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高田 孝一(法政大4年) 投手 183/92 右/右 (平塚学園出身) | |
先発でも150キロ前後を刻めるようになった 高田 孝一 だったが、やはり球速ほど打者が苦になく対応している姿には不安が残った。今後どのようにして、相手に嫌がられる投球を目指してゆくべきか考えてみたい。 (投球内容) ラストシーズンは、3試合に登板して 0勝0敗 防御率 1.74(5位) と、けして悪い成績ではなかった。同様に8月に行われた春季リーグでも、5試合で 3勝0敗 防御率 1.99(6位) と、同じような成績を残している。 ストレート 140キロ台後半~150キロ台前半 ☆☆☆ 3.0 先発でも150キロ前後を安定して刻めるようになり、8月の春季リーグでは150キロ台中盤まで記録するまでにパワーアップ。確かにボールの勢い・球速には水準以上のものを感じられるものの、それほど苦になく打ち返されてしまうことが多い。確かにストライクゾーンの枠の中には集まっても、結構アバウトなところがある。そのため秋季リーグでは、10回1/3イニングで10安打と、ほぼ投球回数と同じぐらいのヒットを食らっていた。 変化球 スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0 130キロ台前半の、小さな曲がりのスライダーでカウントを整えてきます。また130キロ台中盤の落ちる球もあります。その他にも、緩いカーブやチェンジアップ系の球を持っていたと記憶します。秋は10回1/3イニングで11奪三振と、投球回数を上回るペースで三振が取れていました。これは、ストレートのレベルアップとそれを魅せてからの変化球とのギャップで奪えていたのだと考えられます。ただし、プロレベルの打者相手に、そこまで三振が取れる球があるのか?と言われると微妙な気がしました。 その他 クィックは、1.0~1.1秒ぐらい素早く、牽制も鋭いものを投げられます。フィールディングも落ち着いて処理でき、一塁までのベースカバーに入るの速いと思います。時々打者との間合いが悪いと思うと、パッとマウンドを外すような危険回避能力も持っていて、そのへんは平塚学園時代からの好投手だった片鱗が垣間見られます。 (投球のまとめ) フォームが合わされやすいという構造上の問題だけでなく、速球以外のスライダー・フォーク系の球が130キロ台で球速が近く単調で的を絞りやすい傾向にあるのかもしれません。四死球は10回1/3イニングで4四死球ですから、アバウトですが極端に制球力が悪いわけでもないのでしょう。今後は、どういった方向で相手に嫌がられる投球を目指すべきか考えて行きたいと思います。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並です。軸足の膝には力みは感じませんが、全体のバランスも平均的。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足高くピンと伸ばせており、お尻の一塁側への落としはかなりできていると思います。そういった意味では、身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げるのには適していると考えられます。 「着地」までの地面の捉えは、早すぎる感じはしませんが平均的でしょうか。したがって武器になるほどの曲がりの大きな変化球の習得は厳しいかもしれません。スライダー・チェンジアップなどを中心に、球速のある小さな変化でピッチングの幅を広げてゆくことが求められます。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため、両サイドへの制球はつけやすいように見えます。足の甲での地面への捉えがやや浅く、その点で力を入れて投げるとボールが上吊ったり制球を乱しやすいのかもしれません。「球持ち」自体も適度に前で放せており、指先の感覚が極端に悪いということはなさそうです。 しいて言えば、テイクバックを広くとり、そこから腕を角度をつけて投げて動作が激しいことで、制球が乱れやすい要因を作っている可能性はあります。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難いのでは? フォークは時々投げてきますが、それはあまり問題ではないように考えています。 腕の送り出しに関しては、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がっており、多少肩に負担がかかっているように見えます。それでも力投派でもないので、疲労も比較的溜まり難いのではないかと。それでも肩を中心に、身体のケアには注意して欲しいところです。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りはそこそこで、むしろ合わされやすい原因はボールの出どころがやや見やすいからだと言えるのではないのでしょうか。けして極端に「開き」が早いとは思わないものの、全体的には嫌らしいフォームとはいえません。それだけコースを突いた球でも打ち返されたり、縦の変化球が見極められやすい傾向にあります。 腕は強く振られて勢いがあり、元来ならば三振を誘いやすいはず。しかし球の出どころが見やすいことで、いち早く球筋が読まれやすく、縦の変化球が見極められてしまいがちです。そのためにも、手元で微妙に動く球をプロでは覚えるということが求められるのではないのでしょうか。 ボールには適度に体重を乗せてからリリースできているのですが、その時に少しガニ股になってしまっており、エネルギーをロスしてしまっているのは気になります。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、「開き」が少し早い感じで、あとは平均~それ以上と悪いわけではありません。もう少し各動作に、粘りが増すようだともっと嫌らしい粘っこいフォームにはなると思うのですが。制球を司る動作やピッチングを広げてゆくという部分でも悪いフォームではないと思いますし、極端に身体に負担がかかるといった感じでもありません。各部分平均的にまとめられている分、今後自分の色をいかに出して行けるかではないのでしょうか。 (最後に) 球速ほどの凄みを感じない部分はあるのですが、楽天のスカウトの方によりますと、ある点を直せば充分に活躍できる。そういった、見込みがあっての指名だということです。その部分を解消し、プロで一流の領域に入って行けるのか気にしてみたいところです。先発でもリリーフでもできるタイプだと思いますが、こと即戦力と考えた場合には中継ぎからのスタートが良いのではないかと。昨年の 津留崎 大成(慶応大出身・3位指名)並の、成績を期待したいところです。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2020年 秋季リーグ戦) |
高田 孝一(法政大3年)投手 183/88 右/右 (平塚学園出身) | |
これまで先発だと物足りない投球でも、リリーフだと150キロ級のボールを連発していた 高田 孝一 。先発だとボールの凄みよりも、多彩さが目を惹く投球だった。それでも3年秋のシーズンでは、先発でも150キロを記録するまでにパワーアップを遂げてきた。 (投球内容) 非常にオーソドックスな、正統派右腕といった感じがします。 ストレート 常時140キロ前後~MAX150キロ ☆☆☆★ 3.5 秋の松山合宿の投球では、常時140キロ前後~中盤まで記録。しかしシーズン中であれば、常時140キロ台中盤~MAXで150キロ級を投げられるまでにパワーアップはしています。しかし基本は、力でねじ伏せるというよりも、両サイドにボールを散らせて打ち取るタイプ。3年秋のシーズンでも、22回2/3イニングで15奪三振と、三振比率は 66.4% と、平凡な数字に留まっている。またコースを突いた球でも、それほど苦になく合わされてしまうところは気になる材料ではある。そのため140キロ台後半ぐらいの球で押さないと、ストレートに凄みは感じられない。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆★ 3.5 チェンジアップらしき球を投げるのだが、この球はタイミングを外すというよりもツーシーム的に小さく沈んで芯をズラす感じの球を多く使ってくる。その他の変化球は、スライダーや緩いカーブなど。球種は多彩な印象を受けるが、空振りを誘うという感じの変化球ではないように思える。 その他 牽制の鋭さはまずまずで、走者の進塁を遅らせます。フィールディングも、落ち着いてボールを処理できます。クィックは高校時代は1.05秒前後で素早く投げていたが、大学では1.20秒前後と速さよりもバランスを重視している印象。特に野球センス・運動神経に優れているわけではありませんが、必要な技術はしっかり身につけられています。 (投球のまとめ) 先発でも140キロ台後半を出せるようになるなど、徐々に力を付けているのは確かです。ただし合わされやすいフォームをしているので、ストレートで押すにはリリーフ時に魅せるような、コンスタントに140キロ台後半を連発しないと厳しいのは今も変わらないかと。 その一方で、先発投手としても多彩な球種とある程度試合をまとめられる能力はあります。その証に3年秋のシーズンでは、六大学で防御率 1.99(6位) と一定の数字を残しました。また四死球は、22回2/3イニングで6四死球と投球回数の1/3強ぐらいで、繊細なコントロールがあるわけではないので、時々甘く入る球が痛打されたりコースを突いた球でも簡単にはじき返されてしまう見やすいフォームに課題を残します。その辺を、最終学年でどのように改善できるのかが指名のポイントになってくるのではないのでしょうか。 (投球フォーム) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。ゆっくりと足を引き上げてくるのでフォームに勢いは感じませんが、そのぶん先発投手らしい「間」は作れています。軸足一本で立ったときに、膝がピンと伸びてしまい力みがちなのですが、足を高く引き上げることでバランス良くは立てています。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0 足を高い位置でピンと伸ばしているので、お尻は一塁側に落とせています。そのためカーブやフォークといった捻り出して投げる球種でも、窮屈になることなく投げるスペースが確保できています。 「着地」までの粘りはそれなりで、けして淡白な印象は受けません。武器になる変化球を習得できるほどかと言われると微妙ですが、多彩な球種を操れる土台は持っています。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込むことができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しているように思えます。しかし膝が早く地面をとらえてしまうので、足の甲の地面への捉えが浮きがちになってしまう欠点があります。それでもボールは抜けていませんし、全体にボールが高いという印象はありません。むしろ高低へのコントロールよりも体重移動を阻害しやすくはなっています。 球持ち自体も悪くはないので、大きくコントロールを出すフォームではありません。しかし大まかに投げ分けて来るといった感じで、細かい位コントロールがないのも確かです。 <故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げていても窮屈になり難いはず。ましてフォークなども観られないので、肘への負担などは少ないと考えられます。腕の送り出しを観ていても無理はないので、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、消耗は少なくフォームを乱し難いのではないかと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りはそれなりなものの、ボールの出どころが見やすいのが欠点かと。そのため良い球をコースに投げても踏み込まれたり、縦系の球を見極められる危険性はあります。しかしチェンジアップもストライクゾーンに落ちてくる球なので、その点はあまり影響がないようには感じます。 投げ終わった腕は体に絡んできますので、腕の振りに強さは感じないものの悪くはありません。膝が先に地面を捉えてしまい体重移動が心配されますが、比較的リリースが我慢できることで重心も前に移っている感じがして問題は少なくは見えます。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があります。そのためボールが見やすく、速球が球速の割に合わされやすく、コースを突いた球でも打ち返されてしまうケースが多いです。 故障のリスクが低くいのは強味であり、タフな活躍が期待できそう。また制球を司る動作や投球の幅を広げて行くことも期待できます。全体的には、高いレベルでまとまった良いフォームではないのでしょうか。 (最後に) 投球内容でも、技術的な意味でも、もうワンランク上の細部までの追求を期待したい部分はあります。その辺がうまくできると、大学からの指名も現実味を帯びてきそうです。現状はドラフトボーダーラインレベルだとは思いますが、一冬越えた成長次第ではないかと思います。先発でもリリーフでもある程度計算できる、そういった候補になるのではないのでしょうか。 (2019年秋 全日本松山合宿) |
高田 孝一(平塚学園3年)投手 181/80 右/右 | |
それまであまりピンと来たことがなかった 高田 孝一 が、昨夏の横浜創学観戦で魅せた投球は圧巻だった。しかしその後の試合以降は、やはりいつもぼんやりした投球に彼に戻っていた。しかし一冬超えれば、平均して良いボールを投げられるかもしれない。そんな期待を抱いて、春季の神奈川大会に足を運んだ。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから足をスッと引き上げて投げ込んできます。 ストレート 常時135~MAX88マイル(142キロ) ☆☆★ 2.5 打者の手元でグ~ンと伸びたり、ピュッとキレるような空振りを誘う球質ではない。ズシッと来る重い球ではあるものの、打者のバットを押し返すほどの球威も、勢いで押し切るほどのスピードもこの日の彼のストレートにはなかった。 昨夏の創学館戦に魅せたような、体重がグッとボールに乗り移って来るわけでもなく、そういった球がいつも投げられるわけではないことがわかる。両サイドにボールを散らすコントロールはありますが、ボールが真ん中~高めに集まりやすい球筋も相変わらず。左打者のインハイに意識的にボールを集めて、詰まらせる打ち取る術は持っている。それでも昨夏から、目に見えた成長はあまり感じられません。 変化球 スライダー・フォーク、カットボール・カーブなど ☆☆★ 2.5 スライダーが高めに抜けやすい傾向にあり、この投手はあまりスライダーを使ってきません。むしろ緩いカーブでカウントを整えたり、小さく曲がるカットボールでカウントを整えてきます。フォークもあるのですが、まだ打者の手元で早く落ちすぎるのか?それほど空振りを誘えないのも気になるところ。現状は、相手を仕留めきれるほどの武器はありません。 その他 牽制の鋭さはまずまずで、走者の進塁を遅らせます。クィックも1.05秒前後と素早く、フィールディングも落ち着いてボールを処理できます。特に野球センス・運動神経に優れているわけではありませんが、必要な技術はしっかり身につけられています。 (投球のまとめ) 夏の創学館戦ができすぎだったという考えもできますが、一冬越えて特に変わった感じはありません。しかしその後の試合で、常時140キロ台を超えるような圧巻の投球も披露したという話もあり、秘めたる能力があるのか、あるいは状態が良い時は全然違うパフォーマンスを示せる潜在能力は秘めているかもしれません。 その辺が夏までに、どのぐらい安定して出せるようになっているのか注目なのではないのでしょうか。プロの長いシーズンでは、MAXの内容よりもアベレージの投球の方がでることが多くなります。そのため安定して、レベルの高い投球ができるのかがチェックポイントとなります。 (投球フォーム) それでは一冬越えて、技術的に何か変わったのか観てみます。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0 足を高い位置でピンと伸ばし、お尻をそのまま滑り落としてゆきます。お尻を一塁側に落とせるので、身体を捻り出すスペースを確保でき、カーブで緩急を利かしたりフォークのような縦に落差のある球を投げても無理はありません。 変わったのは、「着地」までの粘りに違和感がなくなってきたこと。これにより身体を捻り出す時間が確保できつつあるので、キレがあったり曲がりの大きな変化球の修得も期待できます。将来的には更にピッチングの幅を広げることも可能ですし、武器になる球を覚えても不思議ではありません。少しずつですが、この辺の動作は良くなっていました。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲での地面への押し付けが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまう傾向にあります。動作的には昨夏の方が良かったぐらいで、足の甲の地面への押し付けが甘くなりました。「球持ち」も前で放せているというほどではなく、極平均的ではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈さはありません。そのため、肘への負担は少ないと考えられます。 腕を上から叩く意識があるので、どうしてもボールを持っている肩が上がり、グラブを抱えている肩は下がり送り出しには無理が生じます。極端ではないのですが、多少肩への負担が大きな送り出しなのは理解しておいた方が良いのでは? それほど力投派ではないので、消耗が激しいタイプではありません。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの淡白さは改善されつつあり、身体の「開き」も抑えられて、けして合わせやすいフォームではなくなってきました。 腕もしっかり振れて、速球と変化球の見極めも困難に。ボールにも適度に体重が乗せられており、これが上手くハマった時は、容易にはボールは前に飛ばせなくなります。しかしそういった投球が、いつもできるわけではないということ。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」と、大きな欠点がなくなりました。また多少肩への負担があるのと、足の甲で地面押し付けられないなどの不安はあり、推せる材料はそれほど多くはありません。しかし投球フォームの核となる「着地」までに粘りが出てきたことで、全体的には良い流れになってきました。 (最後に) 春先の観戦では、目に見えて何か変わったという感じはしませんでした。しかしフォームを分析してみると、「着地」までに粘りを作ることができつつあり、「体重移動」をはじめ全体的には良くなっています。 それだけにピタッと下半身と上半身の連動が一致するようになると、とてつもないボールを投げられる確率が増すわけです。そういった土台の部分はできあがりつつあるので、これからの試合でどのように示してして行けるかではないのでしょうか。 春季大会でで観戦した時はここで見限ろうとも思ったのですが、その後の投球内容やフォームの欠点改善の兆しも見え始めていることからも、夏に向けて変わってくる可能性も残されていると考えました。あえて先入観は捨てて、最後の夏まで追い掛けてみたいと思います。 蔵の評価:追跡級! (2016年 春季大会) |
高田 孝一(平塚学園2年)投手 181/80 右/右 |
「指にかかった時のボールは素晴らしい」 2016年度の神奈川には、藤平 尚真(横浜高)・北村 朋也(東海大相模)と共に、この 高田 孝一 という、プロを意識できる速球派が揃う。この高田は、時々指にかかった時に素晴らしいボールを投げ込んでくる。こういったボールをコンスタントに投げられるようになれば、高校からのプロ入りも現実味を帯びてくるだろう。 (投球内容) オーソドソックスな、右の本格派右腕。 ストレート 130キロ台後半~MAX141キロ 立ち上がりは球筋も不安定で、思うようにボールを制御できません。しかし三回ぐらいまで上手く乗り越えられると、ボールを両サイドにしっかり投げ分けてきます。特に時々指にかかったボールで、体重がグッと乗って来る球があり、この球は高校生でも容易には捉えることができません。こういった球を投げられる割合が増えて来るようだと、充分高校からのプロ入りは意識できるでしょう。 しかし現在は、そういった球の割合が少なかったり・あるいは日によって投げられなかったりもするので、本人もまだ自分のフォームを掴めていない可能性があります。こういった部分は、 日大三高時代の 吉永 健太朗 の下級生時代を彷彿とさせます。 変化球 カーブ・スライダー・フォークなど この投手は、あんまりスライダーを投げてきません。緩いカーブか、追い込むとフォークを投げることが多い配球。その理由は、スライダーが上手く制御できず、高めの打ち頃のゾーンに浮いて極めて危険な球になりかねないから。カーブでもカウントが整えますし、追い込むと結構フォークを狙って落とせるので、その必要性も低いのかもしれません。こういったスライダーが上手く投げられない投手は最近多いのですが、こういった投手はカットボールを覚えたり、チェンジアップでカウントを整えられるようにすると、その代用ができるのではないのでしょうか。 その他 立ち上がりの悪さを除けば、投球センスも悪く無いですし、ゲームメイクできる能力はあります。牽制も鋭いですし、フィールディングも実に冷静に処理します。クィックも1.05~1.15秒ぐらいで投げられるなど基準レベル以上であり、1年の頃から大事なところを任されてきた片鱗が見られます。 (投球のまとめ) 良いボールの割合をいかに増やせるのかというのもありますが、悪い時に悪いなりに見栄えのする投球ができるまでに、レベルを引き上げて欲しい気もします。その辺は、一冬越えてどのぐらい成長するかにかかっています。 伝統的に平塚学園の投手は、下級生から目立っていても、最終学年で伸び悩む選手が少なくありません。先輩の 熊谷 拓也(法大)なども、期待値ほど伸びませんでした。そういった部分で、どう転ぶのかには不安が残ります。しかし順調な成長曲線を辿ってくれるのならば、充分にドラフトを意識できる選手に育つと期待しています。 (投球フォーム) では今度はフォームを分析してみて、今後の可能性について考えてみましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を、比較的高い位置でピンと伸ばせており、お尻は一塁側に落とせています。そのため体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急を利かしたり、フォークで空振りを誘うような投球には適しています。 問題は、「着地」までの粘りがそれほどでもないこと。これにより体を捻り出す時間は、まだ充分とは言えません。良い変化球を身につけるためにも、「着地」までの粘りを確保して欲しいと思います。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を押し付けられているので、ボールもそれほど上吊らないはず。「球持ち」もよく、前でボールを放せており、指先にも力は伝えやすいはず。立ち上がりにフォームの動きが大きすぎるため、球筋の感覚を掴むのに時間がかかるようです。この辺をもう少し上手くできると、元来はもっとコントロールが安定する投手だと思うのですが。下半身を使えるようになり、フォームのブレが小さくなることを期待します。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークのように体を捻り出して投げる球種を投げても、肘への負担は少なめなはず。 ボールを送り出すときに、多少無理に押し出しいるよういも見え、その点が多少に気にかかります。しかし現状はそれほど極端ではないので、修正するほどではないのではないのでしょうか。日頃から、体のケアには充分気を使って欲しいものです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 気になるのは、「着地」までの粘りは淡白なため、打者としては苦になり難いフォームだということ。そして踏み出す足が開き気味に着地させるので、余計に体の「開き」が早くボールが見やすくなっています。ここは、修正する必要があります。 腕は力強く振り抜けており、速球と変化球の見極めは困難。ボールにもしっかり体重が乗せられており、打者の手元まで生きた球が投げられます。地面の蹴り上げも良いので、あとはもう少し股関節の柔軟性を養い、下半身を鍛えればスタンスが広がり、無理のない体重移動が実現できるのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」に課題を抱えています。この下半身の使い方が、今後どのぐらい改善できるかにかかっているのではないのでしょうか。 コントロールを司る動作も良いですし、故障のリスクも大きくはありません。 (最後に) 筋力や体重の増加でパワーアップする一方で、股関節の柔軟性や下半身の強化で下が使えるようになると、本格化も充分期待できます。一冬超えた時点でそれを実現できるのか? 大学などにそれを託すのかどうかは、この春の投球を見てみないとなんとも言えません。 しかし私が思い描くような順調な成長曲線を描いてくれるのならば、充分に夏までにプロを意識できる選手に育っている可能性はあると期待します。藤平や北村とはまた違う魅力がある選手だけに、期待せずにはいられません。 (2015年夏 神奈川大会) |