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美馬 学(24歳・東京ガス)投手 168/68 右/右 |
「社会人屈指のクローザー!」 170センチにも満たない上背ながら、ガッチリした体格から投げ込まれるストレートは、コンスタントに150キロ近くに到達する。過去3度の手術で、その腕にはボルトが埋め込まれる中、そのたびに復活してきた強い精神力も、この男をマウンドで大きく魅せる要因となっている。そんな社会人屈指のクローザーを、取り上げてみたい。 藤代高校時代は、小柄でよくまとまっている好投手でした。中央大時代も、私自身あまり記憶がないのですが、上級生の頃にはかなりの球速を投げ込むなど、今の剛球投手への片鱗を魅せていたようです。そんな彼が一躍注目されるようになったのは、社会人に進んでから。150キロ級のストレートでルーキーイヤーから、東京ガスの守護神として頭角を現してきました。 (投球スタイル) 力で押すピッチングスタイルなのですが、そのストレートは微妙にカットさせたり、ツーシーム的に少しシュート回転させて沈ませたりと、意外に素直なストレートを投げ込むタイプではありません。球威・球速を兼ね備えたボリューム感のあるストレートではありますが、打者の芯を外すことを常に意識しております。また速球派に多い制球難もこの投手には無縁で、細かい制球力こそありませんが、四球で自滅するようなタイプではけしてありません。 ストレート 145~MAX153キロ コンスタントに140キロ台後半の球速を誇ります。特別打者の空振りを誘うような手元での伸びやキレはありませんが、球威を兼ね備え、ボールに勢いのあるタイプです。特にボールを微妙にカットさせたり、シーシーム的にシュート回転させて沈む感じの球もあり、かなりストレートを微妙に使い分けている印象があります。 スライダー 135キロ前後 ストレートをカットさせているだけでなく、明らかな高速スライダーを投げ込みます。この球は、横滑りするタイプで、それほど空振りを誘う球ではありません。カウントを整えたり、投球のアクセントとなる球ですが、ボールに勢いがあるので、この球速でもある程度の効果が見込めます。ただ時々高めに甘く入るところを、狙い打たれることがあります。また変化球は、ストレートを動かしつつ、このスライダーぐらいしかないように思えます。そのため投球のバリエーションに物足りなさを感じます。 その他 クィックも1.15秒前後と基準以内で投げ込める投手であり、リリーフとしても合格点のレベルにあります。フィールディングも軽快で、野球センスの高さを感じさせます。元々試合をまとめるセンスがある選手であり、四死球で自滅するタイプではありません。 <右打者に対して> ☆☆☆ アウトコースにストレートとスライダーで、投球を組み立てます。内角にもボールを投げ込みますが、それほど厳しく突くコントロールはないようです。また緩急・縦の変化に欠けるなど、ボールの勢いかまけて単調になったり、決め手に欠けたりする部分があります。 <左打者に対して> ☆☆☆ 左打者に対しても、アウトコースをストレートとスライダーのコンビネーションで、投球を組み立てます。左打者にも緩急・決め球に欠ける部分はありますが、右打者よりも内角を厳しく攻められる傾向が見られます。 (投球のまとめ) 見ていてワクワクさせられるような力投が見られる反面、決め手に欠ける印象が拭えません。ファームとの交流戦で見ておりましたが、追い込んでから粘られて、なかなか仕留められない場面が目立ちました。そういった決め手や、投球のアクセントを如何に身につけて行けるのかが、今後の課題ではないのでしょうか。 (投球フォーム) お尻を一塁側に落とせるフォームなので、将来的に見分けの難しいカーブやフォークのような縦の変化も期待できそうです。ただ腕の振りが高速過ぎて、腕を緩めて投げるカーブは、明らかにわかってしまうとか、体格の無さから手が小さく、フォークが投げられない可能性は否定できません。 グラブも内に最後まで留めてられるので、両サイドの制球も悪くありません。足の甲でも地面をしっかり押しつけられているので、上背のない投手にありがちな、球が高めに浮く傾向も見られません。 腕の振りにも無理がなく、お尻が落とせるタイプなので、変化球を投げる時にも無理なひねり出しがありません。変化球は、負担の少ないストレート系の変化やスライダーなので、現状は大きな故障は考えにくいタイプです。とても3度の故障を経験してきた投手とは思えないフォームですが、その小さな身体に対し、鋭い腕の振りや身体のダイナミックさに、腕がついて行かないのかもしれません。 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で言えば、躍動感溢れる「体重移動」は、今年見た候補の中でも屈指のものがあるのではないのでしょうか。また「着地」までの粘り、手元までしっかり手首が振れるリリースなど「球持ち」自体も悪くないように思えます。しいていえば「開き」がやや早いので、ボールの勢いほど空振りが誘えないのかなと思えます。この辺を改善できたら、かなり理想的なフォームだと言えるでしょう。 楽天 (最後に) 社会人屈指とも言えるほどの球の勢い・球速がある上に、実績的にも素晴らしいものがあります。そういった修羅場をくぐってきた経験、過去3度の手術を乗り越え、野球をできる喜びを知っている精神力。速球派投手でありながら、四死球で自滅することのないまとまりなど、推せる材料は少なくありません。 ただその一方で、決め手不足・緩急などの物足りなさ・開きの早いフォームなどは、どうしても生で見ていると物足りなさを感じさせます。そういった意味では、プロでもリリーフ中心での活躍になると思いますが、セットアッパー・クローザーレベルでは苦しく、もし活躍するにしても、一中継ぎとしてのタフな活躍なのかなと思います。 今後何処まで投球の幅を広げられるのかは疑問なのですが、1年目から40試合・防御率3点台中盤~4点台前半ぐらいの活躍になるのではないのでしょうか。2年後・3年後などに、更にその上を狙えるのかが、一つ大きなポイントになってきそうです。個人的には、少々その点で不安があり、高い評価には至りませんでした。ただある程度完成されている投手なので、キャンプ・オープン戦など早くから話題にはなりそうです。 蔵の評価:☆ (下位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・都市対抗)) |
(どんな選手?) 藤代高校時代は、小柄ながら、まとまったタイプの好投手とのイメージが強く、中央大時代も、際だって凄い球を投げ込む記憶ありませんでした。しかしこの春観戦してきた時に、140キロ台後半の球速を連発し、ビックリさせられました。今や東京ガスの守護神として、非常に存在感のあるルーキーです。 (投球内容) 上背はないのですが、ガッチリした体格から投げ込まれる速球には、球威・球速を感じさせるボリューム感のあるタイプです。常時145~149キロぐらいの球速を誇り、アマ球界トップクラスの速球を投げ込む1人です。 投球の殆どは、スライダーとのコンビネーション。完全なパワーピッチで、細かい制球や投球術はなく、力で押すスタイルです。ただ元々まとまりのあるタイプだったので、マウンド捌きや制球力に大きな破綻はありません。予選8試合でも、防御率0.00と抜群の安定感を示したようです。 (今後は) 体格を感じさせないその球の威力は、来年のドラフト候補です。ただ、もう少し細かい部分ではどうなのか?来年は、チェックしてみたい選手です。非常に見応えのする選手で、リリーバーとしては、大塚(新日本石油)と並ぶ、ワクワクさせられる存在です。 (2009年・都市対抗) |