10ky-3
磯村 嘉孝(愛知・中京大中京)捕手 178/82 右/右 |
「やるべきことはやる捕手」 2010年度のドラフト戦線において、常にプロのスカウト達から高い評価がされてきたのが、この磯村 嘉孝 だ。ただ個人的には、闘志が表に出ず、野球で飯を食ってやろうと言うギラギラしたものが感じられず、プロとしてはどうなのかな?と言う疑問を常に持ってきた。そんな男の最後の夏を振り返ってみたい。 (ディフェンス面) ガッチリとした重厚な身体付きは、如何にもプロが好みそうな当たりも強そうだ。ミットをしっかり示し、投手に的を絞らせやすい。ミットも下げる癖はないので、ワンバウンド処理などにも立ち後れることはないし、ボールを1球1球しっかり押し込んで捕球できるので、審判からもストライクコールを導きやすい。 フットワークを活かしたり、打球に機敏に反応するようなタイプの捕手ではないが、ベースカバーもしっかりできているし、必要な時はしっかり動く。二塁までのスローイングタイムも、1.95秒ぐらいとまずまず。昨年までは、地肩は強くても動作に無駄が多くロスが多かったところが改善されつつある。 高校生のドラフト候補捕手としては珍しく、しっかり投手に配慮できるタイプの選手。その反面何が何でも自分がと言う強いリーダーシップや、投手にオレについてこい!と言う頼れるタイプの捕手ではない。そのため相手に傾いた試合の流れを食い止めるような存在感はなく、流されるとリードに工夫が無くなったり、上手く間が取れなくなり、一緒にズルズルと悪循環に陥ってしまう脆さが同居している。こと捕手と言うポジション柄、それはどうなのかな?と言うのは、終始彼を見てきて感想だ。 (打撃内容) 格段に選抜時より進化を魅せたのは、打撃フォームにある。選抜からの僅か4ヶ月ぐらの間に、ここまで打撃フォームを改善でき、それを自分のものにしつつあることは驚きに値する。 <構え> ☆☆☆☆ まず後ろ足に重心を預ける構えから、両足にバランス良く体重をかけるスタイルに移行。構えはじめは、腰の沈みが浅いものの、ボールを呼び込む際には、腰がしっかり沈み次の動作に移行しやすくすくなった。何より打席で、自然体でリラックスしてボールを待てるようになったのは大きい。 <仕掛け> 早めの仕掛け 春までは、明らかに始動が遅すぎたのを一気に早めに仕掛けに移動することで、格段に動作に余裕が生まれるようになってきた。今までは、ツボにはまれば長打をと言う出たとこ勝負の打撃だったのが、緩急にも対応しうる幅広い打撃を導くことができるようになったはず。これまでの脆いイメージからは、かなり一遍した感がある。 <下半身> ☆☆☆☆ しっかりベース側にインステップすることで、外の球を強く叩くことができるスタイルです。何より春からの成長は、地面を捉えている時間が短く、完全にレフト方向に引っ張る巻き込み型だった打撃を、長く地面を捉えつつ、インパクトの際に足下がブレないスイングを身につけ、身体の開きが我慢できるようになりました。これによりセンターから右方向への打撃が可能になり、格段に打てる打球の方向が広がりました。 <上半身> ☆☆☆☆ 元々打撃の準備段階である「トップ」を作るのが早い選手なので、その良さは残しております。ただボールを捉えるまでのスイング軌道にロスがあったのですが、だいぶ上から叩く意識を徹底させることで、インパクトまで無駄のないスイングができるようになってきました。 それでいて、スイングの弧はしっかり大きさを保ったまま、フォロースルーまでしっかり振り切ることができる選手です。けしてボールを遠くに運ぶタイプではないのですが、強い打球を導くことができるスイングです。 <軸> ☆☆☆☆ 動作が忙しくなくなり、静かに足を降ろせることで、目線のブレ・頭の動きも小さくなりました。自分からボールを追って突っ込んでしまう傾向も、身体の開きが我慢できるようになることで、だいぶ修正されたと思います。軸足にも安定感を感じ、波の少ない打者に変貌したようです。 (打撃のまとめ) 選抜から夏に向けて、劇的にフォームを変えてきました。この勇気と、短期間でその打撃をものにしたセンスは高く評価したいところです。またこの打撃をものにするためには、根本から打撃の意識を変えなければいけなかったはず。それができる柔軟性は、私にとって新たな発見でした。 (最後に) 夏に向けては、打撃に初めて真剣に向き合った時期だったのではないのでしょうか?これまでは、その潜在能力だけで行っていた打撃を根本から見直し、劇的な変化を魅せてくれました。これにより、上のレベルでも通用するだけの土台ができあがった気が致します。 まだまだ受け身なプレースタイルには不安を感じる部分はあるのですが、やることはしっかりやろうと言う意識が、プレーの端々から伝わって来るようになりました。一つ間違うと、埋没してしまう危険性は拭えませんが、それを補うだけの意識とセンスがある選手であるのは確か。高校生のドラフト候補の捕手としては稀な、捕手的適正を兼ね備えている点も、見逃せません。 本人がプロでやりたいと言う明確なものがあるのならば、高校からプロに入るだけの下地はできたように思えます。あとは、自分の気持ちに素直に向き合って、進路を決めていただきたいと思います。 蔵の評価:☆ (下位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |
磯村 嘉孝(愛知・中京大中京)捕手 177/75 右/右 |
2010年度の選抜大会において、スカウト達から最も高い評価を受けた 磯村 嘉孝。しかし私には、何か訴えかけて来るものが感じられず、物足りないものだけが残った。その理由は何なのか?今回は、考えて行きたい。 (プレースタイル) 全国制覇をした昨夏のチームからの正捕手で、甲子園でも本塁打を連発し、強肩・強打の捕手として全国でもお馴染みの存在。一冬を越えてどのぐらいスケールを増したのか、多くのスカウトが熱い視線を送った。 (ディフェンス面) プロスカウトが、如何にも好みそうな頑強な体格。ミットしっかり投手示し、そのグラブを下に下げないで捕球する。そのためワンバウンド処理などにも立ち後れることなく対応できる。ただこの選手、あまり打球への反応は素早いと言うほどではない。 けしてフットワークを使って身軽に動き回ると言うよりは、必要な時にしっかり動くタイプの捕手。ワンバウンド処理の際には身体を使って制止に入り、ベースカバーも怠らない。そういった動作を怠らない姿勢は、指導者から徹底させられているのだろうし、本人の意識からも、基本的なことを疎かにしない意識が垣間見られる。 キャッチングも、ボールを押し込むようなキャッチングができるので、投手の球に力負けすることなくしっかり捕球できる。またワンバウンド処理の際の、グラブの出し方なども修正され、昨夏よりもましになってきた。ただスローイングタイムは、2.05秒強かかるように、地肩は結構強いのに担いで投げる傾向があり、到達タイムがかかってしまう。まだまだ、自分の能力を存分に生かし切れない歯がゆさが、この選手にはある。 ただこの選手、下級生の時から中心選手として活躍し、プロからも注目される選手にしては、非常にプレースタイルが大人しいタイプ。投手への返球も軽く行っており、どちらかと言うと投手をガンガン引っ張る叱咤激励タイプと言うよりは、投手への配慮を重視するプレースタイル。ただ何処か積極性と言うか押しの弱いプレースタイルは、プロで飯を食って行こうと言うギラギラしたものが感じられない。そういった内面から沸き上がるような意欲が感じられない点が、私にはどうにも解せないのである。 捕手としての基本的な部分は、かなりできるようになってきた。課題もまだまだ多いが、むしろ内面的な部分の方が問題。その辺が夏までに変わって来るようだと、具体的な指名の話しも出てくるかもしれない。 (打撃スタイル) 昨夏の甲子園でも活躍したように、全国大会でも結果を残せるある程度の技量はあるようです。ただ頑強の身体を活かしたパワフルな打撃の持ち主ではあるので、ツボにはまればスタンドインのパンチ力と、ある程度の対応力は身につけております。ヘッドスピードが鋭いと言うよりは、強い身体を活かして打球は強く抜けて行くと言う類の選手です。また打球も引っ張り専門でもなく、右方向への打球も観られます。身のこなしが硬い割に、ある程度の結果がでるのは、すでに右方向への意識や打撃を、身につけられているからだと思われます。 (打撃フォーム) <構え> ☆☆ 前足を少しだけ引いて、後ろ足に重心をかけて立ちます。グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢などは平均的です。バットを握ったり離したりして、軽く揺らいでおりますが、構えに固さを感じさせる構えで、打席の中で力抜いてリラックスを意識できると好いですね。 <仕掛け> 遅すぎる仕掛け 仕掛けは「遅すぎる仕掛け」を採用。一度ベース側に足を持って行きつま先立ち。リリース前後にステップすると言う、通常プロレベルではここまで遅い仕掛けは、日本人の筋力・ヘッドスピードを考えると厳しいスタイルです。幾分始動を早める意識を持つべきかと思いますが、これが中々身体に染みついたもので難しい。 <下半身の動き> ☆☆ この選手、ベース側につま先した時にクロスに立っております。すなわちクローズスタンスの打者と同じ格好になります。こういった打者は、すでに身体が一二塁間に向いているので、真ん中~高めの緩い変化球以外は、徹底的に打球をセンターから右方向へはじき返すようにしないと、ことごとくボールを引っかけることになります。もし打球を引っ張りたいのであれば、まずクロスの格好をつくらないこと。それか今のスタイルのまま打撃をしたいのならば、ボールを引っ張ることを捨てる覚悟が必要です。夏までに、その意識が徹底されるかどうか気になるポイントです。 また踏み込んだ足下が、地面から離れるのが早いです。こういった選手は、基本的に打球を引っ張り・巻き込むタイプの選手です。そのため外の球を空振りするか、引っかけるケースが増えます。足下のブレ・離れを無くすようなスイングを身につけないと行けないでしょう。足を上げ降ろす「間」が殆どない選手なので、打てるポイントは限られており緩急に弱いはずです。狙いすました球を、逃さず仕留められるスイングを身につけないと、上のレベルではきついと思います。 <上半身の動き> ☆☆ 始動が極めて遅いのを補っているのが、打撃の準備段階である「トップ」を作るのが早い点です。そのため思ったよりは、全国レベルのスピードボールには立ち後れることなく対応出来ていると思います。ただボールを捉えるまでのスイング軌道に少しロスがあり、対応力に影響があります。それでもバットの先端が下がらないように意識はできているので、ボールを捉えさえすれば、ボールに力伝えやすい傾向にはあります。 少し横切りのようなスイングではあるのですが、フォロースルーまで力強く振り抜けております。打球がそれほど上に上がるタイプではないのですが、ヘッドスピードも基準レベルに達しておりますし、身体の強さで打球にも力強さがあります。 <軸> ☆☆ 自分からボールを追ってしまう傾向にあり、悪くなるとドンドン突っ込むタイプの打者だと思われます。身体の開きも我慢しきれず軸足も不安定で、調子を崩すと長く尾を引くタイプではないのでしょうか。 <打撃のまとめ> ヘッドスピード・打球の強さなどは、プロの捕手としては合格点。全国大会でも結果を出すように、ボールを捉えるセンス・動体視力などは悪くないと思いますが、それを活かすだけの技術に多くの課題を残します。また自分からボールを追いかけてしまう傾向にあり、ボール球に手を出してしまい我慢仕切れない傾向も見られます。下半身の安定と打球への意識の徹底で、だいぶ変わって来るのではないのでしょうか。資質としては好いものを持っているので、あとは技術と意識の問題。一塁までの塁間を4.7秒弱程度(左打者換算で4.4秒弱に相当)なので、走力は期待できません。あくまでも捕手として、大成することが望まれます。 (今後に向けて) 全体的にプレー「柔らかさ」・動作や意識に「鋭さ」に欠ける印象があります。攻守に秘めたる資質は、プロ級の素材だと思いますし、野球への姿勢や捕手としての適正は、けして悪い選手ではありません。 ただ、高卒でプロへ行きたいと言う貪欲さや積極性に欠ける点。技術的にかなり課題があり、特にセンターから右方向への打撃を徹底できるかなど、夏までにその辺の変化が見られるかどうかが、一つ指名への大きなポイントなのではないのでしょうか。 心技体のうち「体」と言う才能の部分はプロの素材。あとは「心」と「技」のいずれかが、指名レベルに達するかどうか、夏まで見守り続けたいと思います。それができた時、プロの扉は開かれることでしょう。 蔵の評価;追跡級! (2010年・選抜) |
磯村 嘉孝(愛知・中京大中京)捕手 178/78 右/右 |
(どんな選手?) 逸材揃いのチームにおいて、2年生ながら5番を任せられる強打と、強肩を活かしたプレーが魅力の捕手です。 (ディフェンス面) ミットを示した後、グラブを下げないで構えられる選手です。打球への反応・身体で止めに行くスタイルには好感が持てますが、ワンバウンド処理などには、まだまだ未熟なところが感じられます。 投手に軽く返球するなど、意外に配慮型の捕手です。普段のグラブ捌きには柔らかさは感じませんが、速球に力負けすることなく、しっかりグラブを押し込んで捕球することが出来る選手です。地肩もまずまず強いのですが、少々スローイングタイムはかかっており、動作の無駄を省いたり、制球の精度を上げるなど送球には課題を残します。 まだまだ課題も多い、粗いタイプの選手だと思いますが、まだまだ伸びる余地もありそうです。 (打撃内容) スクエアスタンスで足を揃え、一度ベース側に足をスッと持ってゆき、そこからカカトの上げ下ろし気味程度の足の上げで、ベース側にインステップして打ちに行くタイプの選手です。打球は、センターからレフト方向に、強い打球を飛ばします。ボールを的確に捉えるセンスは悪くなく、愛知予選でも打率.500厘をマーク致しました。長距離打者と言うよりは、野手と野手の間を抜けて行くタイプの強打者だと思います。 (今後は) 攻守に荒削りですが、力のある選手です。打撃には力強さを感じつつ、それでいて結構ミート能力も悪くありませんでした。守備もキャッチング・スローイングには課題はありますが、地肩など持ち得るポテンシャルは悪くありません。 今後、どう成長して行くかわかりませんが、可能性を感じさせる選手です。新チーム以後のアピール次第では、翌年の春にはドラフト候補としてマークされる存在になるかもしれません。今後も目の離せない選手の1人ではないのでしょうか。 (2009年・夏) |