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新垣 勇人(27歳・東芝)投手 183/84 右/右 (横浜商科大出身) 
 



                   「適齢期を過ぎてから」



 東芝の選手は、伝統的にドラフト適齢期である25歳を過ぎてぐらいから本格化することが多い。この新垣 勇人も、ドラフト適齢期には150キロ級のボールを連発しスカウトにアピールしていたが、イマイチまとまりが悪く総合力で物足りず指名漏れしてしまった選手。しかし適齢期を過ぎた昨年ぐらいから、全盛期よりスピードは落ちたものの投手としてのまとまりや決め手に磨きがかかり、プロでも即戦力でやれるだけの力を身につけてきた。個人的には昨年の時点で充分指名しても好いと評価していたが、今年は更に進化した姿を我々に魅せてくれた。

(投球内容)

 テイクバックを小さく取り、打者のタイミングを図らせないような嫌らしいフォームで投げ込んできます。見た目の華やかさよりも、こういった割り切りができるようになって実戦力を高めて来るのが、東芝投手陣の強味でもあります。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX143キロ

 球速表示が他球場よりも3~5キロ程度厳しい東京ドームだというのもあるのですが、昨年の都市対抗では常時140キロ台~145キロぐらいだったのに比べると、スピードは若干落ちた気が致します。しかし今年ハマスタで観戦した試合では、コンスタントに145キロ前後~MAX148キロをマーク。全盛期の150キロ近い球速を連発していた頃に比べれば多少落ちましたが、まだまだボールの勢いも充分と言えるレベルにあります。以前は結構アバウトだったコントロールも、今は適度にコース投げ分けられるようになっています。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど

 そして特に今年磨きがかかったのが、フォークを中心とした縦の変化。今や投球回数と同じぐらいの奪三振を奪うようになったのは、この球の存在が大きいのです。元々新垣投手のストレートやスライダーは高めに浮くことが多いのですが、この低めのフォークを意識させることができるようになって、高めのストレートやスライダーが効果的になってきました。以前なら、ただ高めにボールが集まるだけの投手とのイメージが強かったものですが。

その他

 成長はこれだけではありません。以前は平均的だった牽制が、今年はランナーに鋭く入れられるようになり、盗塁を許さない鋭さが増しました。クィックは、1.1秒台~1.2秒台と変わりませんが、こういった部分にまで神経を尖らせる意識の高さがあります。またフィールディングも、元々下手ではありません。

(投球のまとめ)

 昨年から両サイドをキッチリ突けるようになり、地に足の着いた投球ができるようになってきました。以前は好いところを見せようと、力で抑えようとする意識が強かったのですが、今はしっかり相手を洞察して打ち取れる技術を身につけつつあります。

 それに加え元々高かった球筋を、縦の変化を磨くことで逆手に取り、有効に高低を使うことができるようになっています。左右・高低の幅広いコンビネーションが、相手に的を絞らせません。彼ならば先発でもある程度プロでもやれると思いますが、私は縦の変化を生かして一年目からクローザーにすることも期待できるのではないかと評価しています。
(投球フォーム)

 昨年あたりから、余計な力みがなくなり制球が安定。間を意識するなど、時間の使い方も上手くなり、投球術に磨きがかかってきました。

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足を地面に伸ばすので、お尻の一塁側への落としはよくない。それでもカーブで緩急をつけたり、フォークなどの縦の変化を多く織り交ぜて来る。それをある程度可能にしているのは、前に足を逃し「着地」のタイミングを遅らせ、身体のを捻り出す時間を確保できているから。身体への負担はかかるが、こういったボールを投げる時間を確保している。

<ボールの支配> ☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面への押しつけが遅く、ボールを低めに押し込めない。そのため速球やスライダーは真ん中~高めの高さに集まりやすいのだが、フォークを落とすことでより高めの球を活かすことができるようになってきた。

<故障へのリスク> ☆☆

 お尻が落とせないフォームなのに、カーブやフォークなどを多投するので、肘への負担は気がかりなところ。ただ振り下ろす腕の角度には問題がないので、肩への負担は少なそう。いずれにしても、アフターケアには充分注意してもらいたい。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪くはないが、身体の「開き」は早い方。それ故に若い時は、150キロ近い球速を連発してもその効果は薄かった。しかし今は、テイクバックを小さく取ることでタイミングを図りにくくしている。「開き」が早くても、タイミングを取らせない工夫が見られるのだ。

 振り下ろした腕は身体に絡むが、テイクバックが小さいぶん絡みつくほどではない。そういった意味では、少しでも腕の振りが鈍ると球種が読まれてしまう危険性は感じる。またボールへの体重の乗せは良くないので、球速ほどはボールがグッと手元まではこない。その辺をテイクバックを小さくすることで、打者のタイミングを狂わし補っている。

(投球フォームのまとめ)

 ドラフト適齢期を過ぎ、カッコの良いフォームで速い球を投げようという意識が薄れた。その割り切りが、テイクバックを小さくとって打ちにくさを追求したり、余計な力がなくなることで制球の安定につながっている。ひとりよがりの投球ではなく、相手をじっくり観察して投げられるようになってきた。

(最後に)

 ボールの勢いは落ちてきているが、その分投球の安定感、縦の変化にも磨きがかかってきた。今ならば、先発ならローテーションの一角。後ろならばセットアッパーどころか、一年目からクローザーさえ期待できるレベルに到達しつつある。

 若い頃の「開き」の早いフォーム、一辺倒な投球などがなくなり、課題を一つ一つを克服。更に昨年よりも、実戦的な投球に磨きがかかっている。今年は、文句なしオススメ投手としてイチオシできる。こと一年目に関しては、新人王の有力な候補だと評価できるのではないのだろうか。また年々課題を克服してきた意識の高さ・考える力も、今後の成功を後押ししている。ドラフト5位指名だが、即戦力を計算できる選手なのは間違いない。


蔵の評価:☆☆☆☆


(2012年 都市対抗)








新垣 勇人(26歳・東芝)投手 183/84 右/右 (横浜商科大出身)
 




                 「いまさら感も強いが」





都市対抗が始まり、オープンニングゲームから素晴らしい投球を魅せたのが、社会人4年目に差し掛かり「適齢期」が過ぎた感が否めない 新垣 勇人 の投球だった。新垣は、昨年も140キロ台後半の球速を連発し、スカウト達から熱い視線を浴びていた。しかし終わってみれば、指名漏れ。私自身すでに候補として気にしていなかったのだが、今年観るのは初めてだった。しかしその投球は、あえてこの年齢でも指名を意識できるものだった。

(投球内容)

昨年よりもテイクバックを小さめに取り、ピュッとボールが突然出てくるような錯覚に陥るフォームに改造。140キロ台後半の力で抑え込むスタイルから、余計な力みが消えて低めに丁寧に投げようと言う意識が強くなってきた。

ストレート 常時140~MAX144キロ

以前ほどの馬力は陰を潜めたものの、低めやコーナー一杯にボールを集める制球力が出てきました。これまでは、結構アバウトで甘い球が多い投手だったのですが、その辺は大きな変化です。特に低めでも外角でも、微妙にボール一個分ぐらいボールゾーンに決まっており、その球を振らせるのが実に上手いです。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど

カーブで緩急・スライダーでカウント・フォークで空振りという、オーソドックスな持ち球ながら、一つ一つの球種が、コンビネーションで重要な役割を果たしています。ストレートが走っているからこそ活きる変化球で、効果的に使えていました。

その他

牽制は平均的で、フィールディングもそれなりといったレベル。クィックも1.1秒台でまとめられており、極端にこういった部分にセンスは感じられないものの、破綻のない技術は持っている。

(投球のまとめ)

余計な力みがなくなり、制球が大きく向上。ただそれだけでなく、一辺倒な傾向が強かった投球が、実に間合いの取り方が上手くなってきた。そういった時間的概念を、冷静にピッチングに交えられるようになったのは大きな成長。マウンドで冷静に、自分の投球ができるようになっている。

右打者に左打者にも、外角で微妙な出し入れができるまでに制球力が向上。ただ左打者からは、ボールが見やすいのか?痛打を浴びる傾向が強いようだ。

いずれにしても、プロのローテーションレベル級の配球とボールの威力があり、今ならば即戦力としてき期待できるだけの内容だろう。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、見分けの難しい腕の振りのカーブやフォークを修得し難いフォーム。しかし実際には、そういった球を修得し投球に生かすことができている。そういうことは、身体への負担は少なくないだろう。またもっと変化球のキレを意識するのであれば、「着地」までの粘りに磨きをかけたいのだが。

<ボールの支配>

グラブはしっかり内に抱えられており、両コーナーへの制球は安定。ただ足の甲での地面の押しつけは、つま先だけで上体は高い。「球持ち」もそれほどでもないのだが、ボールが低めに集められるなど少々不思議な投手ではある。本人の中では、かなりキャパを抑えてボールをコントロールしているのかもしれない。それでも、あれだけのボールが投げられるのだから、今のフォームをいじる必要はなさそうだ。

<故障のリスク>

お尻が落とせない割に、カーブやフォークを多投することからも、身体への負担は少なくないはず。ただ腕を振り下ろす角度には無理がないので、肩への負担は少なそう。以前よりも力みもなくなり疲労は溜まり難くく、故障のリスクは減っているのかもしれない。

<実戦的な術>

「着地」の粘りがなく、更に身体の「開き」も早くボールも見やすいはず。それでもあまり打たれなくなったのは、テイクバックを小さくして、いち早くボールを出してくる。そのため、ピュッとワンテンポ打者は振り遅れタイミングが合わせ難い。

腕は身体に絡んで振れており、速球と変化球の区別はつきにくい。ただ足の甲の地面の押しつけが浅い分、充分な「体重移動」はできていないが、その割にはボールに体重が乗せられている特殊なフォームではないのだろうか。

(投球フォームのまとめ)

私の理論を覆すような動作でも、実際にしっかり投球できているので、今のフォームを大きくいじることはないだろう。ただかなり特殊なフォームであり、一つ歯車が狂うとどうなのかな?という不安は残る。好調を長く維持できるのかが、一つ大きなポイントになりそうだ。

(最後に)

実際今年観るのは初めてなので、年間を通してこの投球ができるのかは疑問が残る。特にフォームが非常に微妙なバランスの上で成り立っており、それが少しでも崩れるとどうなのかな?と言う不安が残るのは確か。

それでも今回の投球内容ならば、今すぐプロでもローテーションに入るだけの投球術・制球力・マウンド捌きがそこにはあった。内容的には、☆☆☆ をつけたいぐらいのものではあったが、年齢的な問題・好調維持や実戦的なフォームという観点での不安もあり、少し割り引いては評価してみたい。ただ本人に強いプロ志望があるのならば、下位指名で指名を打診してくる球団もあるのではないのだろうか。ドラフト会議の当日の行方を注目してみたい。下位指名ならば、面白い指名となりそうだ。


蔵の評価:
☆☆


(2011年 都市対抗)









新垣 勇人(横浜商科大)投手 183/73 右/右(国士舘高出身)

 2007年度の神奈川大学球界を代表する速球派投手、それがこの 新垣勇人 だ。最速で140キロ台中盤を叩き出すと云われる投手で、高校時代よりはかなり球威・球速を増している。

 私の観戦した試合では、常時135キロ前後ぐらい。最速でも140キロ弱程度しか出していなかったが、その球は球速以上に力強かった。変化球は、スライダー・チェンジアップなどを織り交ぜて来る。

<右打者に対して> 
☆☆☆☆

 右打者に対しては、アウトコースに速球とスライダー。インコースにチェンジアップとストレーとを織り交ぜるコンビネーション。両サイドにしっかり球が散っており、制球力は変則的なフォームからは想像出来ない精度を誇っていた。

<左打者に対して> 
☆☆

 課題は完全に左打者に対する投球。左打者には、アウトコースに速球を中心に集めつつ、スライダー・チェンジアップを織り交ぜて来る。私が確認した3イニングでは、いずれも左打者からヒットを浴びている。左打者に対する攻めをもっと工夫すべきだろう。

 クイックは、1.2秒前後と平均的。フィールディング・牽制もそれほど際だつものはない。

 以前ほどスライダーが高めに浮いたり、身体のひ弱さは目立たなくなってきたことは好感。課題を克服して少しずつ資質伸ばせる選手なのかもしれない。




(投球フォーム)

 いつものように「迷スカウトの足跡!
2007年4月28日更新分に、彼の投球フォーム連続写真があるので、それを参考にして読み進めて欲しい。

<踏みだし> ☆☆☆

 写真1を観ると、ワインドアップで振りかぶっている。この時注目したいのが、背中の反り具合。ここに背筋の強さが表れる。しかし彼の場合には、背筋に力強さが足りず、まだまだ体幹に強さを感じられないのが残念。

 足の歩幅は肩幅程度と平均的。そこから写真2の段階まで引き上げる。その勢いは並ぐらいだが、高い位置まで引き上げることでエネルギーが捻出されている。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆

 写真2を観ると、軸足の膝から上がピンと伸びきってはいないので、それほど膝には力みは感じない。しかし立った時にすでに、身体が三塁方向へ少し傾いてバランスが悪い。こうなると身体が突っ込みやすく、何処かで修正しないと開きの早いフォームになってしまう。また軸足の股関節にも、充分体重が乗せ難い。

<お尻の落としと着地> 
☆☆

 立った時のバランスの悪さが、体重落とす時に前に倒れ込むように落ちて行く。そのためお尻を一塁側へは落とせずバッテリーライン上に落とすことになるのだ。こういった投手は、ブレーキの効いたカーブや縦に鋭いフォーク系の修得が厳しい。ただこれを無理に修正するよりは、こういったフォームだと考え、別の道を模索すべきだろう。

 その別の道とは、着地のタイミングを遅らせる意識を持つことだ。これにより、ある程度身体をひねり出す時間をキープ出来、体重移動や変化球のキレを生み出すことが可能になる。ただ残念なのは、彼の着地までの粘りが足りず、体重移動・身体の捻りを阻害している点である。着までの粘りこそ投球動作の核である。


<グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆

 写真6を観ると、グラブを最後まで内に抱えられている。これにより左右のブレを防ぎ、両サイドの制球力は安定しやすくなる。ただ彼の場合、足の甲を引きずる傾向がある。これは、お尻の落とす位置が適正ではないので、身体が回転する時に適正な場所に修正しようとするからだ。すなわち支点がズレてしまうことが、制球やパワーロスにつながるのである。

<球の行方> 
☆☆

 写真2のように、大きなテイクバックを取って投げて来る。この時、前の肩と後ろの肩を結ぶラインに角度が出来、打者からは球が見えなくなる。ただし気になるのは、背中越しにボールを持っている腕が打者から見えているのではないのだろうか。これでは、角度をつけている意味が半減してしまう。

 せっかく球を隠すことが出来ているのに、着地の粘りの無さが身体の開きを速くしてしまっている。大事なのは、着地した時にボールを持った腕が打者から見えていないことだ。

 写真5を観ると、腕の角度はかなりある。そのためボールには角度が感じられ、打者には球速以上の威圧感・あるいはタイミングを取りにくい可能性が出てくる。角度があると、マウンドの高さと相まって、目に錯覚を覚え微妙に芯をずらす可能性が高くなる。ただ写真5を観ると、着地の早さが、球の押し込みを阻害し、球離れが早くなってしまっている。こういった投手は、手元まで力を伝えられないので、微妙な制球力・球の伸びなどにも欠ける傾向がある。

<フィニッシュ> 
☆☆

 どうしても上体の力でブンと投げるタイプなので、振り下ろした腕は身体には中々巻き付いてはこない。また着地場所の悪さが、体重移動をブロックしてしまって地面を蹴り上げられないことが、写真6からも伺われる。ただ投げ終わったあとに、大きくバランスを崩すことがないのが、一定の制球力を維持できる要因ではないのだろうか。


(最後に)

 かなりフォームとしては癖のあるフォームになっている。そのためこのフォームを完全に修正することは考えない方が好いだろう。むしろ短所を微調整し、長所を生かせるような指導者のいるチームに進み、改善して行くしかない。またその欠点を前向きに改善して行ける資質も、彼には求められる。

 昨年よりもかなりビシッとしてきたし、個人的には評価をあげている。大卒即プロは厳しいかもしれないが、2年後あたりは充分期待が持てるだろう。そういった意味で、これからも注目して見守って行きたい1人だ。

(2007年・春季リーグ)








 関東学院大の内田徹と共に、神奈川リーグを代表する横浜商科大のエース。以前は、荒削りながら140キロ台中盤の速球で押す投球が目立ったが、今はゆったりしたフォームから角度のある140キロ前後の速球を投げ込んで来る。

 変化球は、カーブ・スライダー・フォークなどを織り交ぜ、主に速球とスライダーのコンビネーションが主。それほど制球力に乱れはないし、インコースを効果的に織り交ぜる投球も可能だ。ただ気になるのが、スライダーが甘く高めに浮くケースが多い。これは、上のレベル相手では見逃してくれないだろう。ただまだ身体があまりビシッとしていないところがあり、この辺が最終学年になってしっかりして来ると面白い存在になりそうだ。もうワンランク上の投球が出来るようになると、指名候補としても注目されるだろう。