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大場 達也(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







  大場 達也(24歳・日立製作所)投手 183/75 右/右 (鶴見大出身) 
 




                   「一つ一つの球は悪くないんだけれどもね」





 鶴見大時代から140キロ台後半を連発するなど、ボールの威力には観るべきものがあった選手。日立に進んでからも、昨年はリリーフ中心に常時145~150キロ級のボールを投げ込み期待された速球派。しかし今年は、先発ということもあり、球速自体は130キロ台後半~140キロ台前半と地味な数字。ただ一つ一つの球を観ていると、中々のものがある。しかしトータルでピッチングを観てみると、物足りない部分が目立つ投手なのだ。


(投球内容)

恵まれた体格を活かし、角度を活かし投げ降ろして来る速球派。

ストレート 130キロ台後半~MAX151キロ

 今年に入り先発での起用が中心だったので、球速自体は130キロ台後半~140キロ台前半と驚くものはない。ただ他球場よりも3~5キロ程度厳しい東京ドームのガンだと考えると、コンスタントに140キロ以上~中盤ぐらいは出ていたとみて好いだろう。

 実際その球を観ても、ボールに非常に角度があり打者は打ち損じているボールが少なくない。少なくても、その球速表示以上には感じさせる球ではあるが、ボールがバラツキ制球が定まらないのが最大の欠点。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク

 投球の多くは、チェンジアップとフォークとのコンビネーションで組み立てて来る。横滑りするスライダーのキレ・コントロールは悪くないので、むしろスライダーでカウントを稼いだ方が、投球が楽になるのではないかと思えてしまうのだが。結局カウントを悪くして、自らの投球を汲々とさせてしまい自滅するケースが多い。

 フォークも低めには集まるのだが、早く落ちすぎているのか?思いの外、打者の空振りを誘うことなく見切られてしまう。現状確実にこの球ならカウントが取れる、仕留められるというボールを持っていないところが、投球の不安定さにつながっている。

その他

 牽制は、中~中の上ぐらいのレベルで、けして下手ではありません。クィックも1.05~1.25秒ぐらいでまとめられるなど、基準レベルでしょう。何より冷静な時は、中々投球に入らずランナーを焦らすなど、上手い間合いで投げられます。

(投球のまとめ)

 ランナーを焦らすような間合いを使えるほど冷静な時は良いのですが、セットポジションに入ると明らかに動揺が観られたりと、精神的な不安定なところが観られることも少なくありません。

 投手らしい細かい一面もあり、最後まで手を抜かない姿勢など好感が持てる部分もあります。ただ投球同様に精神的なムラも激しいので、その辺がアテにしずらいタイプだと言えるでしょう。

 現状信頼できるボールがなく、制球の無さが自らのクビを絞めています。これでは、よりレベルの高いプロの世界では、ボールを見極められて投球にならないのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

今度は、昨年のフォームと比べながら、投球フォームを考えてみましょう。

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足を地面に向かって曲げ伸ばしするので、お尻は一塁側に落とせません。そのため元来は、見分けの難しいカーブやフォークのような縦の変化には適さないフォームです。

 更に「着地」までの粘りにも欠けるので、基本的に速球に近い小さな変化球が向いており、大きく鋭い変化は望み難いフォーム。フォークがドロンとして空振りが誘えないのも、この投球フォームに原因があります。昨年からこの部分は、殆ど変わっておりません。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは内に抱えられているので、ある程度両サイドには投げ分けられています。しかし足の甲の押しつけは地面から浮いてしまい、ボールが上吊って安定しません。更に「球持ち」も浅いので、制球の悪さは今後もつきまとうと考えられます。この部分も、昨年から改善されていません。

<故障のリスク> 

 お尻が落とせない割に、フォークを多投するので負担は大きいはず。更に降り下ろす腕の角度にも無理があるので、肩への負担も大きいはず。力投派でもあるので、肩・肘などへの負担は大きく、かなり体の手入れに気をつけないと、故障に泣かされる可能性が高いのではないのでしょうか。この部分も、改善されていませんでした。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りはないのですが、ボールが見えてから中々出てこないのと、ボールに角度を感じさせるので、打者は想像以上にシッカリ捉えられず、打ち損じが目立ちます。

 腕は強く振り下ろされており、投げ終わったあと体に絡みます。ただ「体重移動」は不十分なので、球速ほど手元まで活きたボールが行かず、ボールの質という意味ではイマイチ。これだとストレートで空振りは誘えず、詰まらせたり打ち損じを誘うタイプの球になります。

(投球フォームのまとめ)

 昨年から、投球フォームに関しては殆ど変わっておりません。当然投球の課題は改善されず、同じことを繰り返しています。けして意識の低い選手ではないので、本人の心がけや取り組み方次第では、改善できないとは考えません。ただ現状のままでは、プロでは厳しいと評価します。


(最後に)

 プロに行く行かないということを捨ててでも、社会人で長く活躍できるだけの実戦的な術を磨くべきです。今のままでは、いずれ信頼を失い社会人でも大事なところを任されないまま、早い段階で引退せざる得なくなりそうです。

 球一つ一つには素晴らしいものを持っておりますし、野球への意識も悪いとは思いません。あとは精神面の充実と日頃の創意工夫ではないのでしょうか。残念ながら総合力では物足りず、もう少し足もとを見据えて投球を見つめ直す必要がありそう。来年までに、どのぐらいの変化があるのか? 個人的には最後の期待を込めて、その時を待ちたいと思います。


(2012年 都市対抗)