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弦本 悠希(広島)投手のルーキー回顧へ








弦本 悠希(四国・九州IL徳島・21歳)投手 176/76 右/右 (生光学園出身)投手





                     「驚異の奪三振率!」





 アイランド2年目の今年、弦本 悠希は、42回2/3イニングで、奪三振56を数える、驚異の奪三振率を記録。そんなアイランドリーグ屈指のクローザーが、広島カープからドラフト7位で指名された。

 弦本 悠希で思い出深いのは、3年夏の徳島大会。甲子園に出場を果たした徳島商と延長13回を投げきり敗れた投球だ。当時から中背の体格から、ポンポンとテンポ良く投げ込む力投派。高校時代は、常時135キロ前後ぐらいだった球速は、今や常時140キロぐらいは記録してくるような球の勢いを感じさせる。残念ながら今回は、僅か5球程度の試合の模様しか確認できなかったので、高校時代の投球も参考にしながら考えてみたい。





(投球内容)

 
勢いのあるストレートで、グイグイ押してくるスタイルです。速球とスライダーのコンビネーションでカウントを整え、フォークも交えて来る力投派です。ただ私の見た試合では、スライダー1球のみで、あとは全部ストレートでした。

 高校時代は、ストレートと縦に割れるカーブとのコンビネーションが目立ちました。両サイドに投げ別けつつ、高めにストレートが浮きますが、低めにカーブが決まる投手でした。ただスライダーもあったのですが、高めに浮き、少々怖い球でした。フォークもたまに織り交ぜておりましたが、それほど効果的な精度はありませんでした。

 これだけの奪三振を奪っているのですから、かなり縦の変化にも磨きがかかったことが想像されます。しかし試合の模様からは、縦の変化は確認できませんでした。

ストレート 140~140キロ台中盤

 現在のMAXは、148キロまで到達したと言われます。私の見た試合の模様でも、140キロ台をコンスタントに越えるようなボールの勢いは感じました。ただこの投手、それほど球威があるタイプではないので、甘く入ると怖いです。また少しボールが暴れる傾向にあり、微妙な出し入れができるような制球力はなく、あくまでもストライクゾーンにポンポン投げ込んで来るといった感じだと思います。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク

 高校時代は、ブレーキの良い縦のカーブとストレートで投球を組み立てていました。それにスライダー・フォークをたまに織り交ぜる感じで、カーブ以外の変化球の精度は高いとは言えませんでした。しかしここまでの奪三振を、ストレートのみで奪っているとは思えず、そういった変化球の精度の高さも身についてきたのではないのでしょうか。


<右打者に対して> 
☆☆☆☆

 
元々高校時代から、両サイドに投げ別ける制球力はありました。ただストレートが抜けることが多く、高めに浮きがちでした。しかしアイランドリーグでの試合では、4球はいずれも真ん中~低めのゾーンに集まり、その辺が高校時代から大きく成長してきた点かもしれません。

<左打者に対して> 
☆☆☆

 
左打者には、両サイドの投げ別けは甘くなるのですが、ストレートもスライダーも低めに集まっておりました。如何せんサンプルが1球しかないのですが、高校時代高めに甘く入っていたスライダーの制球も改善されたのかもしれません。


(投球のまとめ)

 何処まで変化球のレベルが上がったのかは、よくわからず。ただ球の勢いはあり、短いイニングならば、ある程度NPB相手でも抑えられるのかな?と言う気もしなくはありません。ただその辺は、残した成績やフォーム分析も加味して考えたいと思います。





(2010年度アイランドリーグ成績)


37試合 1勝3敗 13S 42回2/3 56奪三振 四死球24 防御率 2.32


1,被安打は、イニング数の70%以下 

 
残念ながらアイランドリーグの公式記録表には、被安打数が記載されていない。そのためこの部分は、正直よくわからない。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ?

 四死球率は、56.4%を越えており、50%を越えるような投手は、かなり制球力に不安があるタイプだと言えよう。特に圧倒的に打力が上がるNPBの打者相手になれば、余計に慎重になったりプレッシャーも強くなったりして、今以上に自分の投球ができなくなる可能性は高い。

3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 

 奪三振率は、1イニングあたり1.31個と、相当高いペースで三振を奪ってくる。勿論NPBの打者に、簡単にこの数字が当てはまるわけではないが、ある程度は短いイニングならば、球の威力が通用するだろうと言う期待は抱かせる。

4,防御率は、1点台が望ましい ?

 先発以上に、そのファクターが望まれる部分であるだけに、防御率 2.32と言う数字は、かなりNPBで即戦力を期待するには苦しい数字だと言えよう。過去のアイランドリーグ出身の投手達が、もっと優れた成績でも苦戦していたことを考えると、リリーフならば0点台ぐらいの数字は望みたい。

 被安打などのデータはわからないが、過去のアイランドリーグ出身の選手たちと比べても、けしてこの数字が図抜けた数字ではないことがわかる。ちなみに昨年ベイスターズに入団した福田 岳洋(IL・香川)投手の成績は、先発とリリーフとの違いがあれど

09年度 27試合 10勝5敗1S 144回2/3 113奪三振 28四死球 防御率 2.24

 この成績で、2010年度のルーキーイヤーの成績は、
18試合 0勝0敗0S 防御率 3.38 と言うソコソコの数字をあげているので、まるっきり彼が通用しないとも言い切れない。ただ福田は、アイランドリーグ史上最も成功した部類の選手だけに、彼がそれに当てはまるのかは微妙だろう。





(投球フォームから考える)

 お尻をある程度一塁側に落とせるフォームなので、見分けの難しいカーブや落差のあるフォークの精度を磨くことは、期待できると思います。ただ残念なのは、着地までの時間が短いので、それを大きく阻害している点が、非常に残念です。

 グラブを内にしっかり抱えられており、両サイドの制球は安定しやすい。ただ足の甲での押し付けは浅く、どうしても上体が高くなり、ボールを低めに押しこみ難い。

 腕の角度は無理がないのは好いが、着地までの粘りがないのに縦の変化を多投するとなると、アフターケアには充分注意したい。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「体重移動」に優れた技術があり、速いボールを投げ込むメカニズムに優れている。その反面「着地」「開き」「球持ち」には課題があり、プロで即戦力を担うには、かなり厳しいフォームだと言わざるえない。


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(最後に)

 実際数球しか、今年の投球模様を確認できていないので、これで評価するにはサンプル不足は否めない。ただ実際の投球内容と高校時代の投球内容を見比べ、更に過去NPB入りした先輩達と比較した成績・今の投球フォームを分析した結果、やはり即戦力として期待するのは厳しいかなと言う気がする。

 年齢的にも20歳ソコソコでもあり、まずはファームで少し育成してからと言う、年齢的な余裕がある選手。それだけに、プロ入りの「旬」と呼べるほどの実力はまだなさそうだが、今後の成長に期待してみたい。プロの環境に水が合えば、ボールに勢いがある投手だけに、こちらの想像以上の速さで頭角を現すかもしれない。このぐらいの投手が、どのぐらいやれるのか?個人的には、興味深いものがある。


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(2010年・春)