武田　健吾（自由ヶ丘）外野手　１８３／７５　右／右

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「新庄２世と評判だが」

昨年は地味だった福岡の球児だったが、今年は打って変わって全国屈指の注目県。その注目選手とは、ドラフト上位候補の呼び声高い　森　雄大（東福岡）投手・笠原　大芽（福岡工大城東）の両左腕に加え、今回ご紹介する　武田　健吾　外野手の３人。

　しかしこのうち、笠原とこの武田は、私が遠征する前に、早々姿をけしてしまう。特に武田は、私自身どんな選手なのか観たことがないので、正直イメージがつかない。今回は、あくまでも評価づけではなく、動画で観た印象について述べてみたいと思う。

（守備・走塁面）

　５０メートル　６．０秒　の俊足が売りだと言われているが、知り合いのスカウトに聞くと、実際それほど足が速いわけではないと言うのだ。勿論ある程度の距離を走れば加速して、それなりのタイムは出せるのかもしれないが、野球に必要な塁間を走るスピードに関しては、それほどでもないらしい。これは、大型選手にはよくありがちで、野球の走力と短距離のタイムとは中々イコールとはいえない。このことからも、プロで盗塁をバシバシ決めて、足を売りにするほどの選手なのかは微妙なのではないのだろうか？

　中学時代から、投手として１３５キロ級の球を投げていたというから、地肩はそれなりに強いのだろう。意外に守備の評判は高く、外野守備は高い身体能力を活かしてイケルのかもしれない。

　どうも話を聞いている限り、実戦に即した逸材というよりは、肉体のポテンシャルに頼ったタイプの臭いがプンプンとして来る。何処までプロで使える走力・守備力を有しているのかは、現時点では半信半疑。

（打撃内容）

　幾つかの動画を見て、その特徴について考えてみた。動画を見た感想だと、打球は右に左にセンターへと、どの方向にも打ち返す。更にスイングは、少し遠心力を活かし身体の強さや金属バットの恩恵もあり、当たれば飛ぶのだろう。しかしフォロースルーの使い方やスイング自体を観ていると、けして長距離打者のスイングではない。イメージ的には、広角に打ち返す中距離ヒッターという気がして来る。

＜構え＞　☆☆☆

　スクエアスタンスで両足を揃え、グリップは高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなども悪くない。アゴをグッと引き、打席での集中力は感じられる。

＜仕掛け＞　遅すぎる仕掛け

　投手の重心が沈む途中で、足をベース側につま先立ちさせる。そこから再度ステップするので、どうしても始動全体が遅すぎてしまう。これでは、打てる球が非常に限られてしまい、狙い球を逃さず叩く「鋭さ」が求められる。最後の試合となった希望ヶ丘高校との試合で、５打数ノーヒットだったと訊いて、やはり打てるタイプが限られるだろうなという印象はより強くなった。

＜足の運び＞　☆☆☆

　足を上げてから降ろすまでの「間」が短いので、打てるタイミングは極限られます。そのため狙い球をあらかじめ絞っておかないと、瞬時には対応できないタイプの打者だと言えるでしょう。それでも「鋭さ」は持っている選手なので、こういったタイミングで始動しても、ある程度は結果が残せるタイプの打者だとは考えられます。

　ベース側に踏み込んで打ちに行くインステップ打者で、踏み込んだ足下もブレない。そのため外角の厳しい球や低めの球にも、開きを我慢してついて行くことができます。むしろ内角の捌きの方が窮屈ではないかと思うのですが、引っ張る時は引っ張ります。

＜リストワーク＞　☆☆☆

　打撃の準備である「トップ」を作るのは遅くなく、深くしっかりした「トップ」は作れています。そこから少しからだから離れたところをバットが軌道しつつも、バットの先端であるヘッドは立てているので、ドアスイングにはならない。意外に外の球でも上手く拾って、フェアゾーンに持って行けます。

　スイングの「強さ」にはプロの臭いがしますし、最後までシッカリ振り抜けています。ただフォロースルーを使って上手くボールを運ぶと言うよりは、強いスイングで打者の間を抜けて行くような打球が多いのではないのでしょうか。

＜軸＞　☆☆☆☆

　足の上げ下げは小さいので、目線の動きは小さく安定しています。身体の「開き」も我慢できていますし、軸足も大きくは崩れません。軸を起点に、綺麗な回転でスイング出来ています。

（最後に）

　ハッキリわかるのはスイング動作ぐらいですが、思ったよりも抑えるポイントは抑えられているし、打席での集中力や食らいつく姿勢は悪くないように思います。

　始動が遅すぎる点・スイング軌道にロスがある点などを考えますと、少し荒っぽさはありますが、プロの指導で十分改善が可能なレベル。高校からプロに入る打者なんだろうなという雰囲気は、プンプンと伝わってきました。具体的な評価づけできませんが、中位前後での指名があっても不思議ではない素材ではないのでしょうか。

（２０１２年　夏）