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ケムナブラッド 誠(広島)投手のルーキー回顧へ








 ケムナブラッド誠(日本文理大4年)投手 192/91 右/右 (日南出身)
 




                    「ボールの質は大学NO.1」





 小さめのテイクバックから、ボールが見え始めてからミットに収まるまでの体感時間が極めて短い ケムナブラッド誠(日本文理大)。この投手の球に良く似ていて亜大時代の力量にそっくりなのが、今大活躍している 薮田 和樹(広島)投手。その薮田は6/14日現在、26試合に登板し、6勝1敗3H 防御率 2.30 の好成績をあげている。1年目からの活躍はともかく、上手く導けば薮田レベルの投手に化けても不思議ではないものを持っている。


(投球内容)

下級生の頃から素材は目立っていましたが、この春は主戦としてチームを全国大会に導きました。

ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 まるでショットガンのような勢いでミットに突き刺さるストレートの質は、今年の大学生の中でも1番ではないのでしょうか? ボールそのものは素晴らしいものの、抑えが効かずボールが高めのボールゾーンまで抜けてしまうなど、コマンドが相当低いのが欠点。三振もイニング数程度奪えるものの、それと同じかそれ以上のペースで四死球を出してしまいます。それでも投球の9割は、このストレートで構成されています。

変化球 スライダー など 
☆ 1.0

 変化球はいろいろあるようですが、確認できたのはスライダー。いずれも高めに抜けたり、低めにワンバウンドするような球で明らかなボール球。変化球がこの精度では、投球のほとんどが速球になってしまうのも致し方ありません。テイクバックが小さいことで打ち難さを作り出す反面、身体をひねり出せない分、どうしても変化球の精度・曲がりが不十分になってしまいます。

その他

 クィックは1.1秒前後と基準レベルですが、フィールディングはかなり危なっかしい。特にキャッチングよりも、送球に不安を感じる。あの小さなテイクバックのせいか、送球の際に力を制御しコントロールするのは苦手なのかもしれません。

(投球のまとめ)

 ボールそのものは素晴らしいのですが、それを制御できる術という意味では非常に問題を抱えています。知り合いが、今年一番のロマン枠だと表現するのもわかる気がします。その一方で、大学時代リーグ戦でほとんど見ることができなかった 薮田 和樹 も、大学時代こんなものだったと言えば、このぐらいの粗さだった気が。チームのエースとして全国大会に導いたケムナの方が、実績的には 薮田 より上だと言えるでしょう。



(投球フォーム)

では一体、フォームのどこに問題があるのか考えて行きます。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 比較的高い位置で、引き上げた足は伸ばされている。そのため甘さは残るものの、ある程度はお尻を一塁側に落とせている。そういった意味では身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急、フォークで空振りを誘える下地は残している。

 「着地」までの粘りがイマイチ、身体を捻り出す時間が確保できていない。そのためテイクバックをしっかり取って投げられないという事情もある。そのため身体を捻り出して投げる、カーブやフォーク系の球種は厳しいだろうということ。こういった投手は、速球に近い腕の振りで投げられる、スライダーやチェンジアップ。カットボール・ツーシーム・スプリットなど球速のある小さな変化で、投球の幅を広げてゆくことになりそう。


<ボールの支配> 
☆★ 1.5

 抱えていたグラブは、最後には後ろに抜けて解けてしまっている。そのため、両サイドの投げ分けも不安定。また足の甲での地面の押しつけも、完全に空中に浮いてしまっている。これではボールが高めに抜けてしまっても致し方なく、「球持ち」も浅いのでボールを低めに押し込むことができない。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークなどを投げても無理はないはず。またそういった球も殆ど投げていないので、肘への負担は少ないだろう。

 腕の送り出しをみても違和感はなく、肩への負担も少なそう。物凄い力投派というほどでもないので、故障の心配は少ないとか考えられる。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りもなく、小さめなテイクバックのせいで、返ってタイミングが掴み難い。「イチ・ニッ・サン」という、ニの部分が異常に短いのだ。通常は、この「ニ~の」粘りを作ることで打者のタイミングを狂わすのだが、この手の投手は短すぎることで打者の振り遅れを誘うことができている。草場 亮太(九州産業大)投手も下級生まではそういったタイプだったのだが、返って粘りが作れるようになってきて、なんだか平凡な投手になってしまっている感はある。身体の「開き」自体は、平均ぐらいではないのだろうか。前の肩が開くのが遅くて打ち難いのではなく、ボールが見え始めてから到達するまでの時間が通常より短く感じられるタイプ。

 また振り下ろした腕が、身体に絡んで来ないのが気になる。そういった「球持ち」の浅さも、細かいコントロールがつかなかったり、ボールを低めに押し込めない要因だろう。リリース時にまだ体重を乗せきる前に投げてしまっているので、打者の手元までウエートの乗った球は投げられていない。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、すべての面でまだ課題があることがわかる。ただしこのフォームを直すと、今の打ち難さを損なう危険性もあるので悩ましい。

 故障のリスクが少ないのは魅力だが、コントロールを司る動作は極めて問題がある。投球の幅については、球速のある小さなん変化を中心にと広げてゆくことは可能だろう。



(最後に)

 薮田のときは、担当スカウトの入れ込みもあり2位という高い評価でのプロ入りとなった。しかし実戦力に欠けるこういったタイプは、球団やスカウトによっても大きく評価は割れそう。そういった意味では、彼の力量やボールが大学時代の薮田と双璧だったとしても、じゃ上位で指名されるかと言われたら難しいのではないのだろうか。それでもこれだけの素材、何かしらの形でドラフトで指名されることにはなりそうだ。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2017年 大学選手権)