17kp-36


 




尾形 崇斗(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







 尾形 崇斗(学法石川3年)投手 181/88 右/左
 




                      「馬力は本物」






MAX150キロを誇るという 尾形 崇斗 の馬力は本物だった。ただ球速が出るのではなく、ボール自体に球威があり実に力強い。今年はスラッとしたセンス型の素材が目立つなか、数少ないガッチリとしたパワー型ピッチャーだった。


(投球内容)

 立ち上がりこそボールが高めに抜けるなど不安定なところが目立ったが、2回以後は落ち着き、変化球でカウントを整えたりと速球だけの投手ではなかった。制球が定まって来ると、ポンポンとテンポ良く投げ込んでくる。

ストレート 常時140キロ台~中盤 
☆☆☆☆ 4.0

 先発で常時140キロ台を刻んでくるようなパワーピッチで、捕手のミットを押し返す重い速球をビシバシ投げ込んでくる。ストレートのコマンドはけして高いとは言えないが、両サイドに投げ分けるコントロールはあり、力んで高めに抜けなければコントロールも許容範囲内。並の高校生では、容易に長打を浴びせることは難しい。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 ストレートが暴れがちのなか、カーブやスライダーでしっかりカウントを整えられるのは強味。また追い込むと、フォークのような沈む球もある。まだこの球の精度は発展途上だが、将来的には武器になって行ける可能性を秘めている。速球派でありながら、変化球レベルがけして低くないのも推したい材料。

その他

 クィックが1.25~1.35秒ぐらいと、やや遅い傾向にある。またフィールディングもちょっと鈍くさいところがあり、投球以外の技術が低く、このへんはプロでみっちり鍛えないといけないだろう。微妙な駆け引きやコントロールで勝負するようなタイプではなく、テンポよくグイグイと押してくる。

(投球のまとめ)

 まだ絶対のまとまり、収まりに欠けるところはあるものの、変化球でカウントを整えられるので、試合を壊すような危うさはない。フィールディングや牽制など、基礎技術を習得するのには少し時間はかかりそうだが、それ以外の粗っぽい部分は許容範囲。志望届けを提出すれば、本会議の間に指名されるだけの技量の持ち主だと評価する。





(投球フォーム)

今度は、フォームの観点から将来について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を伸ばさず抱えたままなので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。しかしフォーム後半からは、深く重心を沈ませることで、お尻は一塁側に落ちてくる。その動作がフォームにどのように影響しているかは定かではないが、現状はお尻の落としはできるが甘めだと判断する。そのためカーブやフォークを投げることはできるが、充分な効果を得られるかは微妙。

 また前に大きくステップさせることで、「着地」のタイミングは遅らせることができている。そういった意味では、適度に身体を捻り出す時間も確保。今後もいろいろな球を習得することも可能で、適度な切れや曲がりも期待できるかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで身体の近くにあるものの、最後後ろに解けがちで両サイドの投げ分けも多少アバウトに。足の甲の押し付けもできているように見えて、少し浮いているぶんボールは高めに抜けやすい。「球持ち」自体は悪くなく、ボールは前で放せている。将来的に各動作をもう少し修正できれば、暴れる球筋も抑えられて安定して来るのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、悲観するほどではないので肘への負担は少なめ。ただし腕の送り出しには、かなり角度を付けて投げており、肩への負担は少なくないだろう。まして全身を使った力投派だけに、疲労を貯めやすかったりと負担も少なくない。頑強な身体付きとはいえ、アフターケアは充分に行ってゆきたい。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは適度にあり、打者としては合わせやすいことはないはず。それでいて「開き」も抑えられており、甘く入らなければ痛打は喰らい難い。まして球威・勢いがあるので、相手の打ち損じも期待しやすいはず。

 腕が長い体型ではないので、腕が強く振れる割に身体に巻き付いて来るような粘っこさはない。それでもボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで球威の落ちないボールが投げられている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、投球フォームに大きな欠点は見当たらない。ただし、制球を司る動作に甘さがあるのと故障のリスクが高いのが気になる部分。将来的にはピッチングの幅を広げたり、ある程度の変化球も武器にして行けそうな素材であり、未来に明るい展望を抱ききやすい。


(最後に)

 速球派の割に変化球やフォームがよく、その点将来性についても推せる材料。少々故障へのリスクと制球の動作に課題があるので、その点で伸び悩む危険性は秘めている。それでもすべてを揃えている選手は稀なだけに、明るい未来像が抱ける選手ではないのだろうか。

 全国大会での実績やアピールがない分、ドラフト上位というのは厳しだろう。それでもプロ志望届けを提出すれば、3位以降ならば指名があっても全然不思議ではない。そのため余裕のある球団ならば、ドラフト中位以降でなら指名してみたいと思わせるものがあるのではないのだろうか。特に力で押せる投手を探している球団にとっては、魅力のある素材だとオススメしたい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2017年夏 福島大会)