10ky-6
山下 斐紹(千葉・習志野)捕手 177/75 右/左 |
「評価天井知らず!」 春季大会を観た時点で、ドラフト指名間違いなしと確信したものの、まさかドラフトで1位指名をうけるほどまでに、その評価が上がるとは思わなかった 山下 斐紹 。下記の寸評を作成した春季大会は4月。そして最後の夏までの3ヶ月の間に、何か大きな変化はあったのだろうか?最後の夏の大会の模様を見なおし、春季大会からの変化を考えてみた。 率直な感想から言わしてもらえば、春季大会と夏の大会の印象は、良い意味でも悪い意味でも全く変わっていない。従って、春~夏にかけて急激な成長を遂げて、更に評価を高めたわけではなかったと考える。ただ注目される中、千葉大会で2試合連続の本塁打を放って魅せたのは、やはりスカウトには大いなるアピールとなったのではないのでしょうか。 (ディフェンス面) ほとんど下記の寸評と印象は同じです。どっしりと構えたら、余計に動くようなタイプではありません。ミットをしっかり示し動かさず、ボールを捕球しに行くときも、地面にミット降ろす悪い癖のない選手です。そのためワンバウンド処理など、低めの変化球にも立ち遅れることなく対応できます。ただ残念なのは、グラブだけを出してボールを小手先のみで捕りに行く傾向が強く、この点は春からほとんど改善されておりません。こういう選手が、プロで捕手として大成した例を、私は一人も知りません。 普段は、投手のリズムを意識して、テンポの良さを心がけます。ただ状況によって叱咤激励するために、投手への返球に強弱つけていると言うよりは、不甲斐ないピッチングをしているとムッとするのか?返球がきつく雑になる傾向が見られます。またリードに関しては、今のところ根拠に基づいていると言うよりは、かなり勘でやっているだけと言う印象は否めません。 スローイングは、試合の中で再三ランナーを威嚇し送球したりして、その肩を強烈にアピール致します。塁間を1.8秒台後半~1.9秒台前半ぐらいにまとめられるようになり、昨年よりも随分と送球タイム・制球の精度を上げました。ただこれをプロに混ぜてしまうと、超A級かと言われると微妙なレベルですが、更なる向上が見られれば、プロでもレギュラー捕手級のスローイングは期待できるかもしれません。ことスローイングに関しては、高校生でも他に指名された選手の方が、強い選手が何人もいました。肩・スローイングは良いですが、けしてこの能力が図抜けているから1位指名になったとは言えません。 (ディフェンス面のまとめ) チームの主将としての自覚に芽生え、人間的にも大きく成長。周りに目配せ、気配りできるようになり、人間的も幅が広がりました。ただ時々プレーの端々に、オレ様キャラ故の、ムラっ気が垣間見られる時が見受けられます。この闘争心が彼の長所でもあり短所でもあるのですが、捕手と言うポジション柄どうなのかな?と言う疑問は抱きます。 気になるのは、プロの捕手としての極め細やかさ・体だけで捕りに行くキャッチング、リードセンスに欠けるところなどを、プロで修正できるのか?ただこの選手は野手としての資質も高いのですが、けしてアベレージヒッターでも長距離でもないので、やはり捕手をすることで、評価される選手だと思います。ただ捕手として大成できるのかは、個人的に半信半疑な部分があることは否めません。 (打撃スタイル) 左の強打者で、イメージ的には巨人の阿部慎之助に近い感じが致します。この選手は、けして天性の長距離砲でも、生粋のアベレージヒッターとも違います。ツボにはまれば、高校生レベルならばモノの違いを魅せますが、本質的には中距離・ポイントゲッターだと考えられます。また強く強烈なスイングと言うよりは、上手く合わせて運ぶタイプです。特に一度タイミングを狂わされてからでも、タイミングを取りなおしてヒットにしてしまうなど、対応力があるのが特徴です。 <構え> ☆☆☆ 春までは、大きく足を引いたオープンスタンスでした。しかしこの夏は、軽く引いたのみで、ほぼスクエアスタンスと言った感じです。グリップを高めにバットを倒して構えるのは変わりませんが、あらかじめ捕手方向にグリップ引いて構えます。 腰の据わり・全体のバランスも良く、春よりもバランスの良い立ち方に修正されています。ただ自分のリズムを刻んで打席に立てていたのですが、夏はほとんど体を動かすのをやめていたように思えます。そのためグリップの引きで力みが生じていたのもありますが、少し柔らかさが薄れた印象を受けました。 かなり構えは春からいじってきており、良くなった部分と悪くなった部分が同居しており、まだ自分の形が定まっていないかもしれません。 <仕掛け> 早めの仕掛け 投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動 これが現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな緩急に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者の多くは、この仕掛けを採用するケースが多い。 彼が、けして長距離打者ではないと言えるハッキリした根拠の一つに、この仕掛けの影響が大きいとも言える。 <下半身> ☆☆☆☆ 足を引き上げ回しこむことで、着地までの「間」が作れている。これにより、様々な緩急に対応しやすく、打てるポイントは多いはず。その足を真っ直ぐ踏み込んで来るスタイルで、内角の球でも外角の球でも捌きと言う、幅広い打撃を目指している。踏み込んだ足元も、カカトを地面にめり込ませることで、インパクトのブレを最小限に抑えている。打ち損じの少ない、確実性の高い打撃が期待できており、下半身の動きは、春の良い形を維持できている。 <上半身> ☆☆☆☆ この選手の良さは、打撃の準備段階である「トップ」を早く作れる数少ない選手だと言うこと。しっかり準備を作れてからバットを振り出すことができているので、打撃に余裕があって幅が生まれやすい。 バットを寝せて、少しボールを捉えるまで外まわりなので、インサイドアウトの最短距離でボールを捉えるタイプではない。その代わり、外角の球でもボールの外側を叩き込むような、非常に高度な技術のスイングを行っている。スイングの弧は高橋由伸(巨人)のような大回りだが、バットの先端が下がることなく、広い面でボールを捉えられている。ボールをフェアゾーンに落としやすいスタイルだろう。 スイング軌道が大きい割に、それが気にならないスイングができている。この弧の大きさは、強打者たるゆえんだが、フォロースルーの段階でグリップを高い位置にまで引き上げるタイプではないので、基本的にボールを遠くに運ぶ打者ではないことがわかる。あくまでも野手の間、野手の頭の上ぐらいが基本のタイプ。むしろ春の方が、もう少しボールを遠くに運ぶようなフォロースルーをしていた。 気になる点をあげるとすれば、ボールに合わせる上手さがある反面、もう少しスイングに「キレ」と言うか「鋭さ」が欲しいかなと思う。それでも身体が強いので、打球自体は強い。この辺の感覚は、春観た時と変わっていなかった。 <軸> ☆☆☆☆ 足を上げ降ろすスタイルの割に、頭の動きは小さく目線は安定している。そのため、ボールを的確に追うことができている。体の開きも我慢でき、軸足も崩れず安定。波の少ない打撃が期待できるのではないのだろうか。 (打撃のまとめ) 僅か3ヶ月足らずではあるが、変化に乏しかったディフェンス面に比べると、打撃はマイナーチェンジを加えていた。けしてそれが良いことばかりではなかったが、根本的にボールを捉える技術・センスには秀でた選手。まだまだプロの一軍を意識するのには、スイングの鋭さ・強さに物足りないものは感じさせるものの、少なくてもプロで全く打撃が通用しないとは考えづらい。ファームレベルならば、一年目からソコソコの対応力を示すものと思われる。 楽天 (最後に) 捕手として大成できるのかは、正直微妙な選手だと思う。ただ打てる捕手と言う部分がなくなると、その魅力が半減してしまうことは否めない。 またプロのスピード・強さに戸惑う可能性は高いが、将来的に打撃で頭角を現す可能性は高いだろう。非凡な対応力があり、優れた技術が、これを後押ししている。そのため打撃で存在感を示しつつ、捕手として我慢起用されるうちに才能を開花させるか、もしくは野手にコンバートして打撃でアピールするのかの道を辿りそうだ。 野手としても、塁間4.05秒前後とプロに混ぜても中の上レベルの脚力があり、自慢の強肩も併せ持つ。打撃に関しては、いずれは大成できるものと高く評価する。ただ、いの一番で指名するほどの圧倒的なポテンシャルは感じられず、個人的には中位ぐらいでの評価かが妥当だったのかなと言う印象は否めない。ただ性格的にもプロ向きなので、その重圧を押しのけて行けるタフさは持ちあわせていそうだ。こういった選手が、プロでどんな成長を魅せていってくれるのか、個人的には大変興味深い。最終的な評価や印象は、春とほとんど変わらない夏だったので、評価はそのまま据え置きに留めることとしよう。 蔵の評価:☆☆ この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |
山下 斐紹(千葉・習志野)捕手 177/75 右/左 |
「人間的に大きく成長!」 彼を初めてみたのは、1年秋に行われた関東大会だっただろうか?抜群の地肩の強さと4番を打つ強打で、バックネット裏の高校野球通の人達からも大変に話題になった選手。それが、この 山下 斐紹 だ。 確かに地肩の強さやパワフルな打撃といった点では、光るものがあった選手。しかし投手への配慮に欠けるプレーや、捕手として洞察力などのきめ細かさに欠けるプレーからも、私自身彼の捕手としての適正には大いに疑問を持っていた。そんな先入観を持って、久々に春季千葉大会を観戦。しかし彼は、この一年間で見違えるほど、そのプレースタイルを変えてきていた。 (ディフェンス面) 何より変わった点は、チームの中心選手として、周りに配慮したプレーができるようになった点だ。それは、投手にだけでなく、他の野手やチーム全体にまで及ぶ。それは、捕手としてのプレーにも現れていた。大きな身体を小さく屈め、ミットを大きく魅せるように心がけて、できるだけ投手に的を大きく魅せる配慮がなされていた。またミットも余計に動かすことなく、投手だけでなく審判にもストライクコールされるやすい状況を作り出していた。また投手への返球ひとつ取ってみても、実に丁寧にボールを送るようになっている。 その一方で、ミット示した後に下げることがないので、低めの球への対応もよく、ワンバウンド処理など打球への反応も素早くなってきた。それは、プレーの一つ一つに集中しているからだろう。ベースカバーも全力でボールを追いかけ、カバーリングに入って行く。ナインには、常に大きな声で指示を出す司令塔としての役割を果たす共に、自ら率先してプレーすることでナインを鼓舞し続けた。しいて苦言を呈するならば、ボールを手だけで取りに行く傾向があるので、身体で止めに行くプレーをもっと心がけるべきだろう。 下級生の時は、地肩は強かったものの、動作に無駄があり塁間2.1秒前後かかっていた。しかしこの一年間で、スローイングにも無駄がなく、コンスタントに1.8秒台後半~1.95弱にまとめつつ、制球も安定したものに変わっている。自らポテンシャルに頼ることなく、実戦で使える代物になってきたのだ。 これまでは、ちょっと上のレベルで捕手を続けるのは厳しいかなと思っていた。しかしこのプレーを見る限り、私は上のレベルでも、捕手として期待してみても良いのではないかと考える。特にスローイングに関しては、関東で彼に匹敵する捕手が他にいるのか、ぜひこの夏は探してみたい。 (打撃内容) 身体が強いので、打球は強烈だしツボにはまればスタンドインの長打力は秘めている。ただ本質的には、スラッガーではなく、また非凡なミートセンスがあるわけではない。それでも変化球に合わせるセンスは悪くないので、けして荒削りなパワーヒッターではない。将来的にも、捕手としては充分基準を満たすだけの打力はあると評価する。 左オープンスタンスで大きく足を後ろに引き、グリップを高めに添えてバットを寝かせて構える。腰の据わり・両目で前を見据える姿勢は悪くないが、結構足を引いたオープンスタンスなので、全体のバランス的としては癖のある構え。しかし自分のリズムを打席で刻め、リラックスして構えているのはいい。 仕掛けは「早めの仕掛け」を採用しており、バリバリの強打者に見えるが、実は対応力重視のアベレージ打者のスタイル。身体の力が強いので、高校レベルでは強打者に見えるが、実際かなり器用なタイプなのだろう。 足を早めに引き上げ回し込むスタイルで、打撃の「間」が作れるタイプ。動画にもあるように、カーブを上手く貯めて打てるような緩急にも対応しやすい。そして真っ直ぐ踏み込み、インパクトの際にも足下がブレないので、開きも我慢できるし、打ち損じも少ないだろう。 打撃の準備段階である「トップ」も早く作れており、ボールに立ち後れることは少ないはず。そこからバットを寝せて出すも、バットの先端が下がることなく振れており、幅広くボールを捉えることができるスタイルだ。スイング軌道にも、大きなロスは感じられない。 気になる点をあげるとすれば、ボールに合わせる上手さがある反面、もう少しスイングに「キレ」と言うか「鋭さ」が欲しいかなと思う。それでも身体が強いので、打球自体は強い。どちらかと言うと強く引っ張ったくと言うよりは、上手く合わせて、乗せて運ぶタイプ。フォロースルーも適度に高い位置まで引き上げるので、ボールを遠くに運ぶ術は持っている。そのため野手の間だけでなく、野手の頭の上を越すような長打も期待できるだろう。仕掛けが早い割には、長打も多いタイプだと言えよう。 頭のブレも小さく、身体の開きも我慢でき、軸足も最後まで崩れない。想像以上に技術は高く、あとはもっとバットを鋭く振り抜く意識を持ちたい。上のレベルでも技術的に通用するだけの、打撃の基礎ができている。 (今後に向けて) ディフェンス力の大幅な成長、人間的にも大きく変貌を遂げ、素材としても高いポテンシャルを持っている。心技体三つのバランスも、最終学年になって整ってきた。個人的には、高校からプロに入るべき数少ない野手だと評価する。関東では屈指、全国でも3本の指に入る捕手ではないのだろうか。特に彼のようなオレ様タイプは、ぜひ高校から大人の世界に入り、その個性を磨いて欲しい! この記事が参考になったという方は、ぜひ! 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2010年 春季千葉大会) |
山下 斐紹(千葉・習志野)捕手 177/75 右/左 |
(どんな選手?) 秋季関東大会では、非常に話題になっていた強肩捕手。また選抜では、打っても4番打者として出場するなど、下級生ながら攻守の中心選手になっている。 (守備・走塁面) 残念ながら、走力に関してはよくわからず。ただ新チーム結成以来の46試合で、11盗塁という数字からも、けして動けない選手ではないようだ。 肝心のディフェンス力に関しては、確かに評判どおりの強肩ぶりを披露。ただ実際にタイムを計測してみると、2.1秒前後とそれほど際立つタイムではない。まだまだポテンシャルに頼ったスローイングのようだ。 グラブの存在はソコソコ示せているし、柔らかいキャッチング・打球への反応など、捕手としての素材は一級品。しかし関東大会の時に見ていて思ったのは、投手への配慮・洞察力などのプレースタイルは、個人的に将来的に捕手向きなのか?という疑問を持たざるえない。少なくても、私が捕手に求める資質は、あまり彼は持ち合わせいなかった。その辺が、最終学年までに、どこまで変われるのか注目してみたい。 (今後は) 新チームから、大きくクローズアップされる存在だろう。高卒でプロを意識できる素材で、順調に成長して行けば上位指名への可能性もありえる選手。ただそれだからといって、プロで活躍できる選手かと言えば、まだまだ私自身には疑問を持つところも少なくない。今後の精神的な成長に注目してみたい。 (2009年・センバツ) |