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吉川 大幾(中日)内野手のルーキー回顧へ




吉川 大幾(大阪・PL学園)中堅 175/69 右/右





                   「野手の目玉?」





 2010年度のシーズンが始まる前から、今年の高校球界の野手の目玉は、吉川 大幾 だと言われてきた。しかし昨夏のプレーからは、私は何故彼がそこまで評価されるのかわからなかった。そして、その答えを見つけるために春季大阪大会にも足を運んでみた。

 しかしその答えは見つからなかった。そして迎えた最後の夏、私は再び彼を見に、大阪の地に赴いたのである。





(春からの変化)

 春季大阪大会から3ヶ月あまり、その時の詳しいレポートは、下記の寸評を読んで欲しい。今回は、実際に肌で感じてきた、彼の変化についてのみ触れてみたいと思う。

<変化1>

 元々遊撃手としては、将来的に厳しいかなと言う印象が強かった。しかし春~夏にかけて、だいぶそれらしくなってきた。けして図抜けてグラブ捌きが柔らかいとか、打球への反応が鋭いとか、スピード感はあるとか、地肩が凄いと言うことはない。

 しかしながら球際に強く、身の丈にあったプレーで、ソツがなくなってきた。そのためプレーに安定感が出てきたのである。それでもやはりプロレベルに混ぜてしまうと、遊撃手を担うには物足りない。ただ二塁手あたりならばと言う期待感は抱かせるようになり、以前のように長打力が求められる、三塁や外野ぐらいしかできないと言う印象からは変わってきた。

<変化2>

 春までは、その意識が並の高校生であり、高校からプロに入るにはどうなのかな?と言う印象を受けていた。しかしだいぶその辺も変わってきたようで、試合に入って行く形も良くなってきている。それでも何かその所作を見ていると、鋭さや雰囲気と言うものは感じられず、むしろそういったものは、チームメイトの観野 甲輝の方が、よっぽどプンプン臭ってドラフト候補らしく感じられる。ただ厳しくレベルの高い環境で揉まれてきている分、並の高校生と比べれば、プロに混ぜても戸惑いは少ないはずだ。





(最後に)

 身体は大きくはないが、ツボにはまればスタンドインできるパンチ力は秘めている。また難しい球に対しても、ボールをはじき返す技術も、高校生としては上位レベルに位置するだろう。

 ただこれは、あくまでも高校レベルの話であり、プロに混ぜてしまえば、アベレージ打者でも長距離打者でもないと言う、中途半端な位置づけになる。そういった中、守備や走塁でアピールできるほどのものがあるか、まだ高い総合力でまとまっていれば好いが、そこまで図抜けたものは感じないと言うのが、彼を見てきた感想だ。

 そういった意味では、堂上直倫(中日)内野手のように、プロで生き残る術を見出すには、少し時間が必要なタイプかもしれない。その特徴に欠けた堂上と比べても、この吉川はワンランク劣る印象は否めない。

 今回指名リストには入れることにするが、プロで大成するには、まだまだ乗り越えないと行けない壁は多そうだ。この選手、一軍でモノになるには、見た目以上に時間がかかるかもしれない。獲得する球団には、少し長い目で見て頂きたい!


蔵の評価:
 (下位指名級)


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・夏)




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吉川 大幾(PL学園)遊撃 176/68 右/右


 2010年度の高校生野手の中でも、その注目度は現時点でNO.1。あのPL学園の先輩・立浪和義(中日)の高校時代と比較すらされることも少なくない。上位指名確実と言われる大物選手を、今回は確認してきた。


(第一印象)

 正確に言うと、昨年も春季大阪大会や福岡県の招待試合で、彼のプレーを生で観戦している。ただその頃は、下級生と言うこともあり、好い選手だなと単純に思ってみていた。しかし最終学年となると、その見方は完全に長所を探す目から、欠点・課題を探す厳しいものに変わる。そんな目でみた、吉川 大機 は、どのように見えたのだろうか?

 パッとみ体も中背だし、その雰囲気からは、高卒でプロに行くような雰囲気を漂わしてはおらず、極普通の高校生と言う印象を受けた。何故そう感じたのか?少しずつ検証してみたい。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.3秒強ぐらい。これを左打者に換算すると4.0秒強ぐらいに相当する。通常プロの基準となるのは、左打者換算で4.2秒ぐらい。そう考えると、充分にプロでも通用する脚力であるように思える。実際にトップスピードまでの加速も早く、プロに混ぜても俊足の部類だろう。ただプロで足を売りにするとなると、塁間を3.8秒前後の脚力に、高い走塁センス・盗塁できる勇気が求められる。そういった意味では、プロで足を売りにできるほどのものがあるのか?といわれれば、そこまでのスピードはないと判断する。

 昨夏までは外野手だったわけだが、秋からショートにコンバートされた。遊撃手のプレーを見るのは始めただったわけだが、打球への反応・フットワークの動き・グラブ捌きの柔らかさ・動作のスピード感などを観ていると、球際などは悪くないが、ドラフト候補としては平均的でプロの遊撃手と見るのは厳しいだろう。将来的には、二塁ができれば大きいが、三塁か外野手あたりが、その守備力・身体能力的にも適当だと思われる。ただこれらのポジションを担うには、ある程度の長打力が求められる。

 また地肩に関しても、外野手としては結構強そうに見えたが、遊撃手としては平均的なレベル。けして強肩で魅了するような圧倒的な地肩の持ち主ではない。守備・走力共に、プロ売りにできるほどの絶対的なものはなく、この点では高校生でありながら、全国のアマチュアで一番上手かったのではないかと(大学・社会人)、当時思わせてくれた立浪とは格段にレベルの差を感じる。

動画:吉川 大機(大阪・PL学園)中堅


(打撃内容)

 吉川は、けして体も大きくないし、実際の打撃を見ていても、長距離打者と言うよりは、広角に打ち返す中距離打者のイメージが強い。今のプロ野球界で言えば、長野久義(巨人)を更に、小さくした感じの選手だろうか?


(打撃フォーム)

 前足を軽く引いて、カカトとんとんして打席に立つ。グリップを高めに添えた強打者スタイルで、腰の座り・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢などもよく、力みのない好い構えだと思う。

 ただ仕掛けは「早すぎる仕掛け」を採用。投手の重心が上がりきったあたりで始動してしまうので、投手が自分の意思でフォームの「間」を変えられてしまうと、翻弄されやすい仕掛けとなる。そのためプロでは、ここまで早い段階の仕掛けを採用する選手は、ほとんどいないはずだ。始動は、投手の重心が落ち始めてからでも充分だろう。

 足をしっかり引き上げ、長い時間空中でキープするバランスの維持が難しいフォームだ。それでも早めに始動し、足を回し込んで踏み込むので、スピードの変化には対応しやすいスタイルだ。少し腰の回転を活かして、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップ。それでも足元のブレも小さく、外角の球にも対応できる融通さがある。

 また早めに、打撃の準備である「トップ」を作り、そこからバットを振り下ろして来る。そのため早い球にも立ち遅れることはない。ボールを捉えるまでにも大きなロスはなく、ボールを捉えてからもフォロースルーを活かして、ボールを遠くに運ぶことができる。スイングの強さ・鋭さなども、昨年からすでに、ドラフト級のものを持っている。技術と言う意味では、すでに大学・社会人レベルにあり、完成度は高い。


(打撃のまとめ)

 ボールを捉えるセンス・甘い球を逃さない鋭さ・打撃技術の高さ・広角に打ち返し、緩急にも強い幅の広い打撃・プロの基準レベルのヘッドスピードなどなど、高校生としては、すでに完成度の高い技術を持ち合わせている。逆に言えば、スケール・奥行きなどの伸び代を感じさせてくれる部分には乏しく、素材としての面白味にも欠けると言う感じもしなくはない。確かに好い選手なのだが、それが高校生としてなのか?プロに混ぜてもそうなのか?と言われると、非常に疑問を持たざるえない部分なのだ。


<意識づけ>

 むしろ高校生に求めたいのは、完成度の高い技術よりも、圧倒的な肉体のポテンシャルと、プロで飯を食って行こうと言う気構えである。そういった意味では、ネクストバッターボックスでも、相手投手の投球を見つめてはいるが、何処まで考えているのかは微妙な感じ。打席に入るまでの素振りなども、あまり意図を持って振っている感じは受けなかった。また打席のラインを踏まない、きめ細かさは感じられるものの、足場の慣らし方などを観ていると、それほど打撃に、こだわりはないのかなと言う印象を受ける。甘い球を逃さない集中力は感じられるものの、まだまだ言われたことはしっかりやっても、自分で何かを見出し切り開いて行くと言う、プロ意識・精神の成熟さは感じられず、強豪大学や社会人で揉まれてからの方が、この選手は好いのではないかとさえ思えてくる。


(今後に向けて)

 極めて身体能力が高いわけでも、体格にも恵まれているわけでもない。それでいて技術は高くても、意識が特別高いわけでもない。ボールを飛ばす天性の才能とか、ボールを捉える天性のセンスなどが感じられるタイプではないので、私は、どうしてプロがそこまで騒ぐほどの選手なのか?正直よくわからない。

 一つ間違えれば、プロで何の特徴も見いだせない中途半端な選手。そんな選手に埋もれてしまう可能性すら感じてしまう危うい存在。私には彼が、高校からプロに入る選手には残念ながら見えなかった。夏まで追いかけたいとは思うが、今のままならば、あるいは今後確認できないで終わった場合、指名リストに彼の名前を記すことはないだろう。夏までの更なる進化を期待してみたい。


蔵の評価:追跡級


(2010年・春季大阪大会)





吉川 大幾(大阪・PL学園)中堅 175/69 右/右

(どんな選手?)

 夏の大阪予選では、あの清原和博の記録に並ぶ5本塁打を放ち、一躍注目された選手です。センバツ企画の「飛ばし屋を探せ!」でも、センバツ出場中、第4位の本塁打率を誇る選手としてご紹介した選手でもありました。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.55秒前後。これを左打者換算にすると4.25秒前後と基準レベルに近い脚力の持ち主です。大阪予選では、8試合で6盗塁を記録するなど、春まであまり観られなかった積極的な走塁が観られるようになったのは、成長の証だと思います。

 ただ中堅手としては、中々動きの良い選手で、キャッチングなども中々良いですし、地肩も結構強そうです。この点では、上のレベルでも充分通用するものがあると思います。

(打撃内容)

 スクエアスタンスで構え、前足のカカトをトントンして揺らぎます。早めに足を引き上げ、回し込んで打ちに来ると言う、幅の広い打撃が身上。それだけに打てるポイントは広く対応力の高さがある選手で、大阪予選でも打率.429厘をマークしておりました。ただ夏の聖光学院戦では、外角低めのカーブをセンター前にはじき返しただけで、自慢の長打力を示すことなく甲子園をあとにしたことは残念でした。

 たださすがの本塁打を放つように、ヘッドスピードはすでにドラフト級のスイングをしており、それでいて、ある程度の対応力もあることから、来年も引き続き注目される存在だと思います。

(今後は)

 打撃スタイルからも、長打力はあるものの、本質はスラッガーではないと思います。パンチの効いた打撃と、三拍子バランスの取れた総合力でアピールしたいタイプです。

 それだけのポテンシャルはある選手なので、来夏に向けて順調に成長して行けば、面白い存在の1人になるのではないのでしょうか。ライバル観野 甲輝と共に切磋琢磨して、高いレベルを目指して欲しいと思います。
 

(2009年・夏)




楽天




(どんな選手?)

 PLの核弾頭を務める強打者の外野手です。バランスの取れた構えから、しっかりしたスイングが出来る選手で、三拍子揃った好選手です。また選抜特集企画「飛ばし屋を捜せ!」でも出場選手中4位の本塁打率を記録するパンチ力がある選手でもあります。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.55秒前後。これを左打者換算にすると4.25秒前後と基準レベルに近い脚力の持ち主です。新チーム結成以来の27試合で、盗塁は僅か2個。走力で一番を勤めていると言うよりは、その打力が買われての起用のようです。

 ただ中堅手としては、中々動きの良い選手で、キャッチングなども中々良いですし、地肩も結構強そうです。この点では、上のレベルでも充分通用するものがあると思います。

 走力は並レベルですが、守備力は安定しており、走守に破綻のないレベルの選手です。

(打撃)

 バランスの取れた構えから、広角に打ち返せる打者です。三振率は、12.5%とそれほど低くないのですが、ボールを捉えるセンスは悪くないように思えます。ヘッドスピードも基準以上ですし、これから来年に向けて期待出来る選手だと思います。

(今後は)

 高卒プロといった圧倒的なものは感じないのですが、高校生としては上位レベルの外野手として活躍することが期待されます。来年までにどのぐらいの器になっているのかわかりませんが、すでに一定レベル以上まで来ているので、期待出来るのではないのでしょうか。今後の更なる成長を期待してみたいです。

(2009年・センバツ)