石山 泰雅(24歳・ヤマハ)投手 182/75 右/右 (東北福祉大出身) |
「ピンと来ないのう」
ドラフト会議も直前に迫り、各チーム独自候補の名前が上がってくる時期になった。そんな中、ヤクルトの外れ1位候補に・石山 泰稚 投手の名前が上がったのには驚いた。東北福祉大時代から見てきた投手ではあるが、これまでドラフト候補? と言われてもピンと来たことがない。それが今回、いきなりの上位指名を匂わす記事に、正直私は戸惑った。
(今年の石山)
都市対抗予選では、ヤマハの主戦として 4試合に登板し 防御率 0.64 と活躍して本大会出場に大きく貢献。都市対抗本戦では、初戦の九州三菱自動車戦に先発したが、ピリッとしない内容だった。
(投球内容)
非常にオーソドックスな、右上手投げ投手といった印象。ノーワインドアップから、勢い良く足を引き上げてきます。
ストレート 135~140キロ前半
MAXで146キロと言われますが、大体130キロ台中盤~出ても140キロ台前半ぐらいです。今年の都市対抗では球速表示の厳しい東京ドームということもありましたが、MAXで139キロ止まりだったかと記憶しています。
ただボール自体は、その球速表示よりは手元でピュッと切れて、打者が差し込まれる場面が目立ちました。またシュート回転するボールが多いのは、状況に応じてツーシームを使いわけている可能性があります。
変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ
基本的に、速球と変化球を織り交ぜコンビネーションで打ち取るタイプ。曲がりながら落ちるスライダー、緩急の効いたカーブ・それにチェンジアップなどがあります。特にスライダーで、三振を奪うケースが多いのではないのでしょうか。
その他
ランナーへの目配せをしながら、クィックは1.1秒前後~1.2秒ぐらいで投げ込んで来るなど基準レベル。特に鋭い牽制や素早いボール処理などの印象はありません。
(投球のまとめ)
東海予選では、28回1/3イニングで四死球は5つと、ストライクが入らずに自滅するような荒っぽいタイプではありません。ただストライクゾーンの枠の中での制球に課題があり、結構真ん中高めに甘く入る球が見られます。また実際にそういった球を打たれる場面が目立ちました。
大学時代は、左打者相手になると制球が乱れたり、腕が振れなくなる傾向がありました。しかしその点に関しては改善されており、特に左打者の内角に食い込むスライダーで、三振が奪えるようになっています。
ボールに凄みがない割に、細かい投球ができず甘さが残るのは気になります。特にフォームが嫌らしいとか図抜けた球があるわけではなく、特に特徴らしい特徴は見出だせません。
(投球フォーム)
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。その割にブレーキの利いたカーブが投げられます。ただフォークのような縦の変化球は、どうでしょうか?
「着地」までの粘りは悪くないので、多彩な球種を操ることができます。絶対的な球種がないのは、やはりお尻が落とせずどちらかというと球速のある小さな変化に向いたフォームだからでしょう。今後もその傾向は、変わらないと考えられます。
<ボールの支配> ☆☆
グラブが最後後ろに抜けてしまいがちで、両サイドへの投げ分けが不安定。足の甲の地面への押しつけも浅く、ボールが上吊りやすい状況を作ります。「球持ち」も並ぐらいで、指先の感覚も平均的。将来的にも、細かいコントロールを身につけられるのかは微妙です。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻が落とせない割にカーブを投げるので、肘への負担などが考えられます。ただ、めくらましに時々投げる程度なので、大きな負担にはならないと考えます。むしろシュート系や縦の変化を多投するようになったら、危険ではないのでしょうか。
振り下ろす腕の角度は結構あるのですが、無理して投げている感じは致しません。そういった意味では、肩への負担は大きくはないと考えられます。いずれにしても、故障には充分注意して取り組んで欲しいものです。
<実戦的な術> ☆☆☆
「着地」までの粘りは悪くないので、結果「開き」も平均的です。そういった意味では、それほど合わせやすいフォームではなさそう。
ただ振り下ろした腕が、身体に絡まなかったりします。また踏み込んだ足がブロックしてしまい「体重移動」を阻害していますが、思ったよりはボールに体重が乗せられているようには見えます。
(投球フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で言えば、特に素晴らしい部分があるわけではないのですが、大きな欠点もないフォーム。可も不可もなしといった感じで、むしろコントロールミスが多いところに、課題があるのではないのでしょうか。
(最後に)
実際の投球を見てみても、フォームを分析してみても、特に何が良いというものがあるわけではありません。特に今年になって大きく変わった印象もなく、何故評価が高まっているのかも私にはわかりません。
試合を作る能力はソコソコあるので、全く使えないということはないかと。ただイニングを重ねるにつれ、コントロールの甘さから痛打を浴びる場面も少なくないでしょう。ましてボールの威力・決め手もさほどではないので、先発でこそ持ち味が出るタイプではないのでしょうか。
ファームではソコソコも、一軍での活躍が正直イメージできません。いずれにしても活躍に確信が持てないので、指名リストに名前を載せる評価はしないという結論に達しました。ヤクルトスカウト陣は非常に高い評価をしていますが、果たしてどんな成績を残すのか興味深い一人です。
(2012年 都市対抗)
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石山 泰稚(東北福祉大)投手 182/73 右/右 (金足農出身) |
(どんな選手?) 均整の取れた体格の投手で、低めで伸びる速球と腕の振りの良さが目立つ正当派右腕です。3年生に逸材の多い福祉大投手陣の一角を担い、今春は3試合に登板して、防御率0.00と言う成績。今後は、もっと重要な場所を任されることを期待される投手です。 (投球スタイル) オーソドックスな右上手投手ですが、腕がしっかり振れるのが魅力です。球速は、135~MAX143キロぐらい。低めで球が伸びる時には、観るべきものがある選手です。変化球は、カーブ・スライダー。牽制などには鋭さを感じさせます。ただ、まだまだ投球を組み立てるセンスや細かい投げ分けなどは出来ておらず、先発を任されるのには経験が必要だと思われます。 制球は、けして破綻のないタイプではないのですが、とりあえずストライクゾーンの枠の中に球を集めるといったタイプ。特に右打者にはしっかり腕が振れて良い球が行くのですが、左打者には制球を重視しているのか?少し思いっきりの良さが薄れます。その辺は、ヒットの多くが左打者から打たれたものであり(相手の創価大打線は左打者が多いのもあるが)、かなりセーブしてと言うか腕が振れていないのが気になりました。 (今後は) まだまだ、持ち得るポテンシャルを充分にマウンドで発揮仕切れていない印象が残ります。ただ時々、低めで伸びる球があり、こういった球の割合が増えて来ると、投球内容も随分と変わって来るのではないのでしょうか。 来年の最終学年までに、如何にそういった球を増やして行くのか期待して見守りたいと思います。ただ来年も同学年の森山・桑鶴は残りますし、このまま大きなところを任されないまま大学生活を終えるかもしれません。本当の意味で、この選手の進化が問われるのは、社会人などに進んで野球を続けた時かもしれませんね。志しを高く持って、まずは大学時代に、しっかりした力を養って欲しいと思いました。 (2009年・大学選手権) |