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井納 翔一(26歳・NTT東日本)投手 188/84 右/右 (上武大出身) |
「まだまだ成長途上」
今年の都市対抗・トヨタ戦での好投が認められ、一躍ドラフト上位候補と評価急上昇中の 井納 翔一 。今年都市対抗前にも何度か見たし、今回改めて都市対抗の試合を見なおしたが、やはり私としてはまだまだ収まりが悪い投手、そんな印象を受ける。社会人4年目の26歳ながら、投手としての完成度や肉体の成熟度は発展途上であり、真の即戦力になり得るかは微妙ではないのだろうか。
ストレート 常時140キロ台~150キロ
都市対抗のトヨタ自動車戦では、常時140キロ台~MAXで148キロを記録。私のガンでも計測すると、大体このぐらいの球速を叩きだす。実際に他球場のガンならば、コンスタントにこれより2~5キロぐらいの球速は表示されるはずで、恐らく各球団のスカウトたちのガンならば、常時145キロ~150キロ近く、この試合でも計測していたのではないのだろうか。また188センチの長身投手ではあるが、腕の出はややスリークオーター気味なので、それほど角度を武器にしているわけではない。
実際生で見ていても、そのストレートの威力には「オッ!」と思わせる勢いと力強さを感じる。ただそれほど打者の手元でグ~ンと伸びて来るような球でもなければ、ピュッとキレのある球でもない。威力のある球で詰まらせるタイプの球質であり、速球自体にはそれほど空振りを誘う力はない。ちなみに昨年は一度も観戦出来なかった投手なのだが、今年の関東選抜リーグでは、94マイル(150.4キロ)を計測した投手でもある。
変化球 スライダー・チェンジアップ・スピリット・カーブなど
非常に何を投げているのかわかり難い選手なのだが、どうも横滑りするスライダーとチェンジアップのような縦の変化を多投し、更に小さく沈むスピリット、緩いカーブのような球を投げているように見える。
特に最大の特徴は、縦に沈むチェンジアップ気味の球(縦スラ?)。この球とのコンビネーションで投球を組み立ててくるが、この球も空振りを誘うというよりは、相手のタイミングをズラすための球種だと言えよう。
その他
大型の割りには牽制も上手く、フィールディングの動きも悪くありません。クィックも1.15秒前後でまとめられるなど、投球以外の部分には大きな欠点はなし。
(投球のまとめ)
平均して145キロ前後~150キロ近い球速能力は、今や社会人でも屈指のものがあります。ただ「開き」がやや早く、ボールに合わせるのはそれほど苦にならないはず。
ボールも真ん中~高めに集まりやすい傾向がありますし、勝負どころでは結構甘く入って来ることも少なくないなど、詰めの甘さが見られます。元々間合いを変えたり、微妙なコースの出し入れで勝負する技術はなく、球の威力で押しきれないと苦しくなります。26歳の年齢の割には、完成度が高いとは言えません。プロレベルの打者ならば、充分対応して来るのではないのでしょうか。
(投球フォーム)
ワインドアップから、振りかぶって投げ込んできます。190センチ近い体格から振りかぶるので、マウンドでは大きく感じられます。特にテイクバックも大きく取るので、余計にそれを打者は実感するのではないのでしょうか。
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻を一塁側に落とせるフォームではありません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種は向いていません。
着地までの粘りは平均的なので、ある程度いろいろな球を投げられる下地があります。実際の投球内容も多彩なのですが、どの球にも絶対的な威力がないのは、「着地」までの粘りの物足りなさにも原因があるのではないのでしょうか。
<ボールの支配> ☆☆
グラブを最後まで内にシッカリ抱えられていないので、両サイドの投げ分けも不安定。足の甲での地面への押しつけも浅く、ボールが上吊りやすい要因を作ります。「球持ち」もそれほどでもなく、指先の感覚に優れているようにも思いません。現状細かいコントロールはなく、ボールの威力に頼ったタイプです。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻が落とせない割に、縦の変化を多投するのは気になります。ただこれが、チェンジアップや縦スラの類ならば悲観することはないでしょう。腕の角度にも無理がなく、肩への負担は小さいフォームだと言えそうです。
<実戦的な術> ☆☆
「着地」までの粘りは平均的ですが、やや「開き」が早くなっていしまっているのが気になります。そのためコースを突いた球でも、打者には踏み込まれて打たれてしまうケースが目立ちます。
また腕は振れて身体に絡んで来るのですが、ボールには上手く体重が乗せられていません。そのため打者の手元まで、活きた球が行かないように見えます。体重移動が上手く出来るようになると、格段に変わってきそうな気は致します。
(フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に関しては、「着地」が並ぐらいも、まだ「開き」「体重移動」「球持ち」などは発展途上です。もう少し全身を上手く使えるようになると、球質も大いに改善されるのではないのでしょうか。彼に伸び代が残されているとするならば、まさにこの部分です。
(最後に)
26歳にして素質が開花し始めたように、ややマイペースと言うかのんびり屋タイプなのかもしれません。まだ要所での甘さも目立ち、本当にプロで即戦力になり得るのかは疑問が残ります。指名~開幕までの間に、急激に伸びるとか、統一球故にボールの威力で粗さが誤魔化せる可能性も否定できませんが、常識的にみて素材型の域は脱していません。即戦力を期待するのには不安が残りますが、素材としての魅力を考えると、指名リストには名前を残そうと思います。あくまでも中位~下位で取って妙味があるタイプであり、上位で即戦力を期待するのはどうかなと思います。
蔵の評価:☆☆
(2012年 都市対抗)
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井納 翔一(上武大)投手 188/80 右/右 (木更津総合出身) |
関甲新リーグを今春観に行った時に見て、取り上げた選手です。長身から繰り出す130キロ台後半~MAX143キロの速球を投げ込む将来楽しみな投手でした。 私が初めて観た時は、リリーフでの登板でもっと経験さえ積めばどんどん良くなりそうだとコメントしたのですが、まさか春季リーグでもそんな使い方だった投手を、大学選手権の緒戦の先発に起用して来るとは驚きでした。 速球にスライダー・チェンジアップなどを織り交ぜてきます。速球の手元までの勢いは中々のもの。更にチェンジアップの落差があり、左打者に対し、この球で結構空振りを取っておりました。立ち上がり高めに浮いた球を痛打されて失点するなど、まだまだストライクゾーンの枠の中での細かい制球力に欠ける部分はあるようです。それでも大型の割に、牽制も上手く、クィックも1.25秒前後・フィールディングも悪くはありません。野球センスとして際だつものはありませんが、大型の割には破綻のない器用さは、ある程度兼ね備ているように思えます。 まだ線が細く大卒プロとなると物足りない部分はあるのですが、この大学選手権が自信になると、今後秋の活躍が楽しみな選手です。順調に社会人で場数を踏んで更なるレベルアップが出来れば、2年後は上位指名候補に成り得る素材だと思います。大いに期待して、秋にその成長ぶりを確認しに行きたいです。 (2008年 春季リーグ) |