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田面 巧ニ郎(22歳・JFE東日本)投手 177/86 右/右 (桐生市商出身) |
「あの田面が・・・」
春のスポニチ大会で、あの 田面 巧ニ郎 が、150キロを記録したと訊いて驚いた。秋の 千葉社会人選抜VS千葉大学選抜 の試合では、2年連続社会人選抜の先発。そのときまでは、出ても140キロ台前半ぐらいがやっとの投手だっただけに、正直驚きは隠せなかった。しかしスポニチ大会や関東選抜リーグなどを見ても、結局成長した 田面 の登板を確認することは出来なかった。
(投球内容)
ようやく確認できたのは、社会人一番の大会である都市対抗の大舞台。リリーフでの登板と先発での登板の両方を見て、彼の成長した姿を確認。
ストレート 130キロ台後半~MAX147キロ
都市対抗第二戦目の先発を任された試合では、初回こそ130キロ台後半の球が多かったが、2イニング目からはコンスタントに140キロ台を越え、最速では140キロ台中盤まで記録。リリーフした緒戦では、MAX147キロまで到達した。今の投球ドームのスピードガンが、他球場より3~5キロ程度厳しいことを考えると、球速的にもかなりパワーアップしているのがわかるし、スポニチ大会で150キロを記録したのも充分頷ける数字。
実際に球一つ一つを見ていても、明らかに球威・球速が増して、馬力がついてきたことがわかる。特に手元でグ~ンと伸びるとか、ピュッと切れるような空振りを誘う球質ではなく、重いストレートでバットを押し戻すような球威のあるのが彼の球。
変化球 縦横のスライダー、チェンジアップ、ツーシームなど
元々ストレートを武器にする投手ではなく、変化球とのコンビネーションで仕留めるタイプ。そのため球種も多彩であり、変化球レベルは低くない。横滑りスライダーとチェンジアップやツーシーム的な球で、カウントを整えて来る。追い込むと縦に切れ込むスライダーで、空振りを誘うこともある。ただ勝負どころで高めに甘くスライダーが浮く傾向にあり、この球を狙い打たれることが多い。
その他
クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと平均的。あんまり牽制などを交えて来ない印象はあるが、マウンド捌きや投球術は悪くない。高校時代から好投手として鳴らしてきた投手だけに、そういった野球センスには高いものがある。
(投球のまとめ)
高校時代から、コースに速球と変化球を散らせて打たせて取る投手とのイメージがある。今は速球も格段にパワーアップしたが、空振りを誘うタイプではないので、その投球スタイルは変わっていない。
ただその割に四死球で崩れることはないにしろ、勝負どころでの制球力・決め手不足は少々気になるところ。まだその投球には、絶対的なものがない。春先も150キロは出るのだが、早々K.Oされたとか、失点したとかいう話を多く聞いたので、まだまだ詰めの甘さが課題として残っている。
(投球フォーム)
今度は、投球フォームの観点から、彼の今後の可能性について模索して行きたい。
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足をやや地面の方に向けるものの、お尻の一塁側への落としは悪くない。ただ少し甘い部分があるので、変化球にも絶対的なキレ・曲がりが生まれ難いのかもしれない。しかし「着地」までは、上手く足を前に逃がすことで時間を稼ぎ、体を捻り出す時間を確保。多彩な変化球を操れるのは、この部分によるところが大きいと考えられる。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの制球は比較的安定。ただ足の甲の地面への押しつけが浅いので、ボールが上吊りやすい。その辺が、高めに時々甘いボールがゆく要因ではないだろうか。ただ「球持ち」自体はよく、前で比較的ボールを放すことができている。これによりある程度思い通り、ボールをコントロールできる。もう少しリリースなどが安定してくれば、更に高い精度の制球も期待できるかもしれない。
<故障のリスク> ☆☆☆☆
お尻の落としに甘さは残るものの、体を捻り出すスペースはある程度確保できている。ましてカーブで緩急を利かしたり、フォークなどを投げていないなど、肘への負担は大きくなさそうだ。
また腕に角度をつけて投げている割には、腕の振り下ろしに無理は感じない。こうやって見てみると、肩・肘への負担は少なく、タフな活躍が期待できるのではないのだろうか。
<実戦的な術> ☆☆☆☆
「着地」までの粘りも悪くないので、体の「開き」も平均的。投球フォームに関しては、それほど淡白な印象は受けず、打者も合わせやすいということはないだろう。
何より腕を強く振れるので、多彩な変化球とストレートの見分けは困難。ボールにも体重を乗せられて投げており、打者の手元まで力のあるボールが行くのか彼の強味でもある。
(投球フォームのまとめ)
投球フォームとしては「着地」「球持ち」「体重移動」もよく、「開き」も早すぎることはない。将来的には更に高い制球力、更に球速に見合った球も期待できるフォームでもある。そのため、素直に力を発揮できる実戦的なフォームだと言えよう。
(最後に)
桐生市商から、日産自動車を経て高卒4年目の22歳。ただ若いだけでなく、ボールの勢いと、ある程度のまとまりも持ち合わせている。ただどうだろう? 即戦力として期待するのは微妙な力量であり、比較的早い段階で活躍するとすれば、リリーフではないのだろうか。
万全を期すのならば、もう一年社会人に残って資質を伸ばすべきではないのだろうか。しかしこの年齢でこの力量ならば、下位指名で指名して来る球団が出てきても不思議ではない。私はまだ「旬」では無いと判断するが、球団によっては、ファームで1年ぐらい漬け込む覚悟で指名して来る球団が出てくる可能性は充分ある。あとは、本人の考え方次第ではないのだろうか。
(2012年 都市対抗)
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