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斎藤 俊介(DeNA)投手のルーキー回顧へ







斎藤 俊介(23歳・JX-ENEOS)投手 176/83 右/右 (成田-立大出身) 

 



                     「須田幸太に似ている」





 小さめなテイクバックから、非常に伸びのある真っ直ぐを投げ込んでくる 斎藤 俊介 。 その投球スタイル、ボールの質は、DeNAの須田 幸太 を彷彿させるものがある。元来はゲームメイクできる先発タイプだが、プロの先発となるとスケール的に物足りない。むしろ勢いのある真っ直ぐを武器に、リリーフとしての活躍が期待されている。


(投球内容)

 昨年オフに作成した寸評にもあるように、今年の社会人候補の中で最も気になる存在でした。しかしシーズン中に、スコンスコンと集中打を浴びる場面を目の当たりにしてしまい、ボールが揃い出すと怖い一面があることを強く実感したことも確かです。

ストレート 常時140キロ台~140キロ台後半 
☆☆☆☆ 4.0

 リリーフならば、常時145キロ前後~後半のボールを続けられるスピード能力があります。その真っ直ぐの回転・質は素晴らしいのですが、昨年ほど速球の質・勢いに感動が得られませんでした。またコントロールも四死球で自滅するような危うさはないのですが、リリーフで力一杯投げると多少ストライクゾーンの枠の中では甘い球が増えてきます。

 特に回転が好いぶん空振りも取れる反面、長打を浴びやすい怖さもあること。またやや「開き」が早く苦にならないフォームのために、ボールが揃い出すと連打を喰らいやすい傾向にあることは見逃せません。そのため今年度の主要大会の防御率が、3.86 と打たれる時は結構打たれます。この辺が完成度が高そうに見えて、絶対的ではないことを示しています。


変化球 縦横のスライダー・カーブ・カットボール・チェンジアップ・スプリット 
☆☆☆★ 3.5

 球種は実に多彩で、いろいろなボールを投げています。そういった器用さはあるのですが、どれか絶対的なボールがあるかと言われると疑問です。そのなかでは、横滑りするスライダーだかカットボール気味の球を、右打者外角に投げるのが一番の持ち味。この球の切れと、それほど投げミスしないところを軸に投球を組み立てたいところです。逆に左打者に対しては、あまり軸となる変化球がなく、投球がしっかり確立できていないようにも感じます。左打者への配球が、今後の課題なのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 すでにかなり完成されている投手なので、できれば1年目から結果が欲しいタイプ。何か軸となる変化球が習得できると、ストレートの勢い・多彩なコンビネーションが可能なだけに、投球内容も一変しそう。ボールの勢い・質がそのまま結果に直結するタイプなので、リリーフなどで登板過多になってパフォーマンスが低下すると、一気に成績が悪化しそう。内容や安定感は、今年よりも昨年の方が良かったように見えました。


(投球フォーム)

フォームのどの辺に問題があるのか、考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5 

 典型的に、お尻を一塁側に落とせるタイプ。そのため身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化を投げるのにも無理はありません。

 「着地」までの粘りは、それほど感じません。そういった意味では、身体を捻り出す時間は並み程度かと。そのためキレのある変化球や曲がり幅の大きな変化の習得は微妙でしょう。どちらかというと、球速のある小さな変化の方が向いているかもしれません。カーブ・フォーク系の習得には無理がありませんが、武器になるほど絶対的なキレや変化を身につけられるかはフォームに改善が必要といった感じでしょうか。この部分は、昨年から全く変わっていませんでした。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。実際の投球でも時々甘い球はあるものの、ボールは両サイドに散っています。足の甲での地面への押しつけが昨年の方がよく、フォームの途中は浮き気味だった足が最後に再び押し付けるような不安定なものに変わっていました。この辺が、ボールが上吊ったり甘くなる要因を作っていたのかもしれません。

 ボールは前で放せており、「球持ち」の良さは感じます。指先の感覚は良さそうな投手に見えますが、見た目ほど細かい制球力や繊細なコントロールはないようにみえます。速い球を投げようとすることで、その辺の感覚がおざなりになっている可能性も否定できません。


<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻を落とせるフォームなので、カーブ・フォークを投げても窮屈さは感じません。またカーブはあまり見られず、フォークというよりもスプリットのため握りが浅いので、肘への負担は少なめ。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少ないと考えられます。ただしリリーフ時の投球を観る限りは、かなりの力投派になるので、疲れは溜まりやすく怪我へ繋がりやすい危険性はあります。しかし肩・肘への負担は、無理のないフォームだといえます。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは並であり、打者としてはそれほど苦にならないかも。また身体の「開き」も極端ではないものの、少しボールが見やすい傾向にあります。微妙なフォームの変化が出て、昨年よりもボールが見やすい・合わせやすいフォームになっていた可能性があります。

 素晴らしいのは、腕の振りの良さ。これならば速球と変化球の見極めは困難で、空振りを誘えます。またボールへの体重乗せは、「球持ち」が良いので、しっかり乗せてからリリースできています。そのため打者の手元まで、活きた球が投げられます。ただし昨年よりも下半身の使い方が悪くなった分、ボールの伸びや球威は若干鈍っていたようにも感じられます。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」の粘りと「開き」の早さにもう少し粘りが欲しいという課題は変わっていませんでした。また足の甲の押し付けが浅くなったことで、ボールの勢い・球威が若干鈍った1年だったのではないのでしょうか。これは本質的な問題というよりも、微調整の部分なので修正は充分できる範囲だと思います。

 故障のリスク・制球力を司る動作も良いので、あとは「着地」の粘りを作れるようにして、一個一個の変化球の切れを増したいところではないのでしょうか。


(最後に)

 フォーム自体は全くいじっていないのですが、肉体のバランスとの関係か?若干その辺に狂いが生じていた1年だったと思います。そこをプロの指導者によって修正できれば、ルーキーイヤーのようなボールや内容が期待できそう。それに比べると今年は、若干物足りない1年でした。ルーキーイヤー並の内容を示していたら、2,3位で消えていたでしょう。

 現状の力量だと、開幕一軍に残れるか残れないかのボーラーライン上ぐらい。ルーキーイヤーぐらいの勢いを取り戻せれば、貴重な中継ぎとして、年間通して活躍できる可能性はあります。しかし微妙なところで投げている投手なので、登板過多になると一気に防御率を悪化してしまう恐れがあることも否めません。その辺が、どう転ぶかはやってみないとわかりません。今年の内容は中位指名レベルの投球だったので、4位での指名は妥当だったのではないのでしょうか。リリーフの即戦力が欲しい球団には、ありの指名だったと思います。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2017年 都市対抗)











齋藤 俊介(23歳・JX-ENEOS)投手 176/81 右/右 (立教大出身) 
 




                   「今年社会人で1番気になる」





 2017年度は、高校生野手と社会人投手の当たり年。そんな中でも、私が社会人で最も気になっているのが、この 齋藤 俊介 である。正直立教大時代は、それほど気にしていたほどではなかった。しかし都市対抗で140キロ台後半を連発する姿は、強烈なインパクトを残してくれた。


(ここに注目!)

 中背の体格から、はちきれんばかりの勢いで投げ込む速球の威力は素晴らしい。大学時代は、先発でちょっと底の浅い好投手との印象が強かった。それだけに今季は、先発でも物足りなさ、底の浅さはどうなのか? この部分にも注視してみたい。

(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。大学時代は、通算で11勝14敗 防御率 2.45 と、特別な存在ではなかった。

ストレート 常時145キロ~MAX149キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 都市対抗ではリリーフで、140キロ台後半を連発。小さめなテイクバックから、ビュッと勢いと球威を感じさせる真っ直ぐを投げ込んでくる。そのスピード能力もさることながら、ボールの質が素晴らしい。ときより甘く入ってくるのは気になるものの、ボールの勢いでアバウトな部分を補っている。普段は、ボールを両サイドに投げ分けるコントロールもある。

変化球 スライダー・すプリットなど  
☆☆☆★ 3.5

 手元で小さく横滑りする130キロ台のスライダーと、追い込むと縦に落ちるスプリットを多く使って来る。ボールの曲がり・精度も悪くなく、実戦的といえるのではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 日本生命戦では、試合終盤にリリーフで出てきて140キロ台後半を連発。続くNTT東日本では先発し、3回5安打2失点で早々降板している。先発しても適度に試合をまとめられる好投手だが、投球に奥行きをあまり感じさせるタイプではないので、その辺は気になっていた。

 現時点では、リリーフの方が魅力を感じるといった印象。しかしチームでは今年、先発で活躍することになるのではないのでしょうか。そのへんで、どう評価されるのか気になるところではあります。現時点では、ドラフト2位前後ぐらいの位置づけかと考えています。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 典型的に、お尻を一塁側に落とせるタイプ。そのため身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化を投げるのにも無理はありません。

 「着地」までの粘りは、それほど感じません。そういった意味では、身体を捻り出す時間は並み程度かと。そのためキレのある変化球や曲がり幅の大きな変化の習得微妙でしょう。どちらかというと、球速のある小さな変化の方が向いているかもしれません。カーブ・フォーク系の習得には無理がありませんが、武器になるほど絶対的なキレや変化を身につけられるかは微妙という感じでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。実際の投球でも時々甘い球はあるものの、ボールは両サイドに散っています。足の甲での地面への押しつけも深く、ボールが上吊りません。「球持ち」もよく、フォームののバランスも良いので、制球を乱す要素は少ないといえます。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻を落とせるフォームなので、カーブ・フォークを投げても窮屈さは感じません。またカーブはあまり見られず、フォークというよりもスプリットと握りが浅いので、肘への負担は少なめ。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少ないと考えられます。ただしリリーフ時の投球を観る限りは、かなりの力投派になるので、疲れは溜まりやすく怪我へ繋がりやすい要素はあります。しかし肩・肘への負担は、かなり無理のないフォームだといえます。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは並であり、打者としてはそれほど苦にならないかも。また身体の「開き」も極端ではないものの、少しボールが見やすい可能性があります。

 素晴らしいのは、腕の振りの良さ。これならば速球と変化球の見極めは困難で、空振りを誘えます。またボールへの体重乗せは、「球持ち」が良いので、乗せられてからリリースできています。そのため打者の手元まで、素晴らしい伸びと球威の兼ね備えた球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」はしっかりしており、逆に「着地」「球持ち」は平凡といった印象を受けます。課題というほど悪くはありませんが、粘れているというほどでもありません。

 故障のリスク、制球を司る動作が素晴らしく、投球の幅も広げて行ける可能性を感じます。特に身体は大きくないのですが、エネルギーを捻出する動作には非凡なものを感じます。


(最後に)

 中背の体格故に、先発だと素材としての底の浅さが見え隠れする危険性は感じます。その一方で、リリーフでは素晴らしい球と投球ができます。そのため現時点でも、リリーフならば即戦力としての期待が持てると言えるでしょう。あとは、先発でどのぐらいのパフォーマンスを示せるか? これによって、順位の変動は大きいと考えられます。先発でも充分ということになれば、ハズレ1位~2位ぐらいまでに。リリーフ型だと判断されれば、3位ぐらいまで残っても不思議ではありません。ぜひ注目して、この一年間見守ってゆきたいと思います。


(2016年 都市対抗)