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井上 公志(24歳・シティライト岡山)投手 180/80 右/右(岐阜聖徳大出身) |
「全く縁がなかった」
恐らく、高校・大学・社会人 と、彼を見る機会は一度もなかったように思う。それだけに、どんな投手なのかは全くらわからない。今回は、一部の情報やデータ・映像を元にして、彼の実情に少しでも近づければと思う。当然見たことがないので、評価づけはできないことをご了承願いたい。
(その印象)
映像を見る限りバランスの取れた投球フォームであり、140キロ前後の速球を中心にしながらも、横滑りするスライダーなど変化球を交えて抑える総合力で勝負するタイプなのでは。ランナーを背負っての投球をみても、走者にしっかり意識が行き、間合いをじっくり取るなどして、投球センスを感じさせる。どちらかというとボールの威力で圧倒するのではなく、投球術などを駆使して相手を打ち取るタイプなのではないのだろうか。
(データから考える)
今年の都市対抗予選と日本選手権の予選のデータから、少し考えてみたい。この両大会の数字を合計すると
42イニング 29安打 30奪三振 14四死球 防御率 2.36
1,被安打は、イニング数の80%未満 ◯
被安打率は、イニングに対し80%以下には抑えたい。この基準に関しては、被安打率が69%であることからも合格点。カーブ・スライダー・カットボール・フォークなどを駆使して、相手に的を絞らせない配球ができていると考えられます。
2、奪三振はイニング数前後 △
先発投手の場合、1イニングあたり0.8個以上奪三振を奪えていれば、かなり三振が取れる選手だと言えるでしょう。彼の場合、1イニングあたり0.71個。基準は満たしませんが、かなり三振が奪えておりボールの威力・決め手の部分では悪くないようには思います。ただ絶対的な決め球や、圧倒的なボールの威力があるわけではないようです。
3、四死球は、イニングの1/3以下 ◯
42イニングで14四死球ですから、ちょうどイニングに対して1/3になります。それほど繊細なコントロールがあるようではないのですが、適度なまとまりで試合を壊しません。
4,防御率は、2点前半もしくは1点台が望ましい △
大学生や独立リーグ系のデータを見る時は、1点台もしくは0点台 と考えたいのですが、社会人の場合はDHが必ずあり、かつ打力があるので、このぐらいの数字が望ましいという感じになります。基準を満たすだけの数字はありますが、2.36は絶対的な防御率ではないので、△だと判断致しました。
(データからわかること)
チームの主戦を務めてきた投手だけに、適度なまとまりがあり破綻がないのが特徴です。ボールの威力・制球力も図抜けてはいないようですが、ドラフト候補としては中の上レベルはありそう。それを投球術を駆使して、上手く活かしているように思います。逆に言えば、絶対的な特徴やボールがないからこそ、適度なまとまりがあってもドラフト6位での指名なのでしょう。
(投球フォーム)
ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込むようです。足を引き上げる勢いや高さはあり、バランスの取れたフォームながら、結構全身をダイナミックに使ってきます。それでいて軸足一本で立った時に、軸足の膝が真っ直ぐ前に伸びきることなく、力みが感じられないところが好いですね。
<広がる可能性> ☆☆☆☆
引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせているので、お尻を一塁側に落とせます。そのため無理なくカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球も投げられます。
「着地」までの粘りも悪くないので、多彩な変化球を投げることが出来るでしょうし、それなりに切れのある変化も期待できそうです。
<ボールの支配> ☆☆☆☆
軸がブレないバランスの好いフォームでありながら、グラブも最後まで内に抱えられており、両サイドへの投げ分けは安定しているのでは。更に軸足の甲でも、地面を深く押し付けることができており、ボールも上吊らないのではないのでしょうか。「球持ち」や指先の感覚も悪そうではなく、制球は安定しているようにフォームの上からも思います。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻を一塁側に落とせているので、無理なく身体を捻り出すことができます。そのためカーブやフォークといった球種を多投しても、それほど問題はありません。
ただ腕の振り下ろしを見ると、ボールを持っている方の肩は上がり、グラブを持っている方の肩が下がっているように、その投げ方に無理を感じます。またテイクバックした時も、背中のラインよりも肩が後ろに入り込むようにも見えます。そういった意味では、肩への負担は小さくないはず。アフターケアには、充分注意してもらいたいところ。
<実戦的な術> ☆☆☆☆
「着地」までの粘りが悪くないので、身体の「開き」も遅く、ボールの出所は見難いはず。そういった意味ではオーソドックスなフォームには見えますが、けして合わせやすいフォームではなく、粘っこい投球が期待できるのではないのでしょうか。
腕も適度に身体に絡んでくるのですが、それほど腕の振りに強さは感じられません。もう少し上半身や腕を鋭く振れるようになると、より変化球が生きるかもしれません。またボールのへの体重の乗せは悪くないように見え、そのボールも打者の手元まで生きた球が行っているのではないのでしょうか。
(フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、殆どの部分で優れた技術の持ち主であるように思えます。しいて言えば「球持ち」や腕の振りなどに粘りや鋭さが出てくると、更に好いフォームになるのでは。非常に、実戦的なフォームだと言えるでしょう。
(最後に)
ここまで見てくると、ボールに絶対的なものはなくても適度なまとまりがあり、投球センスを生かし上手く討ち取って来るタイプなのかなと思います。更に実戦的なフォームのため、上手く相手のタイミングをずらせる術を持ち合わせているのではないのでしょうか。
派手さはないのですが、粘っこい投球で生き残って行ける投手なのかもしれません。すでにある程度形が出来ている投手なので、最初の1,2年で今後が見えてくるように思います。ぜひ一年目から、一軍でのチャンスをつかめるような活躍を期待したいですね。実際の投球が見られる日を、今から楽しみにしております。
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