12dy-8
森下 宗(愛知工業大)中堅 176/76 左/左 (掛川工業出身) |
「下級生の時、一打席だけ」
私は、広島に育成枠で指名された 森下 宗 を下級生の時に、瑞穂球場で1打席だけ見たという記録がメモに残っていた。その時は、7番・中堅手として出場し、スライダーを空振り三振したとメモに記されている。当然、私の頭の中には、彼の記憶は残っていない。そこで今回は、東海地区の知り合いが彼のプレーを映像に収めていたのでこれを参考にさせて頂き、彼の打撃フォームを分析すると共に、彼の残した成績や映像の印象から、簡単にご紹介できればと考える。
(リーグ戦成績)
3年春 8試合 0本 2打点 1盗塁 打率.217厘
3年秋 12試合 0本 4打点 3盗塁 打率.349厘
4年春 13試合 1本 1打点 2盗塁 打率.159厘
残念ながら、4年秋の成績は、リーグや野球部のホームーページにも、詳細は掲載されていなかった。
(守備・走塁面)
50メートル5秒8の快速が、彼の売りだと言います。なるほど打ってからの走りだしの速さなどをみると、塁間への到達タイム(計測できませんでしたが)は、かなり速そうな選手に見えます。しかし上記の成績表を見る限り、この脚力を実戦で活かすのは上手くないことが伺えます。単純に塁間を走り抜けるスピードはあるのかもしれませんが、盗塁をできるセンス・技術という意味では、まだまだ課題があるのではないのでしょうか。
中堅守備に関しては、この快速を生かした広い守備範囲が魅力なのだとか。走塁の動き出しの速さからも、トップスピードに乗るのは速く、なるほど広い守備範囲を誇ることは想像できます。実際ホームへの送球の映像を見たのですが、極端に強肩という感じはせず、捕ってから投げるまでの一連の流れにスピードを感じますが、地肩としてはドラフト候補としては平均的なレベルではないかと考えます。
この選手のプレー全体に言えることは、非常にスピード感が感じられるということ。
(打撃内容)
3年秋の.349厘は悪くないのですが、他の2シーズンの打率が低すぎる印象は否めません。その理由について、考えてみたいと思います。
<構え> ☆☆☆
スクエアスタンスで両足を揃え、グリップは高く身体の近くに添えています。腰は深く沈むというよりは、背筋を伸ばし、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスという意味では平均的。
全体的に力が入っていて、固い印象を受けます。少なくても柔らかく幅広く対応するというよりは、限られた打てるゾーンの球を逃さず叩く。そういった打撃の打者であるように感じます。
<仕掛け> 遅めの仕掛け
始動は遅めに動き出すタイプで、典型的な長距離打者か生粋の二番タイプの打者が採用する仕掛けです。
彼は、完全に後者のタイプだと考えられます。
<足の運び> ☆☆☆
始動~着地までの「間」が短いので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さず叩く「鋭さ」が求められます。瞬時に緩急へ対応できるような、そういった打撃はできません。
小さく上げた足を、ベース側にインステップして踏み出します。そのため外角よりの球を、強く叩くことを目的としています。更に踏み込んだ足元がインパクトの際にブレないので、外に逃げて行く球や低めの球について行けます。逆方向にも強い打球を飛ばせるのが持ち味だと言うのも、なるほど頷けます。
ただ左の巧打者タイプにしては、シッカリ踏み込んで打ってきます。どうしても左の巧打者は、右投手の内角クロスの球へ差し込まれやすいので、インステップを採用すると率が上がってきません。実際彼も、内角の捌きが窮屈に見えます。
<リストワーク> ☆☆☆
早めにトップの位置にグリップを持って来るので、速い球に差し込まれるということはなさそう。振り出しも上からコンパクトにミートポイントまで持ってきているので、ボールを捉えるのに大きなロスは感じられません。
ただボールを点で捉えるタイプなので、その場で柔軟に対応するような、線のバッティングができるタイプには見えませんでした。捉えられる緩急・コースの幅は、極めて狭いのではないのでしょうか。ただ打撃の柔軟性は低いのですが、スイングが弱々しいとか、そういったひ弱さは感じません。
<軸> ☆☆☆☆
足の上げ下げは小さいので、目線は大きく動きません。身体の開きも我慢出来ていますし、軸足にも粘りが感じられます。軸を起点に、綺麗な回転ではスイング出来ています。
(打撃のまとめ)
打てる打撃の幅が、非常に狭いのが気になります。ただプレーに鋭さは感じられますし、力負けしているという印象はありません。
(最後に)
非常に、走・守 の動作に、スピード感があります。そういったプレーでの「鋭さ」みたいなものを強く感じます。その一方で、柔軟性みたいなものに欠け、非常に幅の狭い打撃が気になります。この点が、今後の大いなる課題ではないのでしょうか。
走力はあるけれど、まだその走力を生かしきれていない。守備も守備範囲は広くても、地肩は驚く程ではない。そういった意味では、まだまだ素材型の域を脱しられているわけではないようです。地元東海地区の野球に詳しい人の話でも、指名されたのは驚きといった選手だったようです。身体能力は高い素材のようですが、試合に溶け込むように順応してゆく、ゲーム感覚のようなものは良くないタイプなのかなと言う印象を受けました。実際にそうなのかどうか、プロ入り後ぜひ確認してみたいものです。
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