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森本 将太(BC福井)投手 174/70 右/右 (福井工大福井出身) |
「残念ながら見られず」
福井工大福井にいた 森本 将太 が、BCリーグでトップクラスのストレートを投げるとは、今年になって何度か訊いていた。そのためBCリーグを見るならば、注目選手の多い 新潟と福井 のチャンピオンシップを検討したが、結局遠征は叶わぬままシーズンを終えてしまう。
今回は、幾つかのBCリーグでの映像を見つけたので、その映像と彼の残した成績を元に寸評を作成したいと思う。ただ今回も、ちゃんと観戦出来たわけではないので、具体的な評価付けはできないことをご了承願いたい。
(投球内容)
ノーワインドアップから、しっかり「間」を意識して投げ込んできます。
ストレート 常時140キロ前後~中盤ぐらいか
Max151キロまで到達したと言われるストレートですが、実際見てみると、それほどボールの球威・手元での勢いは感じられず、思ったほどストレートに威圧感はない。いわゆるボリューム感を感じさせる球ではないので、プロの打者相手ではどうだろうか? 適度にボールは散っている印象ですが、それほど細かいコントロールはないようです。
変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど
右打者には横滑りする小さな曲がりのスライダーと、左打者にはチェンジアップや外スラを使ったコンビネーションで投球を組み立ててきます。右打者外角のボールゾーンに逃げるスライダーを振らしたり、左打者の外角低めに落とすチェンジアップで空振りを誘えたりします。時々緩いカーブで緩急を使ったり、ひと通りの変化球はある感じです。
その他
元々運動神経の好い子が、野球センスの高さでピッチャーもこなしているといったタイプ。それだけに、フィールディング・牽制・クィックなども卒なくこなす野球センスを感じます。
またBCに進んでからは、ランナーを出すと中々投げ出さないで相手を焦らすほどの「間」を強く意識したピッチングで、投球術にも磨きがかかりました。
(投球のまとめ)
確かに球速はあるのでしょうが、ボールが切れ型であまり球威がない。そのため、プロの打者相手だとどうなのかな? という疑問は感じます。それなら、このストレートでバカスカ三振が奪えるほどなのかと言われると、これまた疑問です。
また変化球もひと通り投げられますが、絶対的な球種はありません。コントロールもバラついていて、総合力では発展途上の投手との印象を受けます。あくまでも成長途上の投手なので、即戦力を期待する、そうった投手ではないでしょう。1,2年ファームで更に漬け込んで、どのぐらいの上積みができるかにかかっているのではないのでしょうか。
(成績から考える)
どうしても数試合の部分的な映像を見ただけなので、実際の投球のイメージが固まりません。今度は、残した実績から考えてみたいと思います。2012年度のBCリーグでの実績は
21試合 10勝(リーグ5位)9敗0S 136回2/3 105安打 67四死球 128奪三振 防御率 1.98(3位)
という内容。これを、いつものようにファクター別に考えてみたい。
1、被安打は、イニングの70%以下 ✕
被安打率は、イニングに対し 76.9% と少し物足りない。多彩な変化球を生かし、相手の的を絞らせない投球だが、BCの打者を圧倒し切れてはいない。プロの一軍を想定するのならば、これを更に70%を切りたいところであり、そう考えるとあくまでも 2軍レベルの投手なのかなという気もしなくはない。
2、四死球は、イニングの1/3以下 ✕
四死球率は、49.0% であり、基準の33.3%に比べると、かなり越えてしまっている。実際の投球を観ていても、ボールのバラつきが感じられ制球のアバウトさは否めない。この辺は、プロの一軍を想定するには、まだまだ物足りない。
3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎
先発ならば1イニングあたり、0.8個以上。リリーフならば、0.9個以上は欲しい奪三振率も、先発ながら0.94個奪えておりこの部分は合格点。ボールの威力が、かなりリーグでは上位であることを示している。NPBの打者相手だと、変化球・ストレートのレベルはどうかな? という疑問は残るものの、成績的には充分満たしている。
4、防御率は、1点台~0点台 △
独立リーグの打力を考えると、やはり防御率1点台前後でまとめたいところ。それを考えると、1.98 という数字は、やや物足りない感じもする。けして悪くはないが、まだまだ絶対的な安定感ではない。
(データからわかること)
実際見た印象と同じく、データ上でも圧倒しているという数字は残していない。しいていえば、想像以上に奪三振を奪えていること。見た目どおり、制球がアバウトだということがわかった。
(投球フォームから考える)
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足は、やや地面に伸びているものの、お尻の一塁側への落としは悪くない。そのため見分けの難しいカーブや縦の変化も、投げられないフォームではなさそう。
「着地」までの粘りも平均的で、適度にいろいろなボールは習得できるフォーム。ただ絶対的な変化球を身につけられるかと言われると、「着地」の粘りやお尻の落としからも微妙だと言わざるえない。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの制球は安定。ただ画像からわかり難かったのだが、足の甲の地面への押しつけはやや短く充分とは言えないかもしれない。ボールのバラつきが目立つのは、まだ「球持ち」が安定していないからのようで、将来的にはもう少し球筋が安定してくる可能性は感じる。投げている時のバランスがよく、軸がブレないところが好いところ。
<故障の可能性> ☆☆☆
お尻の落としから見ると、それほどカーブやフォークなどの球種を投げても、肘には負担がかからない感じ。ただ腕の振り下ろし見ると、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がっていることからも、少し無理がある振り下ろしに見える。極端ではないが、負担がかかるとすれば肘より肩ではないのだろうか。
<実戦的な術> ☆☆☆☆
着地までの粘りは平均的も、身体の「開き」は抑えられ、ボールが見やすいということはない。また振り下ろした腕は、シッカリ身体に巻き付くような粘りと力強さが感じられる。また「体重移動」も上手くできており、フィニッシュの形としては理想的。あとは、ウエートをもっとつけて、ボールにボリューム感を持たしたい。
(投球フォームのまとめ)
見た感じフィニッシュ・バランスが素晴らしく、実にコンパクトにまとめられている印象がある。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が抑えられ「体重移動」も素晴らしい。「着地」も悪くないし「球持ち」自体も悪くない。あとは、リリースを安定させて指先の感覚を磨きたい。投球フォームとしては、かなりレベルの高いフォームだと言えよう。
(最後に)
実際の投球やデータを見る限りは、制球のバラつきが問題だと考えられる。ただフォームを見た感じでは、けして土台になるフォームには欠点はなく、今後の筋力のアップや指先への意識を高めることで、この問題も徐々に改善できそう。
まだまだ一軍を意識するのには力不足であり、1,2年はファームで漬け込む必要がありそう。年齢的にも高卒2年目の選手だけに、その辺は致し方ないだろう。3,4年後に、どのような形で一軍に絡んで来るのか、その将来性に期待してみたい。今回は具体的な評価はできないが、プロ入りの「旬」であるかと言われればNO.であり、このタイミングでの指名が、吉と出るか凶と出るのかプロでの育成に期待するしかない。
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