12sp-7+
高橋 朋己(24歳・西濃運輸)投手 174/75 左/左 (岐阜聖徳大出身) |
「高宮和也(オリックス)を思い出す」
フォームこそ違えど、同じ東海地区の社会人の逸材で左腕と共通項は多い。特にボールの勢いは素晴らしく、ハマッタ時の爽快感は見事だが、そうではない時の不安定さは彼とダブッて見えてくる。果たして自由枠でプロ入りした高宮に対し、高橋 朋己 は、どのような評価が下されるだろうか。
(投球内容)
昨年の都市対抗で観た時は、好い部分ばかりが見えての投球だったので、逆に心配な点が多かった。その不安が、今年の大会で露呈される形に。左スリークオーターから投げ込む速球派左腕だが、少し癖のあるフォームです。
ストレート 130キロ台後半~MAX141キロ
大学選手権の時にも書いたが、今の東京ドームは他球場に比べ、3~5キロ程度は遅く球速表示される傾向に。実際その投球を観ていても、常時140キロ台~中盤ぐらいまでは出ているじゃなぇ?と思わせるボールに勢いと球威は感じられる。ボールの勢いがあるので、アバウトでも打者はまともには捉えられていなかった。ストレートに関しては、間違いなくドラフト級だと評価できるだろう。
変化球 スライダー
この日の投球が汲々だったのは、昨年の大会ではシッカリ決まっていたスライダーが、中々決まらなかったから。荒れ荒れのストレートと決まらないスライダーのために、上手くピッチングが組み立てられない。高宮の場合は、スライダーがストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込むかどうかが生命線だったか、高橋の場合はこのストレートでカウントが稼げるかどうかが生命線だと言えよう。
昨年もそうだが、今年も変化球はこの球ぐらい。そう考えるとコンビネーションは単調で、かつ安心してカウントが取れる球がないのは気になる材料。
その他
左腕ですが、それほど鋭い牽制は投げてきません。ただ少し間を空けたりする意味で、軽く入れてきます。それでもクィックは、1.2秒前後と基準レベル。フィールディングに関しては、冷静かつ大胆に送球できるなど、結構上手いように見えます。
(投球のまとめ)
ただこの試合では荒れ荒れの割に、それほどヒットを打たれていません。ボールも確かにバラツキを感じるのですが、両サイドに上手く散り甘いゾーンに入って来ないのは救い。
しかしスライダーが上手く入らないと投球が苦しくなり、本当のコントロールがない部分は、プロなどに入ればよりハッキリして来る部分。そう考えると現時点では、即戦力としてはアテにし難い投手という印象を受けます。
(投球フォーム)
昨年と比べ、フォームが悪くなったなと思ったのですが、思ったほど変わっていなかったことに気づきました。確かに身体のキレも重く、状態自体は悪かったと思います。しかし技術的な部分では、ほとんどいじっていないのではないかという気がするのです。
<広がる可能性> ☆☆☆
お尻をしっかり一塁側に落とせるフォームでもないですし、腕の振りもかなりサイドに近いスリークオーター。こう考えるとカーブで緩急をつけたり、フォークなどの落差のある縦の変化は望み難いものがあります。
ただこの投手、意外に「着地」までの粘りは作れているです。粘りが作れるということは、身体を捻り出すだけの時間は確保できているということ。そのためカーブやフォークといった球種以外の球ならば、上手く活かせる可能性が高い。カットボールなど少し力を抜いて投げられる球種をマスターして、投球を楽にすることを覚えたいですね。
<ボールの支配> ☆☆
昨年同様にグラブを内に抱え込めないし、足の甲も地面から浮いてしまいがち。指先の感覚も悪く、制球が不安定なのはあたりまえといった感じです。こういった部分を一切改善して来ていないので、当然上手くフォームがピタリとはまらない限り、制球は安定しないことが多いのでしょう。
<故障のリスク> ☆☆☆☆
お尻は三塁側(左投手の場合)にシッカリは落とせませんが、カーブやフォーク・シュート系の肘に負担のかかりやすいボールは投げないので、それほど問題はありません。腕の角度も下がっているので、肩への大きな負担も考えにくいです。ただ力投派で身体の消耗は激しいだけに、身体の何処かしらに疲れが溜まって来ると出る可能性は否定できません。アフターケアには充分注意して、取り組んで欲しいと思います。
<実戦的な術> ☆☆
この投手「着地」までの粘りがある割りに、身体の「開き」が早い珍しいタイプです。そのため左打者からもスリークオーターの割に、苦になく振り切られてしまうという誠にレアのフォーム。今年の都市対抗でもヒットを打たれているのは、右打者ではなく左打者相手からです。 腕もそれほど絡んで来ませんし「体重移動」が不十分な点も昨年から殆ど変わっていません。ただボールには勢いはあるので、この点はそれほど悲観しなくても好いのかなと思っています。むしろ身体にキレを出して欲しいですね。
(フォームのまとめ)
昨年から、殆ど変わっていません。特に課題の多いフォームの割に、改善しようという意識がないのは気になるところ。「着地」までの粘りこそあれ、「開き」「球持ち」「体重移動」に課題があり、実戦的とは言えません。
(最後に)
全国の社会人左腕の中でも、今年最も飛躍を期待していた投手でした。しかし成長の跡が観られず、内容も昨年に比べると、かなり劣る内容。オフに寸評に書いた、制球のアバウトさ、変化球の精度、実戦的とはいえない投球フォームなどの課題を、ハッキリ露呈した形になってしまいました。
少なくてもプロの即戦力とは考えづらく、もう一年ぐらい課題と向き合ってからでも、プロ入りは遅くはないのではないのでしょうか。ボールの勢いにかまけた左腕だということで、指名して来る球団があるかもしれませんが、時間はかかるでしょうね。まだプロ入りへの「旬」だとは思いません。
(2012年 都市対抗)
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