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鈴木 博志(20歳・ヤマハ)投手 180/85 右/左 (磐田東出身) |
「中塚駿太を見ているようだ」 今年の都市対抗でも155キロを記録し、今やアマチュア球界NO.1のエンジンを搭載しているのが、この 鈴木 博志 。その投球は、昨年西武に2位入団でプロ入りした中塚 駿太(白鴎大)投手の投球を思い出す。果たして鈴木は、プロでどのような投手になるのか考えてみた。 (投球内容) 速球派らしく、ワインドアップで振りかぶって投げてきます。 ストレート 常時150キロ前後~MAX155キロ ☆☆☆☆★ 4.5 ストレートの球速は破格なものの、ボールが高めに抜けてしまうことが多いのが気になります。変化球の精度が低いのはまだ良いのですが、投球の核である速球のコマンドが低いのは速球派投手としては深刻な問題。そしてこのストレートも、けして合わしづらいとか、相手に嫌がられるほどの球ではないので、プロレベルの打者ならば充分対応して来る可能性があります。ボールをじっくり見られた時の怖さ、少しでもカウントを取りに緩めた時には、打ち損じされることなくはじき返される危険性をはらんでいるということ。150キロ台で圧倒するためには、ある程度速球を制御できるコマンド力求められます。それが、この投手には決定的に欠けています。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど ☆☆ 2.0 投球の多くがストレートで構成されており、時々スライダーでカウントを取りに行ったり、フォークのような縦の変化球を投げてきます。しかしこの縦の変化球が見極められてしまうことが多く、思いの他効果的ではないのが気になります。何か変化球で確実にカウントが整えられるとか、決め手になる球があれば良いのですが、速球の粗さを補う変化球が存在しません。 その他 ランナーを出しても、牽制は殆ど入れてきません。クィックは、1.15~1.25秒前後と中の下ぐらい。ベースカバーやフィールディングも平均~それ以下であり、けして投球以外の部分に優れているとはいえないでしょう。プロ入り後、この辺はもう少し鍛えてレベルアップする必要があります。 (投球のまとめ) 中塚は最終学年に、実戦的な投球にシフトしチームのエースへと成長しました。それでも1年目の現時点では1軍昇格はなく、2軍でも 13試合 1勝5敗 防御率 4.33 という成績にとどまっています。このような現実を見る限り、鈴木もどの程度一軍戦力として活躍できるのかには疑問が残るのです。 (投球フォーム) 当然指名する球団も、素材型ということを理解しての指名でしょう。一軍ぐらいはファームでということは、想定の上の指名になると思われます。そんな彼の、今後の可能性をフォームから考えてみましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻は適度に一塁側に落とすことができており、体を捻り出すスペースは確保できています。そのためカーブで緩急を、フォークで空振りをという投球に無理はありません。 「着地」までの粘りもそれなりで、けして体を捻り出す時間がないわけではありません。そういった意味では、キレのある球や曲がり幅の大きな変化も期待できそうですが、実際はそうでもないのが現状です。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブはしっかり内に抱えられているわけではないが、最後まで体の近くにはある。そのため両サイドにはボールが散りやすく甘いゾーンに集まってくるというタイプではない。しかしながら足の甲の地面への押しつけが浅く、どうしても力を入れて投げるボールが上吊りやすい。また「球持ち」も浅く、ボールが押し込めないことが余計に高低を制御できない要因になっている。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻は適度に落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少ない気がする。しかし実際は、無理fがあまりできない状態だと訊く。 昨年までは、腕の送り出しに無理がある投げ方だった。しかし今は角度があっても、送り出しに無理矢理感はかなり薄まってきている。ただし腕がやや外旋してブンと振って来る傾向は相変わらずなので、やはり負担の大きな投げ方なのは確かなのだが・・・。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りが早すぎる淡白なフォームではないのだけれども、少し「開き」が早く見極めがしやすいフォームなのも確か。フォークを簡単に見切られてしまうのも、そのせいではないかと考えられる。 あとこれだけのボールを投げながら、振り下ろした腕が体に絡んで来ないのも気になる材料。「球持ち」が浅く、球に粘っこさがないし速球と変化球の見極めもつけやすい。しかしボールには体重を乗せてリリースはできているので、打者の手元まで勢いと球威の落ちないボールは投げられている。 (フォームのまとめ) フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「開き」に課題を抱えている。腕が外旋しブンと振ることでの体への負担が大きいこと、足の甲が押し付けられないことでの高めに浮いてしまう欠点がある。投球の幅に関しては、もう少し指先の感覚が良くなればピッチングの幅を広げて行ける下地はあるのではないかと考えられる。 (最後に) あくまでも素材型の域を脱していないので、1年目から戦力として期待するというタイプではないだろう。そのため育成力のある球団が、ある程度時間をかけてものにしてゆくというタイプ。またここまでの素材型だと、本当に欠点を改善し使える選手になれるのか?という不安はどうしてもつきまとう。ドラフトで上位指名される可能性が高いが、かなりのギャンブル的な指名になるのではないのだろうか。個人的には中塚よりはなんとかなりそうな感じは受けるものの、上位で指名するのは怖い素材だと判断する。 蔵の評価:☆☆ (中位以降なら) (2017年 都市対抗) |
鈴木 博志(20歳・ヤマハ)投手 183/85 右/右 (磐田東出身) |
「いまアマチュア球界で1番速い」 そう言えるのは、この 鈴木 博志(ヤマハ)だろう。投げる試合投げる試合必ず150キロ台を刻んでくる。最速は、昨年の都市対抗・JR九州戦で記録した154キロ。まだ年齢も、高卒2年目の19歳。高校時代はソフトバンクの育成で指名された 齋藤 誠哉 の陰に隠れがちではあったが、当時から140キロ台を越える速球派として密かに話題になっていた。 (ここに注目!) 速球がほぼ真ん中~高めに抜け気味で、コントロールに不安があるのは間違いない。打者の空振りを誘うキレや伸びがあるといういうよりも、ズシッと来る球威も兼ね備えている。甘い球は多いのだが、それだからといって簡単に長打を浴びるという球ではけしてない。 (投球内容) ワインドアップから振りかぶり、勢いよく足を引き上げて来るリリーフタイプ。 ストレート 146~154キロ ☆☆☆☆ 4.0 どこにゆくかはボールに訊いてくれ! というタイプで、とりあえずストライクゾーンの枠のなか目指して投げ込んで来る感じ。そのためボールのバラツキは顕著で、その多くは高めにゆく。けして打者の空振りを誘う球質ではないが、一定の球威と勢いがあり甘くても相手が打ち損じてくれる可能性が高い。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど ☆☆★ 2.5 圧倒的にストレートの比率が高く、変化球の頻度は少ない。スライダーのキレも悪いと思わないが、リリーフではストレートで押し切ってしまうことが多い。ボールが速くなってからは、曲がりながら沈むスライダーを、時々挟む程度になっている。 その他 牽制はほとんど観られず、クィックは1.2秒前後。ベースカバーへの入りなどは、けして鈍いタイプではない。ただし細かい部分では課題も多いので、この一年で細かい部分をつめてゆきたい。 (投球のまとめ) 現状は、ストレートでいかに押し切れるという感じで、リリーフでないと厳しいだろう。高校時代はもう少し変化球を交えて先発で投げていた記憶があるので、まるっきしリリーフ限定とは言い切れないが。日本選手権では、先発で登板。それでも150キロ級の速球で押し、リリーフとピッチングスタイルは変わっていなかった。 しかし気になるのは、やはりコントロールの粗さ。本当の制球力がないので、じっくり観られると辛い。その辺の粗が、指名対象年の年に出て、大きなスランプに陥らないかという不安はよぎる。その一方で、高卒2年目の若手投手。それも3月生まれあることを考えると、まだまだ資質を伸ばしてきてもおかしくはないということ。そういう期待半分、不安半分と入り混じった選手、それがこの 鈴木 博志 の現状ではないのだろうか。 (投球フォーム) では今度は、投球フォームの観点から今後をを占ってみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻は甘さ残すものの、ある程度一塁側に落とすことはできている。そのため身体を捻り出すスペースは充分ではないものの、カーブやフォークといった球種を投げられないことはない。 「着地」までの粘りもそれなりで、身体を捻り出す時間はまずまず。そういった意味では、今後手元でキュッとキレたり、曲がり幅の大きな武器となる変化球を、身につけられる可能性は秘めている。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブはしっかり抱えられているわけではないが、比較的身体の近くには留まっている。そういった意味では、ある程度は両サイドへの投げ分けは可能であるようには見える。足の甲での地面への押しつけは、押し付けるタイミングfが遅く充分ではない。そのためボールが、高めに抜けてしまっている。「球持ち」自体も悪くはないのだが、ボールを押し込めまではリリースを我慢できてはいない。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻自体は甘さは残すものの落とせているし、カーブやフォークといった捻り出して投げる球をほとんど使って来ないので悲観することはない。そういった意味では、肘への負担は少なめかと。 気になるのは、腕を送り出す時に無理な角度があるということ。グラブを抱えている肩は下がり、ボールを持っている肩は引き上がっており、肩を痛める可能性があるということ。物凄い力投派とは思わないのだが、尋常じゃない負荷はかかっているだろうから、やはり故障のリスクは、並みの投手の比ではないように感じる。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りはそこそこあるので、けして合わせやすいフォームでは無い。身体の「開き」も平均レベルであり、コースを間違わなければそうは簡単には打ち返されない。 気になるのは、振り下ろした腕が身体に絡んで来ない点。これだけのボールを投げていながら、腕があまり振れていないのと「球持ち」も充分ではないということなのだろう。ボールにはしっかり体重を乗せてからリリースはできているので、打者の手元までの勢い・球威は申し分ない。 (フォームのまとめ) 投球フォームの4大要素である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。むしろ「着地」「体重移動」は想像以上であり、これだけのスピードボールを生み出す原動力になっている。そういった意味では、「球持ち」「開き」にもう少し粘りがでてくると、フォームに嫌らしさが出て来る。 腕の送り出しから肩への負担が大きいこと、足の甲の押し付けや球持ちの浅さから、ボールが高めに抜けて制御できていない部分が気になる。お尻はある程度落とせるフォームなので、ピッチングの幅を広げて行けることは期待できそうなのだが。 (最後に) コントロールの不安、故障のリスクの要素は多いに気になる。しかし高卒2年目の成長期だということと、速い球を投げるメカニズムに優れ、けして合わせやすいフォームではないところに好感が持てる。また高校時代から粗っぽい部分はあったものの、ある程度先発で試合の作れる投手だった。それだけに、そういったセンスが全くない選手ではないはずなのだ。 今後どう転ぶかは読めないが、17年度において最も楽しみな投手の一人であることは間違いない。不安も大きいが、期待して見守ってゆきたい。 (2016年 都市対抗) |