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藤井 黎来(大曲工3年)投手 181/85 右/右 |
「随分と実戦的に」 昨夏の甲子園で投げた下級生投手の中で、来年最も楽しみな投手として名前をあげたのが、この 藤井 黎来 だった。あれから1年、彼はどのように進化してきたのかみてゆきたい。 (投球内容) ガッシリした体格から、腕を真上から振り下ろしてきます。 ストレート 135~140キロ強 ☆☆★ 2.5 昨夏は2年生ながら、常時140キロ前後~中盤ぐらいまで出していた記憶があります。しかしこの夏は、常時135~MAXで140キロ強とスピード的にはむしろ後退しているように感じます。それはエースとしてチームを支える立場になり、ある程度力をセーブして連投に備えなければいけないというチーム事情もあるのでしょう。 それでも角度を感じさせる球筋で、低めにズシッと球威のある球を投げ込みます。打者の外角中心にボールを集めることができ、昨年よりもボールのコマンドが上がっているのは間違いありません。球速を増すことを重視するよりも、より実戦的な投球を追求してきたということでしょうか。ちなみにこの夏のMAXは、緒戦の秋田西戦で記録した144キロだったそうです。ただしドラフト指名される投手に比べると、アベレージでの球速面では若干劣る印象は否めません。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 曲がりながら沈むスライダーを武器に、さらに緩いカーブ、フォークのような沈む球やチェンジアップなどもあると言います。変化球でカウントを取れるかわりに、絶対的な球種がないのは昨年と変わりません。現在は、スライダーが一番メインとなる球種でしょう。それでもこの夏の秋田予選では37イニングで44奪三振ですから、イニング前後の奪三振は奪えていることがわかります。 その他 クィックは、1.2秒前後とそれほど素早くはありません。牽制はまずまずで、こちらは基準以上でしょう。特別運動神経の良さや野球センスを感じさせる選手ではありませんが、大きな欠点はないものとみています。 (投球のまとめ) この1年で実戦的になり、総合力の高い投手へと成長しました。当然この投手がいる大曲工業が、甲子園に出場するものと思っていました。逆に下級生の時のような凄みは薄れつつあり、ドラフト候補として見ると少し物足りないのは否めません。この辺が、連戦などを意識してセーブしていたからなのか? 本当に、この投球が現在の力量なのかはわかりません。夏の予選の投球を見る限りは、指名は微妙かという印象を受けました。 (投球フォーム) 指名を考えるには、今後の可能性がどの程度残されているかが大きな判断基準になってきそうです。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻はしっかり一塁側に落とせるフォームなので、体を捻り出すスペースを確保。窮屈さを感じさせないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球の習得にも期待が持てます。 「着地」までの粘りは平均的で、まだ体を捻り出す時間は確保できていません。この辺が、キレがある球や曲がりの大きな変化球をものにできていない要因ではないのでしょうか。これからもっとフォームに粘りが出てくると、変化球の曲がりも変化が出てくるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはつけやすい。しかし足の甲の押し付けがツマ先だけなので、どうしても力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。そのためなのか? コントロールを乱さないために力を抑えて投げているのかもしれません。「球持ち」も悪くはないので、さらに粘りを意識できると、指先までの微妙な力加減もつけられるようになるでしょう。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても窮屈さを感じず肘への負担は少ないはず。腕を真上から振り下ろすために、多少無理を感じなくはないのですが、そこまで悲観するほどではなさそう。元来それほど力投派でもないので、疲れを貯めやすいフォームでもありません。 <実戦的な術> ☆☆ 2.0 「着地」までの粘りは平均的なのですが、体の「開き」が早くなりがちで、球筋がいち早く読まれてしまいます。コースを突いたはずの球が打ち返されたり、縦の変化を見極められやすくなったりします。 振り下ろした腕も、体に絡んたりしてきません。腕の振りやフォームに勢いがないので、打者からの空振りを誘い難いのかもしれません。ボールへの体重乗せもまだ不十分で、この辺が変わって来ると打者の手元まで迫ってくるようなボールが投げられるのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に課題を残します。故障のリスクは高くありませんが、足の甲の押し付けが効かないことで、力を入れるとボールが上吊りやすい危険性があります。また投球の幅を広げてゆくことは、今後「着地」までの粘りがでてくれば期待ができそうです。 (最後に) しっかり投球を組み立てることができる投手で、あとはいかにパワーアップして行けるのか? フォームには動作の粘りを意識し実践して行けるかではないのでしょうか。投球の基礎はできているので、ボールさえ変わってくればと思わせてくれる選手です。 その一方で、いくらコントロールや投球術があっても、肝心のボールの方が変わってこないと厳しいわけです。そのため今後、そういった変わってくる確信が持てないと、なかなか指名するには怖い気がします。もし私が担当ならば、進学なり社会人に行ってもらって、数年後まで待ってからでも遅くないという判断を下すことでしょう。球団の考え方次第ですが、育成で指名があるかないかぐらいの判断になるのではないのでしょうか。 (2017年夏 秋田大会) |
藤井 黎来(大曲工2年)投手 181/82 右/右 |
「東北屈指の存在」 秋の時点で東北屈指の素材といえば、この 藤井 黎来(大曲工2年)ではないのだろうか。スラッとした手足の長い体型というよりは、ガッシリした体格から投げ込む馬力型というタイプ。 (投球内容) ノーワインドアップから投げ込んできます。 ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ ☆☆☆★ 3.5 手元でグ~ンと伸びるとかピュッとキレるような、空振りを誘う球ではありません。ズシッと重い音が、ミッとから鈍く響きます。ストレートのコマンドはそれほど高くはなく、大まかに内外角を投げ分けて来る感じ。全体的には、真ん中~高めに集まるボールが多い。それでも四死球で自滅するとか、そういった危うさはありません。 変化球 カーブ・スライダー・フォーク・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 カーブでもスライダーでもチェンジアップでもカウントを稼ぐことができますが、それほど絶対的なキレやコントロールはありません。適度にコンビネーションに織り交ぜ、目先を変えてゆく感じでしょうか。追い込んでから、ストンと落ちたフォークらしき沈む球があったのですが、この球の精度が上がってくると空振りを奪えるだけに楽しみです。 その他 適度に鋭い牽制を混ぜたり、クィックは1.10~1.25秒ぐらいと幅があります。このクィックのタイミングを意識的に変えて投げているとすれば、かなりの投球術の持ち主だとは思います。しかし単に投げるタイミングや球種で変わっているとすると、まだまだという感じでしょうが、どうなのでしょう。 (投球のまとめ) ボールのに力があり、マウンドさばきも悪くありません。まだ細かいコントロールがないのは気になりますが、投げるタイミングを意図的に変えて投げているとすれば、想像以上に考えて投球をしていることになります。ボールを持ってからも結構長く持ってから動き出したりと、そういった時間の使い方を意識している可能性は感じます。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点から考えてみましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻は一塁側に落とすことができています。そのため身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に落ちる球を投げても窮屈さはありません。 しかしながら「着地」までの粘りはいまいちで、身体を捻り出す時間は物足りない。こうなると身体の近くでキュッと曲がる変化球や曲がり幅の大きな球の習得は厳しいかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで身体の近くで抱えられており、両サイドへの投げ分けはしやすい。しかし足の甲の地面への押しつけが完全に浮いてしまい、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまいがち。それでも「球持ち」はよく、力を指先まで伝えることである程度制御できているといえます。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻は落とせているので、カーブやフォーク投げても肘への負担は少なめ。実際にそういったボールは使ってきますが、それほど問題はないと考えられます。 腕の送り出しにも無理はないので、肩への負担も少ないのでは? それほど力投派という感じでもないので、消耗も少ないのではないかと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがなく、打者としては合わせやすいフォーム。さらに身体の「開き」も早く、球筋がいち早く読まれやすいのが気になります。こうなるとコースを突いた球でも、打ち返されてしまう危険性があります。 腕は適度に振れているので、速球と変化球の見極めは問題なさそう。ボールにしっかり体重が乗せられてから投げているので、打者の手元まで球威と勢いのある球は投げられています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に課題を抱えていて、「球持ち」は良いところ。 足の甲の押し付けが浮いていてボールが浮きやすいものの、故障のし難いフォームなのは好感。将来的には、カーブやフォークなどいろいろな球が使える可能性があります。しかしながら「着地」の粘りの無さから、どれも中途半端な曲がりに留まってしまう危険性があります。 (最後に) まだまだ発展途上という感じで、けして完成された投手という感じではありません。それだけ一冬越えた成長次第ですが、馬力はある選手だけに楽しみなのは間違いありません。 ドラフト候補という感じになっているのか、アマタイプの速球派になるのかはその成長を観ないことにはなんとも言えないでしょう。春季大会以降の評判を、ぜひ気にしてみたい一人です。昨夏甲子園で見た下級生投手の中では、1番の選手でした。 (2016年夏 甲子園) |