又野 知弥(南北海道・北照)投手 187/84 右/右 |
「打者・又野 知弥!」 昨年の秋~選抜までの間では、投手としての才能を大きく開花。しかし選抜~夏にかけては、むしろ投手としての成長は乏しく、非凡な長打力を活かした打撃に大きな進歩を見せた。そこで今回は、野手・又野 知弥 を考察してみたい。 (プレースタイル) 184センチ84キロの巨体を活かした、抜群の長打力が、この選手の最大の魅力。足を売りにするとか、守備が魅力と言うタイプではない。上のレベルでも、長打力が期待される素材として注目される。 (守備・走塁面) 大型の割には、フィールディングの動きは好く、鍛えようによっては、一塁だけでなく三塁あたりでものになるかもしれない。ただやはり大型なので、打球への反応は悪くないが、動作のスピード感・きめ細やかさに欠け、走力もある選手ではないので、守備面では今のところ多くは望めない気がする。 残念ながら文句なしの打球が多く、一塁までの到達タイムは計測できず。実際のプレーを観てもそうですが、南北海道大会の6試合を見ても盗塁は0。足でアピールするタイプではありません。 守備での可能性は残されているものの、現状は、守備・走力共に割り引いて考えたいタイプ。ただプロに混ぜても長距離打者と言う期待込められているので、その辺は大きな問題ではないような気が致します。 (打撃内容) この選手を今まであまり評価してこなかったのは、ボールを捉えるセンスが、根本的に欠けていた気がするから。当たればポ~ンと対空時間の長い打球が飛んで行きますが、打てるボール・ポイントが限られているように感じられたからです。打球のほとんどは、センターからレフト方向へ偏っています(夏の長崎日大戦ではライト前の当たりもありましたが)。本塁打のほとんどは、恐らくレフトスタンドではないのでしょうか。完全に技術よりも、持って生まれた圧倒的なパワーと金属バットの恩恵に依存した打撃であり、個人的にはあまり好みではありませんでした。 <構え> ☆☆ 前足を軽く引いて、軸足に体重を預けて立ちます。グリップを高めに添えた強打者スタイルなのですが、腰の据わり・全体のバランス。両目で前を見据える姿勢もイマイチ。また特に自分のリズムを刻むような「揺らぎ」も見られず、何処か脆い印象は構えから受けます。 <仕掛け> 遅めの仕掛け ボールをよ~く引きつけてから始動する「遅めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、多くの長距離打者が採用するスタイルで、仕掛けの観点からも天性のスラッガーであることが伺われます。彼のように、長打を期待されているタイプだけに、この本質が「スラッガー」でなることは、大きな後押しにありそうです。 <下半身> ☆☆☆ 始動自体は遅い割に、足をまわしこんでから踏み込むので、少々スピードボールに苦労する可能はあります。外角よりの球も打てるように、ベース側にインステップして来るのですが、踏み込んだ足下が早くから地面から離れる、巻き込み型のスイングを致します。そのため打球の多くは、レフト方向へ引っ張る形になります。この偏ったスイングが、打撃の幅を狭めていると言えそうです。 <上半身> ☆☆☆ 打撃の準備段階である「トップ」を作るまでは、少し遅れがちの気が致します。ただ「トップ」自体は深いので、弓矢の弓を深く引くが如く、打球は強烈です。ボールを捉えるまでのスイング軌道が、肘が下がってしまい遠回りでロスを感じます。この辺が、対応力がイマイチ低く見えてしまう要因でしょうか。 ただそれでも、バットの先端を下げることなく振り抜けているので、ドアスイングと言うほどではありません。ボールを捉えてからは、フォロースルーを効かしボールを遠くに運んでおります。 <軸> ☆☆☆ 足の上げ下げは見られるので、ボールを捉えるまでの目線は平均的。ただ多少開きが早いフォームなのですが、足のカカトを地面にめり込ませることで最小限に留めております。軸足には強さ感じられ、長距離打者に不可欠な軸足の強さを持っております。 (打撃のまとめ) 一定レベル以上のスピードボールや的確にボールを捉える技術に課題を残します。しかし天性の身体の強さに加え、仕掛け・フォロースルー・軸足の強さと言う観点では、上のレベルでも長打力を売りにできる和製大砲候補として期待できます。ただ個人的には、ボールを捉えるセンスも評価しておらずその辺が将来的に改善できるかにかかっていると思います。 (最後に) 心技体三つの観点から考えた場合、昨秋から着実な成長を魅せている成長力・試合で魅せる反応の良さから見ても、野球への意識は低くないだろう。技術的には、まだまだ課題も多いのだが、高校生の場合・才能・ポテンシャルがあれば、技術的な部分は大きな問題ではない。また才能の部分でも、天性のボールを飛ばせる能力に加え、仕掛け・フォロースルー・軸足の強さからも、長打力を売りにできる数少ない素材であるのは間違いない。 ただ根本的に、ボールを捉えるセンス・技術的な課題も少なくなく、ファームならば結果を出せても、それが一軍のレギュラーまで昇り詰められるかどうかは、現状疑問に思う。ただこういった長打を売りにする選手を育てるのが下手なアマ球界の現状を考えると、大成するかは微妙にせよ、できるだけ早く、プロの環境・指導者の下、野球に専念する方が好いのではないのだろうか。そういった貴重な資質の部分・春よりは劣化したとはいえ、選抜で☆☆を付けた評価も加味して、指名リストに名前を残そうと思う。個人的に投手と野手としての評価は、現状五分五分。ただ長距離砲の希少価値から見ても、打者として育てられることになりそうだ。 蔵の評価:☆ (下位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |
又野 知弥(南北海道・北照)投手186/81 右/右 |
昨秋見た時は、正直癖のあるフォームに、課題の多いピッチングスタイルで、正直どうかな?と思っていた。しかし、この一冬の間に大きく成長。投打に高いポテンシャルを示し、高卒プロでの可能性をグッと手元に引き寄せた大会となった。 (投球内容) 球速こそ130キロ台後半~MAX142キロぐらいと、数字の上ではそれほど秋と変わっていない。投球フォームにタメを作ることで、ウエートの乗ったズシリと重い本物のストレートを投げ込めるようになってきた。また変化球も、横滑りするスライダーにキレを増し、この球で三振を奪うケースが目立つ。更にたまにではあるが、カーブのような緩い球も織り交ぜるが、基本的には速球とスライダーとのコンビネーションと考えて良いだろう。 最大の成長は、投球フォームにタメを作れ、その投球にもフォームにも「間」が取れるようになったこと。これにより一辺倒だった投球が、だいぶ状況に応じたピッチングができるようになってきた。これにも加え制球が安定し、右打者にも左打者にも、外角にしっかりコントロールできるようになった。その外角に 切れ味を増したスライダーをピュッと投げ込むと、打者は思わず振ってしまうのだ。 クィックも、1.05~1.15秒前後にまとめられる、かなり素早い。また185センチを越えるような大型なのだが、フィールディングも俊敏。野手としても、三塁手あたりならばと期待を持たせるものがあった。秋までは、ただ投げ込んでいるだけといった感じの投手であったが、今は一つ一つ考え、地に足の着いた投球ができるようになったところが、最大の成長ではないのだろうか。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、静かに「間」を意識して投げ込んできます。お尻を一塁側に落とせるフォームではないので、将来的にカーブやフォーク系の球を武器にするのは厳しいと思います。ただ着地までの時間は稼げているので、ある程度の変化球は、修得可能だと思われます。 グラブを内に最後までしっかり抱えることを意識できており、両サイドへの制球は安定してきました。足の甲の押しつけの浅いフォームなので、全体的に腰高な印象は受けます。ただ体重移動と言うことを考えると、彼には今ぐらいのステップが良いのではないかと思います。 最大の課題は、フォームが直線的で見やすいだけでなく、そのまま「開き」も早くボールが見やすい点です。そのため球威・球速を重点的に鍛えるのではなく、投球フォーム・制球を磨いてきた点は正しい判断だったのではないかと思います。また「球持ち」も、腕をブンと強引に振るタイプなので、ボールが伸びたりするよりは、球威で詰まらせるのがこの投手の持ち味。ただ上半身の強さを活かし腕は振れるので、変化球は打者が振ってくれる可能性が広がります。 「体重移動」は、股関節が硬いタイプなので、無理に下半身を使おうとするよりは、今のように前へグッと一伸びして「着地」を遅らせる程度のもので、充分だと思われます。着地を遅らせることを意識できるようになり、秋までは大きく課題を抱えていたフォームにも、だいぶ改善が見られました。 (今後に向けて) 秋までは、恵まれた肉体に頼った素材型だと思っていました。しかし一冬越えて、大きくその資質を伸ばしてこられた努力できる才能・自分の身体をコントロールできるセンス・何より現状に満足することなく進化することに挑む勇気は、高く評価したいと思います。またそのプレーの端々から、貪欲さを強く感じさせてくれるプレーヤーであり、ポテンシャルだけでなく、それを活かして行こうと言う精神的な部分でも、高卒でプロに行ける資質があると考えます。 打撃に関しては、身体が強くパワーがあるので、非常に捉えた打球は飛んで行きます。更に大型の割に、緩慢さのない動作からも、野手としての可能性も強く感じさせます。ただ現状は、投手としても評価できる部分は多く、そちらでみたい選手でした。まだまだ単調なコンビネーションなど、今後自分の引き出しを如何に増やして行けるのかと言う課題が残るものの、貪欲に野球に取り組める真摯な姿勢・秋~春にかけて積極的にフォームをいじってきた器用さと勇気などは、まだまだ伸びて行ける素材だと思います。現時点では、下位指名級と言う評価に留まりますが、夏には更に中位級までの成長は期待できると思います。選抜組でも数少ない、高卒で指名を意識できる選手ではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2010年 選抜) |
又野 知弥(南北海道・北照)投手186/81 右/右 |
(どんな選手?) 力任せに上体に頼ったフォームながら、MAX141キロを記録する右腕として北海道では注目されてきた存在です。またタレント揃い北照打線でも4番を務めるなど、ポテンシャルの高さが自慢です。 (投球内容) ノーワインドアップから下半身が使えずに、上体をブンと振って投げ込む強引な投球フォームです。球速は、135~MAX141キロぐらいで、それなりに球威も感じさせてくれます。変化球は、カーブ・スライダーを多く織り交ぜ投球を組み立てつつ、たまにフォークらしき縦の変化球も見受けられます。 フィールディング・クィックは平均レベルですが、牽制は悪くありません。制球は、かなり球にバラツキが目立ち、細かいコントロールは無さそうです。ただ真ん中近辺に甘く入る球は殆ど無く、外に外へと散る傾向が有り、打者としては的が絞りにくい荒れ球投手。 投球フォームは、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」など、すべてに大きな課題を抱えており、かなり修正が厳しい癖のあるフォームです。ただ強引ではあるのですが、腕を強く振れる点では好感が持てますし、投げ終わった後のバランスは大きく崩れることはありません。投手としてのインテリジェンス・身のこなしからセンスは全く感じないのですが、返って荒れ球で、打者としては厄介なタイプかもしれません。 (今後は) 打撃にもミートセンスや技術の高さは感じませんし、投球も前述の通りです。ただこの選手の持っている馬力と言いますか、肉体のパワーから来るポテンシャルの高さが、この時期の高校生としては投打に圧倒出来るものがあります。 課題は、投打において、このポテンシャルを活かす術が身につけられる器用さやセンスがあるのかと言う部分になります。しかし残念ながら、私には上のレベルでも修正が厳しく、このポテンシャルを生かし切れないで終わる可能性は極めて高いのではないかと思っております。 ただ技術には欠けますが、ポテンシャルの高い高校生は、それだけ才能でありますから、とりあえず一冬超えた選抜までは注目してみたいかなと思います。どのように才能を磨く努力を続けてこられたのか、また周りの首脳陣が導いてこられたのか、選抜でのプレーぶりに期待してみたいと思います。「強い身体」、それだけで非凡な才能です! (2009年・神宮大会) |