17dp-12


 




近藤 弘樹(楽天)投手のルーキー回顧へ







 近藤 弘樹(岡山商科大4年)投手 190/85 右/右 (安佐北出身)
 




                         「評判どおりの」





 今年は上位指名を意識できる大学生がほとんどおらず、地方組の 近藤 弘樹 にかかる期待は高かった。そんな中、前評判どおりのピッチングを魅せてくれた。一躍全国大会で好投したことで、上位指名の下地は整ったといえよう。


(投球内容)

 190/85 という体格には感じさせない、コンパクトなフォームをしている。荒々しい素材型が多い中、総合力に優れた貴重な存在。

ストレート 常時140キロ台中盤~MAX150キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 この選手の良さは、ストレートのコマンドが安定していること。特に打者の内角に構え、そこをしっかり突くことができるコーナーワーク。・昨年の映像と比べると、ボール全体も高めに集まり難くなってきているのでは? 適度にボールの勢い・伸びもあり、ストレートでも空振りが誘える。しいて言えば、フォームが直線的で素直な点。そして、それほど球威があるというほどでもないところだろうか? そのため球速ほど、ボールに自己主張がないのかなという印象はどうしても持ってしまう。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 持ち球は豊富で、相手に的を絞らせない効果が期待できる。縦にしっかり割れてくるカーブやスライダー、それに外角で小さく沈むチェンジアップに、低めのボールゾーンに沈むフォークボール。よくわからなかったが、ツーシーム系のボールもあるという。どの変化球もカウントを稼げたり一定の役割を果たすものの、打者を仕留めきるほどのキレ・精度がないのが現状。フォークは曲がりが早く見極められてしまうことも多く、ストレートのレベルの割には変化球が平凡といった印象は否めない。あくまでも変化球で目先を変えておいて、困ったらストレートといった投球になっている。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒とそれなりだが、あまり走者への目配りはどうなのか?という疑問は持った。また牽制も並ぐらいで、けして鋭い牽制で走者を刺すすることはない。特に投球以外の部分は並で、格別野球センスや運動神経の高さは感じない。

(投球のまとめ)

 適度にまとめられ、変化球でもカウントをとれ、ストレートも水準以上のものを持っている。確かに悪い投手ではないのだが、これだ!という、強烈なインパクトは感じられない。適度にまとまって、適度に威力のある球を投げられる。しかし変化球の決め手、収まりには物足りないものが残っている。そういった意味では、1年目からバリバリに活躍するというよりも、ある程度経験を積んだ2年目以降に真価が問われてゆくタイプではないかと。



(投球フォーム)

そういった発展途上の印象を受けるのは、どのへんに問題があるのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は比較的高い位置でピンと伸ばせている割に、お尻はバッテリーライン上に残りがちで甘さが残る。すなわちお尻が落とせてはいないので、充分身体をひねり出すスペースは確保しきれていない。そのためカーブやフォークを投げることはできるが、充分な効果は期待し難い。

 そのへんは、「着地」までの粘りも平凡なところから感じられる。それゆえ身体を捻り出す時間は並であり、キレのある変化や大きな曲がりは期待しらずい。変化球に決め手に欠けるのは、このへんの動作に大きな原因がある。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは比較的最後まで、身体の近くにはある。そのため、両サイドの投げ分けは適度に安定。足の甲での地面への押しつけもできており、ボールも上吊り難くなってきた。しかし昨年のフォームの際にも触れたが、「球持ち」がそれほどではないので、指先の微妙な感覚に優れていない。おおよそ狙ったところには投げられるが、絶妙なところに狙って投げるほどの精度はまだない。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としは甘いものの、カーブやフォークの頻度もそれほど多くないし、肘への負担は悲観する必要はないだろう。むしろ結構上から投げ下ろして来るので、送り出しには少し無理があり肩への負担はかかっているようにも観られる。昨年までは、ここまで投げ下ろすフォームだったけ? という記憶はあるのだが。

 さほど力投派ではないので、疲労は貯め難いのではないのだろうか? そこからフォームを崩し、故障につながる可能性は低そう。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは並で、フォームも直線的なこともあり打者としては苦にならない。また身体の「開き」も少し早いので、甘くない球でも打ち返されたり、変化球を見極められやすくなっている。

 振り下ろした腕が身体に絡んで来ないなど粘りがないので、打者の空振りを変化球では誘い難い。また体重を乗せきる前にリリースを迎えてしまっているので、球速の割に打者の手元までの勢い・球威という意味では発展途上との印象は否めない。グッと、打者に迫って来る迫力はまだない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれもあと一歩の粘りに欠け発展途上の段階。制球を司る動作には優れているが、故障のリスクは昨年よりも角度をつけたことで増している。現時点では実戦的とは言えず、逆にここに伸び代の可能性を残されているとも考えられる。


(最後に)

 適度にボールに威力があり、適度に試合をまとめられる総合力もある。しかしそれはあくまでもアマレベルの話で、現時点でプロの打者を押さえ込めるほどの圧倒的なボールの威力、投球の技術があるわけではない。

 そのため1年目は、ある程度一軍を経験し、2年目にその経験を生かしてモノにできるか?という選手。あくまでも、半即戦力といった位置付けの選手ではないのだろうか。例年ならば2位指名ぐらいの選手だと思うが、人材が薄い今年のドラフトだと、ハズレ1位から2位指名の最初の方で消えることが予想される。逆に彼が1位だと物足りないが、2位ならば美味しいそんな位置付けの選手であるように思える。伸び代は充分残されているので、すぐに結果を求めずプロで育ててゆこうという球団ならば良い指名ではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2017年 大学選手権)








近藤 弘樹(岡山商科大3年)投手 187/92 右/右 (安佐北出身) 
 




                     「普通に良い投手」





 3年間で積み上げた勝ち星は19勝、中国地区屈指の速球派である 近藤 弘樹。MAX151キロの触れ込みもあるが、そういった球速を売りにするというよりも、思ったほど実戦的な先発タイプだった。


(投球内容)

非常にオーソドックスなフォームと投球をする投手との印象をうけた。

ストレート 常時140キロ~中盤ぐらい 
☆☆☆★ 3.5

 MAX151キロという触れ込みだが、先発だと常時140~中盤ぐらいといった感じ。ボールの勢いは確かで、両サイドにある程度投げ分けて来る。それほど低めに集まるタイプではないが、四死球も少く安定して見ていられる。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 カーブのような曲がりながら沈むスライダーで、しっかりカウントを整えて来る。他にもチェンジアップ気味の球を投げるのは、フォークの落差が小さいのか?ツーシームなのだろうか? 打者の空振りを誘うほどの変化球はないが、投球の良いアクセントにはなっている。しかしこの投手、想像以上に奪三振が少ない。

その他

 クィックは1.15秒前後と平均的で、牽制も中の上ぐらい。特に野球センスが高いとか、運動神経に優れているわけではない。

(投球のまとめ)

 速球を見せ球にしながら、変化球で相手の打ち損じを誘うピッチング。コントロールも安定しており、荒々しい速球派というよりも総合力で勝負する先発タイプ。コントロールやマウンド捌きも安定していて、普通に良い投手といった感じがする。大きな穴がないぶん突き抜けた特徴もないので、最終学年でいかにスカウトの脳裏に焼き付くインパクトを与えられるかではないのだろうか。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、結構勢いよく足を引き上げて来る。投球は先発タイプなのだが、フォームの感じだと意外にリリーフ投手のような入りをしてくる。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は、高い位置でピンと伸ばされている。その割に、お尻はバッテリーライン上に残り気味で甘さを感じる。こうなるとカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるのにも、多少の窮屈さは感じるかもしれない。

 「着地」までの粘りはそれなりで、身体を捻り出す時間は適度に確保。打者の手元で鋭く変化したり、曲がり幅の大きな球を習得しても不思議ではない。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定しやすい。足の甲の押し付けもできており、浮き上がろうとする力を抑えることができる。まだボールを前で放せておらず、ボールを押し込めていない。この辺が変わって来ると、もっと低めへの球も増えてきそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、悲観するほどではない。そのため、肘への負担も大きくはないだろう。また適度に角度はある投げ方ながら、腕の送り出しにも無理がない。肩への負担も少く、故障のリスクは少ないのではないのだろうか。

 けして力投派でもないので、疲労は貯め難いタイプでもないのだろう。そういった意味では、多少登板が多くなっても心配はなさそう。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもそれなりで、けして合わせやすいことはなさそう。身体の「開き」も抑えられており、球筋も読まれやすい心配はない。

 振り下ろした腕も適度に身体に絡み、速球と変化球の見極めもそれなり。しかしその割に、打者の空振りを誘えないのは気になる。ボールにも体重を乗せてからリリースできているように見えるが、もう少し我慢できると更に打者の手元までの勢いが増すかもしれない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点がありません。あとは「球持ち」がもう少し我慢して、前で放せる感じになると言うことはありません。

 制球を司る動作、故障のリスクも少く、今後球種を増やしてピッチングの幅を広げて行ける可能性も秘めています。現時点でのパフォーマンス以上のものが、将来的に期待できるフォームです。


(最後に)

 現在はバランスの取れた良い投手との印象ですが、将来的に広がりを感じさせるフォームをしています。制球、投球センス、球の力と適度に揃っているので、更に最終学年でそれに磨きをかけられるかでしょう。現時点でもドラフトにかかる可能性は充分ありますが、それを更に確実なものにして欲しいと思います。期待して、一年間見守ってみたい選手でした。


(2016年 秋季リーグ戦)