体を捻り出すスペースは充分確保できない。それゆえ、カーブやフォークといった捻り出し投げる球種には、あまり適さないフォームとなってしまっている。 また「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間も充分とは言えない。こうなると、キレや曲がりの大きな変化球の習得が厳しくなり、決め手に欠ける投手になりやすい。現状の彼の、真っ直ぐに頼ったピッチングスタイルなのも、フォームの構造によるところが大きいのでは? <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため軸はブレ難く、両サイドのへのコントロールは安定しやすい。足の甲の地面の捉えは深いのだが、逆に膝小僧が地面に着いてしまうほどなので、返って浮き上がろうとする力を抑え込めていない。膝小僧が着かない程度で足の甲がしっかり地面を捉えるぐらいに、若干重心の沈み込みを緩和させた方が良いのではないのだろうか? 「球持ち」自体も、けして悪いわけではないのだが・・・。 それでも制球が不安定なのは、フォームの上下動など動きが大きなフォームなので、再現性に含めて的が定まり難いからではないのだろうか? <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻が落とせないものの、カーブやフォークといった球種を投げる頻度は少ないので、そこまで気にしなくても良さそう。それでも窮屈になって肘などに負担がかかりがちなので、体のケアには充分に気をつけて欲しい。 ボールを持っている腕が高く、グラブを持っている肩が下がるなど、腕の送り出しには無理が感じられる。ボールに角度を付けたいのはわかるが、肩への負担は大きそうなフォーム。さらに力投派なので、消耗もそれなりに激しいのではないかと考えられる。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りは平均的で合わされやすい側面はあるのだが、小さめのテイクバックとボールの出どころはある程度隠せているので、打者としてはタイミングが取りやすいというほどではないように思える。むしろアバウトな制球力のため、甘く入ることの方が問題なのかもしれない。 腕は振れているように見えるも、投げ終わったあと体に絡みついて来るような粘っこさは感じられない。地面の蹴り上げなどをみると、「体重移動」はいいのかな?とおもいきや、投げ終わったあと体が流れたりして、作り出したエネルギーをまだダイレクトにボールに伝えきれないロスは感じられる。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪いところはないかわりに、まだ突出して良いところもない。それだけ伸び代も残されているとも考えられるが、未完成なフォームだということだろう。制球を司る動作は、そこまで悪いとは思わない。ただし、故障のリスクや将来的に武器になる球の習得ができるのかという不安は残り、伸び悩む要素は少なくないようだ。 (最後に) 高校時代の洗練されたマウンドさばき・キレのある球を投げるスリークォーターという感じとは、かなり現在は変わっていた。むしろ、ポテンシャルを活かしきれない、素材型の左腕といった印象は拭えない。現状のチームの使われ方や実績から考えると、今年のプロ入りは厳しいかなといった印象で、まだまだ若いだけにチームで大事なところを任されるようになるまでは待った方が無難ではないのだろうか。まだまだ社会人の投手としても、スタートラインに立ち始めるところまで来た、そういった感じがする投手だった。 (2022年 都市対抗) |
阿部 雄大(酒田南3年)投手 182/80 左/左 | |
山形大会に、使いようによっては面白いサウスポーがいる。その男の名前は、阿部 雄大 。元々は打たせてとるピッチングが持ち味だったというが、ボールに力がついてきて三振を狙って奪える投手になってきたのだという。 (投球内容) サイドハンドのように、少し前に体を折って投げ込む左のスリークォーター。リリースの際には、肘を立てて投げこんでくる。 ストレート 常時135キロ前後 ☆☆☆ 3.0 試合の実況を聴く限り、球速は135キロ前後と際立つものはない。しかしボールにキレと勢いがあり、それ以上に打者は感じられているはず。全体に球が高いのは気になるが、勢いがあるのでキレがある間は痛打は喰らいにくい。また右打者に対しては、内角胸元に、ズバッと投げ込んで見逃し奪える。ボールは高くても、両サイドへはある程度投げ分けられるコントロールがある。そして、余計な四死球を出すようなタイプではないのだろう。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 スリークォーターの腕の振りを生かした、曲がりの大きなスライダーが最大の武器。特に外角低めに決まるので、左打者には非常に遠くに感じられ厄介。右打者にはチェンジアップ系の球もあるようだが、まだそれほど際立つキレ・精度はないようだ。そのため投球は、スライダーとのコンビネーションがほとんどで構成されている。 (投球のまとめ) 元々が打たせてとる好投手タイプだけに、ゲームメイクできる適度なまとまりと、マウンド捌きの良さがある。高めの速球の勢いや左打者に対するスライダーのキレ・活かし方には見るべきものを持っている。しかしボールの力・総合力を考えると、まだ本会議で指名されるほどのものがあるのかには疑問が残る部分も。左打者に強い左投手という特徴があるので、一年ぐらい独立リーグで腕を磨きプロを目指すとか、短期間で上を目指すほうがスケールで圧倒するタイプではないので良いのではないのだろうか。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、今後の可能性を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 サイドハンドのように前に体を折るような感じで重心を下げてくるのので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまう。体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急を利かせたり、フォークのような縦に落差のある球は難しい。 「着地」までも、地面を捉えるのはアッサリしてしまっているので、体を捻り出す時間は不十分。そういった意味では、曲がりの大きな変化よりも球速のある小さな変化球でピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。ただしスライダーのキレ・曲がりはあるので、決め手不足というよりも単調になるのに注意したい。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けはつけやすい。足の甲での地面への押しつけが浮いてしまうので、ボールが上吊りやすい。球離れは平均的だが、それほど指先の感覚に優れているといった繊細なタイプではなさそうだ。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻を三塁側(左投手の場合)落とせるフォームではないが、カーブやフォーク系の球を投げないので、肘への負担は気にしなくても良さそう。 腕の送り出しもスリークォーターで、無理は感じられない。そのため、肩への負担は少ないだろう。けして力投派というほどでもないので、疲労も貯めやすくはなさそうで、疲れからフォームを乱して故障するリスクも少ないのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがあるわけではないので、けして打者が苦になるフォームではないのだろう。それでもボールの出処は隠れていて、見えてから一瞬で手元まで到達するような感覚に陥るキレがある。切れがある間は、打者も差し込まれやすいタイプ。 腕の振りは悪くないのでキレを生み出せるが、けして「球持ち」が良いわけではない。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているわけではないので、球威という点ではまだ発展途上といった気がする。この辺は、もう少し球持ちがよく体重を乗せてからリリースできるようになると、キレだけでなく球威も加わって来るのではないのだろうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外の部分に粘りが欲しい。そのためどうしても、一辺倒で淡白な印象を受けてしまう。 高めに集まりやすい球筋と今後投球の幅を広げて行けるのかという疑問もあり、プロ入りにはもう少上のレベルでし実績を残してからでもといった印象を受けた。 (最後に) 本人のプロ志向がどの程度なのかは定かではないが、もし少しでも早くプロ入りしたいと願うならば、独立リーグ等で最短でのプロ入りを目指す、数字のはっきり残る世界で実戦力を証明するのも悪くないだろう。もしそれほどプロ志向が現時点で高くないのであれば、大学なり社会人に進むことが望ましいかなという気はしている。面白いものを持っているので、どんな進路をたどろうとも今後もその成り行きを注視してゆきたい投手だった。 (2018年夏 山形大会) |