10kp-37
伊藤 大智郎(愛知・誉)投手 174/65 右/右 |
「もっとでかい投手だと思っていた・・・」 右サイドに近いスリークオーター気味のフォームから、腕の振りを活かした好投手。スラッとした体型の持ち主で、もっと上背のある投手だと思っていた。残念ながら今年の投球の模様は確認できなかったので、昨夏の模様を元に寸評を作成したいと思う。今回も、最終学年での投球を確認できなかったので、評価づけはできないことを、あらかじめご了承願いたい。 (投球スタイル) ほとんどサイドに近いフォームで、腕の振りを活かしてポンポンとテンポよく投げ込んで来る投手です。最終学年では、制球力が自慢だと書いてありましたが、2年夏の時点では結構甘い球が多い投手との印象でした。ただこの投手、ランナーが背負うと間合いを計るなど、投球センスの片鱗を感じさせる投手で、球の威力よりも、そういったセンス・総合力で勝負するタイプではないのでしょうか。 (投球内容) ストレート MAX143キロ 私が確認したのは、昨夏の愛工大名電戦、リリーフとして登場してきた試合です。その当時は、まだ線が細く、常時125~130キロぐらい。最終回だけは、かなり力を入れて投げていて、MAXで135キロぐらいまで投げていた感じが致します。 ただ典型的なキレ型タイプなので、どうしても球威の無さが目立ちました。特にストライクゾーンにボールを集める制球力はあるのですが、結構真ん中近辺に余る入ることも多く、正直怖いなと言う印象は強かったです。 変化球 カーブ・スライダー・シンカー・ツーシーム 基本は、速球と横滑りするスライダー中心に組み立てます。それにシンカーや右打者の内角に沈むツーシームなどを織り交ぜてきます。2年生当時は、それほど三振を奪うような、絶対的な球種はありませんでした。 その他 牽制は、2年時から鋭いものがありました。クィックも1.1秒前後で投げ込める素早さもあります。ストライクを先行できるテンポの良さを、一転したランナーを背負ってからは、しっかり時間を取って投げ込めるなど、投球センスにも優れたタイプであるように思えます。 <右打者に対して> ☆☆☆ 外角に速球とスライダーとのコンビネーションで投球を組み立てます。ただ内角を厳しく突くこともでき、その球はツーシームで打者の手元で沈む傾向があります。その他にもシンカーやカーブがありましたが、それほど精度は高くなかったようで、あまり重要な場面では使ってきませんでした。また真ん中高め近辺に、時々甘く入るのも気になる材料です。 <左打者に対して> ☆☆ サイド投手の宿命なのが、左打者への投球。制球も、アバウトに両サイド投げ別ける程度です。左打者の内角に速球とスライダー、外角のストレートはやや抜け気味で高めに浮きます。 時折シンカーなども投げ込みますが、2年生当時は光る落差は観られませんでした。特に球威のない球が高めに浮き、ボールも浮きやすいので甘い球を痛打される場面が目立ちました。 (投球のまとめ) 最終学年において、球速も球威も増したのかもしれません。変化球の質・精度も高まったのかもしれません。そのおかげで、春季県大会では激戦の愛知地区で4強まで勝ち上がりました。 ただけして球威・球速で押すタイプと言うわけではない割に、制球力に甘さを残したり、武器となる変化球に欠けるところが、やはり育成枠だったのだろうな言う気はしております。上記の動画は、恐らく最終学年のものでしょうから、だいぶ身体付きは肉がついてきた印象は受けました。 (投球フォーム) 昨夏の模様をベースにしながらも、上記の動画と比較しながらみたいと思います。 <踏みだし> ☆☆☆ 足の横幅を広めに取り、ワインドアップから投げ込んできます。足を引き上げる勢いは平均的、足の高さはそれなりに高い位置まで引き上げられます。自分の「間」を取って投げ込む、先発タイプの投手だと思います。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆☆☆ それほど引き上げた足の膝から上に余裕があるように見えなかったのですが、今年の動画を観ると、かなり膝にも余裕を持てバランス良く立てているように見えます。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などの問題が生じる。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆ 引き上げた足をピンと地面に伸ばすので、お尻は一塁側に落ちるタイプではありません。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながる。ただサイドハンド系のフォームなので、そのことは気にしなくても良いだろう。 問題は、足を降ろすタイミング。前に足を逃がすことができており、着地のタイミングを遅らせることができている。ただ上記の動画では、ランナーを背負った場面でもあり、地面にもいち早く着地しており、着地までの粘りは感じられない。ちなみに着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ グラブは、最後まで内に抱えられている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになる ただ足の甲の押しつけは、浅く短い。足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。身体がガッチリしてきた今年は、もう少し両サイドの制球は安定してきたのかもしれないが、恐らくボールが浮く傾向はあまり変わっていなかったのかもしれない。 <球の行方> ☆☆ どうしてもサイド系のフォームの選手は、ボールの出所が見やすく、身体の開きは早くなってしまう。腕の角度は、もうほとんどサイドと言っても良い位置。「球持ち」もそれほどではなく、粘っこい球質ではけしてない。ボールを長く持つ意味としては 1,打者からタイミングが計りにくい 2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる 3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい などがあげられる。 <フィニッシュ> ☆☆☆ 腕の振りは鋭く長い腕は、投げ終わったあとも身体に絡んでいる。「体重移動」は平均的で、もの凄く前に体重が乗っていっていると言う感じはしない。その辺は、フォーム最後の地面の蹴り上げなどからも観てとれる。 (投球フォームのまとめ) サイド系投手なので、お尻が一塁側に落とせないのは致し方ない。そのため将来的に見分けの難しいカーブや縦の変化の修得は厳しいだろう。ただ投球の幅を広げること以上に、もっと変化球に磨きをかけて行かないと苦しいだろう。 グラブもしっかり抱えられ、重心の流れも抑えられるようになり、最終学年では両サイドの制球は安定したのではないのだろうか。ただ低めへの押し込みには、今も不安を残す。 身体への負担は小さそうなフォームなので、故障への可能性は少ないのでは?ただ投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「開き」の問題は、避けて通れない。開きを遅らせようとするよりも、着地までの間に、もう少しボールを隠す術を身につけたい。 楽天 (最後に) 球威で押すタイプではない割に、時々甘いところに来る怖さがあったり、武器になる変化球がないのは正直気になった。この部分を、この一年間の間に、充分改善できたのかには不安が残る。 高卒で無理してプロに入るべき素材だったのかは疑問だが、何処までこの一年で成長しているのかは気になるところ。ぜひ頭角を現し「フレッシュオールスター」あたりで、その勇姿を観てみたいところ。その日が来ることを、今から楽しみにしている。 この記事が参考になったという方は、ぜひ! |