12kp-6






藤浪 晋太郎(大阪桐蔭)投手 197/85 右/右 
 




                   「ようやく実を結んだ!」





 センバツ優勝投手になった後の寸評でも、私は藤浪に対して 積み上げてきたものが感じられない。まだ自分とだけ戦っていて、相手を意識したピッチングが出来ていないと切り捨てた。あれから5ヶ月あまり、彼はどのような成長を遂げたのか?
 

(春からの成長)


 ようやく、相手をよく観察して投球できるようになってきました。相手に例え打たれても、次の打席を想定して一試合をトータルで考えられるようになったのです。そういったマウンドでの余裕も、実際見ていて地に足の着いた投球ができるようになったと感じられる要因です。

 具体的には、ボール球を意識的に振らせる技術を身につけたり、自分の思いどおりにコントロールできる制球力を身につけたことで、精神的にも自信を持ち落ち着いて相手と対峙できるようになったということでしょうか。

 あとは、センバツよりも更に球威・球速を増したことで、無理して速い球を投げようという力みもなくなりましたし、少しぐらいコントロールミスしても痛手は喰らわないという自信も、マウンドで芽生えてきたのではないかと感じます。ようは例え打たれても、打たれては行けない場面で打たれなければいいという、良い意味での開き直りを持てるようになった気が致します


(投球内容)


 相変わらず投球を見ていていると、ピッチングに抑揚がなかったりして、何か訴えかけて来るものに乏しい面はあります。その違和感は、未だに拭えません。


ストレート 145~MAX153キロ


 平均して2,3キロは、コンスタントに選抜よりも速くなってます。それに伴い球威・勢いもワンランク、春よりもレベルアップ。まだボールがバラついたり、高めに抜け気味にゆくこともあるのですが、大まかコースにコントロールできつつあります。高めにバーンと捕手のミットに突き刺さるストレートに勢いが出てきて、この球で三振を奪うケースも増えてきました。


変化球 スライダー・フォーク


 変化球は、春と同様にスライダー・フォーク中心に組み立てきます。春よりも、右打者外角低めのボールゾーンに、意識的にスライダーを集めることができるようになりました。ここで、三振を奪うコツを覚えた気が致します。左打者には、フォークで空振りを誘います。特にストレートとフォークのコンビネーションで投球を組み立ててきます。低めのフォークを打者に意識させることができれば、高めのストレートもより効果的になるはず。


その他


 197センチの体格でも、フィールディングは落ち着いてボールを処理します。この選手、「間」を外すために牽制のフリをすることはありますが、基本的に牽制はしてきません。

 また春先は、1.0~1.1秒で投げ込めていたクィックも、1.2~1.3秒ぐらいと、昔のタイムに戻ってしまいました。恐らくこれは、投球のバランスを崩してまで早いクィックで投げるのはやめ、多少精度が落ちても、投球自体に集中しようとする意識の現れではないかと考えられます。


(投球のまとめ)


 球の威力・制球の精度・相手を冷静に見られるようになった投球術など、春からの大きな成長が感じられます。その一方で、投球の力の入れ加減、抜き加減に欠け、テンポなども含めて非常に単調な印象を受けます。この投球のメリハリの無さが、何か彼のピッチングにおいて何を訴えたいのかわからず、心に響いて来ない要因ではないかと思います。こういうのは、持って生まれた感性やセンスといったもので、音楽で言えばリズム感がないのと似ています。その辺が、将来的にどういった影響をピッチングに及ぼすのか? 私自身まだ掴めていません。ただプロというのは、自分の感性を膨らませてゆくことで長く活躍してゆく世界。その発想力に乏しいことが、活躍に影響を及ぼさないのかという不安は残ります。


(投球フォーム)


今回は、センバツとの違いを中心に考えてみたいと思います。


<広がる可能性> ☆☆☆


 引き上げた足を、まだ地面に向けて落としているので、お尻の一塁側への落としは甘くなっています。しかしセンバツの頃よりは、改善されつつはあります。フォークも高速でスピリット気味であり絶対的な落差に欠けるのは、この辺の動作の甘さにあります。またカーブがドロンとするのも、これが一つの要因になっていると考えられます。

 最大の成長は、春よりも着地までの粘りが出てきて、地面を捉えるのが遅くなりました。これにより身体を捻り出す時間が確保できるようになり、より多彩な変化球を身につけられる可能性が広がっています。


<ボールの支配> ☆☆


 グラブが最後、後ろに解けて抜けてしまいがちなのは相変わらず。ただ気になるのは、足の甲の押し付けが完全に地面から浮いてしまうようになって、ボールが上吊る要因が増しました。この辺は、「着地」のタイミングとの兼ね合いもあり難しいのですが、まだ理想のステップを模索している段階ではないのでしょうか。それでも「球持ち」の良さで、ボールをなんとかコントロールしています。グラブの抱えや足の甲の押し付けがシッカリ出来ていないので、指先の感覚が鈍って来るとポカを食らいやすいのだと思います。制球に関しては、プロを意識する上ではまだ甘い部分も目立ちます。


<故障のリスク> ☆☆☆☆


 お尻は甘いとはいえ、一塁側にある程度落とせるので、無理な捻り出しはありません。元々それほどカーブやフォーク・シュート系の球も多投しないので、肘への負担は少なそう。

 また振り下ろす腕の角度にも無理はないので、肩への負担も少ないのでは。そういった意味では、故障の可能性が低いことは、彼にとって大きな強味です。


<実戦的な術> ☆☆☆


 春よりも投球の淡白さが薄れたのは、「着地」までの粘りが出てきて、打者が合わせ難くなったこと。それに伴い身体の「開き」も遅くなり、ボールの見やすさも薄れました。

 長い腕も適度に絡んで来るので、速球と変化球との見分けは困難。ただボールに体重を乗せるという意味では、まだまだ成長途上といった感じです。


(投球フォームのまとめ)


 「着地」までの粘りが出てきたことで、投球全体に良い影響を及ぼしています。「球持ち」「開き」なども良くなり、あとは「体重移動」を含め、理想のステップを見つけることではないのでしょうか。肉体的な成長だけでなく、技術的な部分まで踏み込んで取り組めた意識の高さを感じます。自分で考えて物事に取り組むということを、モノにできつつあるのではないかと考えます。

(最後に)


 課題である、相手を意識したピッチング。段階を踏んでの成長は、この夏に向けて確認できました。投げているボールは凄くなり、野球への取り組みも素晴らしくなってきた。なのに何かピンと来ない、この違和感が何なのか?

 私自身その答えを見つけられずにはいるのですが、恐らくそれは、彼からあまり 野球人 としてのセンスが感じられない、そこに尽きるのではないかと。

 ただその不器用なところを、努力できる才能と克服してゆこうという意識で、乗り越えて行けるタイプの選手でもあるように思います。恐らくプロでも、ある程度一年目から一軍ローテーションを経験。2年目ぐらいからは、主戦とステップアップして行ける投手に育つのではないか。そして毎年コンスタントに、二桁を勝てる選手に育つのではないかと評価します。

 ドラフトでは、最もハズレの可能性が低そうな選手。また限りなく大学・社会人の逸材に近いレベルに達しているという完成度の高さも加味すると、ドラフト会議当日は、最も多くの球団が1位指名で入札することになるのではないのでしょうか。今年のドラフト目玉は、藤浪 晋太郎 この人です。


蔵の評価:☆☆☆☆


(2012年 夏)








 藤浪 晋太郎(大阪桐蔭・3年)投手 197/86 右/右
 




                 「積み上げてきたものが感じられない」





私は前回の寸評で、抑揚のない投球内容・甘い球の多い制球・「着地」までの粘りのない淡泊なフォームという課題をあげてみた。確かに一冬越えた選抜大会では、夏の連投で疲れた終盤戦よりも、コンスタントに5キロは速い球を投げていたように見えた。しかし球が速くなったという以外に、目に見えて大きな成長が見られなかった。この辺に世代を代表する投手としては、あるいは上位指名確実な逸材としては、プロでの活躍を考えると物足りなさは否めない。改めて選抜の投球を振り返り、問題点を考えてみた。

(投球内容)

ストレート 145キロ前後~MAX150キロ

 大谷 翔平(花巻東)のように、小さなテイクバックからシナヤカに腕を使い、伸びのあるストレートを投げ込むのとは、藤浪のストレートは違う。大きなテイクバックをとって、少し固い体を真上から振りおろし、バーンとミットに突き刺さる。伝統的に大阪桐蔭の選手は、あまりシナヤカな身のこなしをする投手は少なく、ボールの回転はよくない。そのため打者の空振りを誘うというよりは、詰まらせて討ち取るケースが多くなる。

変化球 カーブ・スライダーなど

 単調な投球にならないように、たまにカーブを投げ込むことはあるが、基本はスライダーとのコンビネーション。三振の多くは、このスライダーで奪うケースが多い。特にスライダーは120キロ弱ぐらいなので、球速としては実に30キロ近い球速差がある。それを豪快な腕の振り下ろしから投げ込んでくるので、スライダーそのものの曲がりや精度よりも、見分けの難しいことで空振りを奪うのだ。ただそれが、レベルの高い打者相手に通用するのか?というと、私には疑問が残る。

 更に夏の予選では、フォークのような高速スピリットを織りまぜていたように見えた。しかし選抜の花巻東戦を見る限り、そういった球種は殆ど見られなかった。まだそういった球を封印しているのか、あるいは精度の問題では使えないなどの(捕手のキャッチングとの絡みとか)、何かしらの事情があるのだろうか?

その他

 昨夏もそうだったがこの投手、ランナーへは目配せこそするが、牽制を挟んでくることがない。197センチという破格の体格ながら、フィールディングは基準レベル。またクィックは、1.0~1.1秒ぐらいでまとめられ、クィックに関しては、昨年よりも平均して0.1秒ぐらい素早く投げ込めるようになってきた。

(投球のまとめ)

 ただ相変わらず投球の「間」のとり方とか、微妙な駆け引きで相手を仕留めるような繊細な投球はできていない。ただ淡々と抑揚のなく、一定リズムで投球する傾向は、以前と変わっていない。

 右打者には、比較的安定して外角にボールを集められる。しかし左打者には、両サイドにボールを散らせるものの、甘く真ん中近辺に入ってくることも少なくない。けしてピンポイントで決める制球力には欠け、あくまでも球の威力で勝負していることが多い。ただし低めのボールゾーンに切れ込むスライダーが上手く決まった時、打者の空振りを奪うことができる。

 昨夏に比べれば、幾分制球にまとまりがあるようにも思える。しかし左打者に対しては、結構アバウトなコントロールは、改善されていない。またボールが見やすいのか?右打者の場合、コースを突いた球でも結構打ち返されることが多い。この辺も、合わされやすいフォームという欠点は、以前と変わっていないのではないのだろうか?


(投球フォーム)

<広がる可能性>

 秋同様に、引き上げた足をピンと高い位置で伸ばせれば、自然お尻は一塁側に落とせる位置にあります。ただそれを行わないので、体を捻り出すスペースは充分確保できません。腕の振りが緩まないカーブの修得や縦に鋭く落ちるフォークを身につけたければ、お尻の落としをマスターすべきでしょう。

 また「着地」が早い欠点も、相変わらず改善されていません。「着地」が早くなってしまうのは、重心が下がる段階でバランスが取れず我慢できないから。引き上げた足を幾分二塁側に送り込むことで、着地のタイミングを遅らせることができます。ぜひ自分とよく似た大型投手の足の使い方やバランスのとり方を参考にして欲しいと思います。そうすれば自ずと、打者からはタイミングも計り難くなりますし、変化球のキレが増し・曲がりも大きくなるはずです。

<ボールの支配>

 抱えていたグラブが、最後体の後ろに抜けてしまっています。そのためフォームが暴れて、両サイドの投げ分けが不安定になります。足の甲の押し付けは、膝小僧に土が着くほどの沈み込みを、幾分緩和して体重移動がスムーズになるようにしているようにも見えます。けして低めに安定してボールが集まるわけではないのですが、ボールが極端に高めに抜けることもありません。またボールを前で放せるように、「球持ち」が良いのが彼の良さです。それほど指先の感覚に優れているようには見えませんが、大谷ほど球筋が暴れません。グラブの抱えがしっかりできるようになれば、もう少し球筋も安定してくるのではないのでしょうか。

<故障のリスク>

 お尻の落としは甘いのですが、カーブやフォークなどの球種・もしくはシュート系のボールも多投しないので、体への負担は少ないはずです。また腕の振りおろしにも無理がなく、肩への負担も小さいのは、故障をしない体という意味では彼の大きな強味です。前にも書きましたが、豪快な腕の振り下ろしがあるので、けして疲労が少ないフォームとは言えないのですが、こと肘・肩への負担は生じ難いフォームだと考えられます。

<実戦的な術>

 元々「着地」までの粘りがイマイチな上に、着地の際にカカトから降りるので「開き」が早くなります。そうなれば、自然と打者からは球筋が見破りやすく、甘くないコースの球でも打たれてしまうことが多くなります。

 腕の振りは素晴らしく、この点が速球と変化球との見分けが極めて難しい状況を作り出します。また重心の沈み込みを多少緩和させることで、「体重移動」は夏の頃よりも良くなってきているように思えます。以前よりは、ボールに体重が乗せられるようになってきました。

(投球フォームのまとめ)

 殆どフォームに関しては、いじっていないように見えます。ただ以前よりも「体重移動」がよくなり、ボールの手元までの勢いは増してきた感じは致します。ただこの冬の期間は、技術的なことよりも肉体をいじめることを重点的に行なってきたのではないのでしょうか。


(最後に)

 彼の投球を見ていると、あくまでも自分との戦いに終始していて、相手を想定した投球ができていません。相手打者がどう感じるのか、どう考えるのか? そういった一歩踏み込んで考えることを、日頃から意識すべきです。

 そのため下級生の頃から、同じようなことを繰り返しています。冒頭にも述べたように、何か積み重ねてきたものが、ピッチングからは感じられない。せっかくの努力が、報われにくいわけです。これから夏に向けては、肉体の成長を促すこと以上に、実戦的な投球が求められます。考えることを意識的に行なってゆかないと、また大事なときにポカをする。その過去の苦い経験を、繰り返すことになるのではないのでしょうか。そういった投球の工夫が見られるかで、彼の評価も変わって来ると思います。上位指名は揺らがないと思いますが、個人的にはモノ足りません。

蔵の評価:
☆☆☆


(2012年 選抜)










 藤浪 晋太郎(大阪桐蔭2年)投手 197/86 右/右
 




                       「発展途上」





 私が確認した2年夏までの 藤浪 晋太郎 は、まだまだ発展途上の投手だった。そのため上半身と下半身の連動がピタッとはまった時は素晴らしい球を投げ込むが、まだまだそういった球も少なく、甘く入って行く球も多く存在した。だから力で圧倒できる相手ならば好いが、スピードについてこられる相手打線だと、その甘さを見逃してくれない。藤浪が、大事な試合になるとポカすると言われるのは、藤浪自身の精神的な問題以上に、相手が甘い球を見逃さない技量を持っていたことに他ならない。

(投球内容)

 197/86 という破格のサイズの投手にしては、豪快に腕を振り下ろして、身体をきっちり使って投げられるところが、この藤浪の非凡なところ。最近ではダルビッシュ有に代表されるように190センチを超える投手でも、身体を思い通り動かせる選手は増えてきた。しかしそれが、195センチを超えるとなると、まだまだ私自身にも観たことがない、未知の領域となる。

ストレート 常時140~145キロぐらい

 秋の大会では、150キロ近い球を連発したという。しかし夏の予選では連戦などもあり、140~145キロぐらいの球速。極端に手元で伸びを感じるとか、ピュッとキレで空振りを誘う球ではないが、指にかかった時のストレートは、さすがに唸らされるものがある。ただそういった球は、まだ10球に1球にない程度だった。しかしそういった球を投げることがあるということは、将来的にそういった球を投げ込む割合が増して来る可能性は充分あるだろう。そうなったらこの選手の球は、手も足も出ないレベルに到達することになる。

変化球 スライダー・スピリット

 殆どの変化球は、曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーション。これになんだか、小さくスピードがあって沈む、スプリットのような球を別に持っている気がする。ただこの投手の場合は、大きな変化するボールを武器にするのではなく、あくまでも小さな変化でストレートの見分けが困難なところを持ち味としている。ただ武器であるスライダーは、時々甘く入ってくることも少なくない。

その他

 牽制は目配せこそしているが、殆ど一塁には投げないようだ。ただクィックは、1.15~1.2秒ぐらいで投げ込めており、ほぼ基準レベルだと考えて好いだろう。この体格でも、ある程度緩慢なく、自分の身体を動かせる運動神経は、かつてない素材ではあると思う。

 大きなテイクバックを取りながらも、豪快に振り下ろす腕の振りが最大の自慢。投球としては、淡々と抑揚なく投げ込んで来るタイプで、「間」とか打者との微妙な駆け引きをして勝負しているわけではない。あくまでも自分のペースを刻み、そのペースを崩さないように心がける。

(投球のまとめ)
 
 細かい制球力や投球術よりも、現時点では球の威力で圧倒して討ち取る。そのため冒頭にも述べたように、自分のボールについてこられてしまう打線と対峙した時に、それをかわせるだけの術を持っておりません。そうなると脆くも崩れさる。悪いときに悪いなりの投球で歯止めがかけられるようになることが、これからの最大の課題ではないのでしょうか。


(投球フォーム)

<広がる可能性>

 引き上げた足をピンと空中で伸ばす動作がないので、お尻を一塁側へは落とせません。そのため見分けのつかないようなカーブで緩急を効かしたり、縦に鋭く落ちるような球種の修得は厳しいでしょう。また「着地」までの粘りにも欠けるので、現状は速球に小さく変化をつけるような、カットボール・ツーシーム・スピリットのような球で、投球の幅を広げて行くことになりそうです。

<ボールの支配>

 グラブは最後まで内に抱えられているのですが、最後後ろに抜けがちです。そのため両サイドへの投げ分けも、甘くなることも少なくありません。足の甲での地面の押しつけは、膝小僧が着くほど重心が沈んでおり、ボールが高めに抜けることは少ないです。「球持ち」に関しては、結構ボールを前で放せており、けして悪くありません。もう少しフォームが固まり下半身が安定してくれば、もっと精度の高い制球力も期待できそうです。大型ですが、四死球で自滅する粗さはありません。

<故障のリスク>

 お尻が落とせませんが、カーブやフォーク・シュート系のボールも使わないので、肘への負担は小さいと考えられます。豪快に投げ降ろして来るのですが、投げ降ろすまでの肘の使い方が上手く、肩に負担がかかっていないのは非凡だと思います。ただ物凄いフィニッシュなので、身体への負担は無理がなくても大きいはず。疲れは人並み以上に溜まりやすいと考えられるので、日頃から身体の手入れは充分行って欲しいと思います。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りがないために、打者からはタイミングは合わせやすいはず。ただ高校生相手だと、圧倒的なスピードで、その欠点が見えにくいだけです。そのため身体の「開き」も、少し速いように見えます。甘くないコースを突いた球でも、打たれることが多いのでしょう。

 腕の振りは素晴らしいので、速球と変化球の区別は難しいはず。ただまだボールにしっかり体重が乗せきれているとは言えず「体重移動」は発展途上です。ただたまに、上手く体重が乗せられる時があり、そのときにビシッと好い球が、捕手のミットに突き刺さります。

(将来に向けて)

 投球フォームが決まらずに苦しんでいるのは、選抜までの 吉永 健太朗(日大三)によく似ております。彼は、最後の夏にはその課題を完全に払拭し、甲子園で頂点を極めました。藤浪にもそれと同様の、いやそれ以上になれる可能性を秘めています。そういった意味では、現在の力量に胡座をかくことなく精進すれば、素晴らしい投手になれる可能性があります。

 ただ現状は、抑揚のない投球内容・甘い球の多い制球・「着地」までの粘りのない淡泊なフォームなど、まだまだ物足りないなぁという思いは否めません。その辺の課題が、春までにどのぐらい改善されてくるのか、個人的には大変興味深いところ。これからは、いかに自分で課題を見つけ、そして自分自身の投球を膨らませて行けるのか、そのセンスと貪欲さが求められることでしょう。そのことこそ、プロで戦うものにとって、最も必要な資質だということを、肝に銘じておいて欲しい。


(2011年夏 大阪大会)