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中崎 翔太(日南学園)投手 186/90 右/右 |
「弟は正統派!」 兄・雄太(西武)は、中背でスラッとした体型から投げ込む癖のあるスリークオーターだったが、弟の翔太は、巨体を活かし、何処かもっさりとした本格派右腕だった。 口蹄疫問題で揺れた2010年度の宮崎大会。準々決勝の佐土原戦の模様を、ダイジェストで確認。この試合で中崎は、リリーフとして登場。それだけに評価づけできるほどの材料は揃わないが、センターカメラからの投球を確認することで、少しだけどんな投手なのかイメージできた。今回は、極限られた情報の中から、この選手について考えてみたい。 (投球内容) まず一目観た印象は、デカイ! その骨太の体格のためか、ややもっさりした投手との印象。 ストレート 135~140 MAX145キロを記録すると言われるストレートだが、その投球を見る限り、アベレージでは135~140キロぐらいではないのだろうか。手元までのボールの勢い・伸びはもう一つで、どちらかと言うと球威型と言うことになるのだろうか。 変化球 スライダー・カーブ・ツーシーム 私が観た投球では、小さく横滑りするスライダーが最大の武器のように見えました。スライダーと言うよりは、手元で小さく曲がるカットボールのような球です。ツーシームなのか、ただシュート回転しているのか?わからないような球もありましたが、詳細はよくわかりません。 その他 マウンドを駆け下りて来る動作などを観ていると、少し緩慢に見えます。佐土原戦のダイジェストでは、ピッチャー前へのセーフティバントで内野安打されておりました。クィックは、1.1秒前後と素早く、牽制に関してはわかりません。 (投球のまとめ) ランナー背負っても、冷静にマウンドを外すなど、投手らしい一面が見られます。また全体的に少しボールは高いのですが、両サイドに球を投げ分けられ、細かいコントロールはなくても、ストライクゾーンに球を集めるのは苦にしないタイプかと思います。 けして素材型と言う荒々しさはないのですが、まだまだ肉体のキレ・総合力で発展途上の投手なのではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度は、情報不足を補うために、投球フォームを分析することで、少しイメージに近づけたい。 <踏み出し> ☆☆☆ 足の横幅は、肩幅より少し広いぐらいでバランス良く立ちます。ワインドアップで振りかぶり、足を引き上げる勢い・高さは平均的でしょうか。 こうやってみると、馬力こそ感じますが、けして勢いで押すリリーフ型と言うよりは、意外に自分のテンポ・間を重視した先発型であるように思えます。 <軸足の乗せとバランス> ☆☆☆ 軸足の膝から上がピンと真上に伸び気味で、膝に余裕がありません。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などの問題が生じる。彼の場合、膝に余裕がないわりには、全体のバランス・軸足への乗せは悪くない。 <お尻の落としと着地> ☆☆ 引き上げた足を空中でピンと伸ばす動作がなく、足を折ったままの投球フォームです。そのため、お尻の一塁側への落としは甘め。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に落ちるフォークの修得に苦労します。彼の変化球が、ストレートを微妙に変化させるようなカットボール気味なスライダーやツーシームを武器にするのも、そのせいかもしれません。将来的にプロで使えるような見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるようなフォークの修得は厳しいそうです。 また「着地」までの粘りもなく、あっさり地面を捉えます。着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 彼の場合、フォームに粘りがなく淡白との印象を受けます。これでは、球速を磨いても、その効果は薄い可能性があります。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ グラブは最後まで、内に抱えられております。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになる。彼の場合、両サイドへの投げ分けは、それほど悪いように見えないのも、このせいか? ただ足の甲での押し付けは浅く、やや腰高のフォームになっている。足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。実際彼の球筋は、真ん中~高めに集まりやすいように見えた。 <球の行方> ☆☆ テイクバックする段階で、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、打者にまっすぐに伸びてしまいがち。すなわちボールを隠すことができておらず、「開き」の早く球の出どころが見やすい。 腕を振り出す角度はあるものの、無理に引き上げている感じはしなかった。ただ少しボールを押し出すような感じのフォームなので、テイクバックした時に肘は、前の肩と後ろの肩を結ぶラインよりも、上にしてから投げたい。 「球持ち」は、少し早い気がする。ボールを長く持つ意味としては 1,打者からタイミングが計りにくい 2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる 3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい などがあげられる。 <フィニッシュ> ☆☆☆ 腕は角度良く、振りきれている。ただ「体重移動」は不十分で、後の動作にエネルギーが伝えきれていない。そのため前にしっかり体重が乗らず、ボールに勢いが出てこないのだ。 (投球フォームのまとめ) お尻が落とせない上に、着地までの粘りに欠けるので、将来的に球種を増やし投球の幅を広げてゆくのには苦労しそうです。 グラブは抱えられているので、両サイドの制球は安定しておりますが、足の甲の甘さから、ボールが上吊る傾向があります。キレ・伸びに欠けるストレートが高めに浮いたら、プロの打者は見逃してくれません。 それほど無理のないフォームの上に、使い減りしなそうな体付きなので、タフな活躍は期待できるかもしれません。 ただ投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」と、すべてに課題を残します。実戦的なフォームからは程遠く、プロに通用する術を身につけるのには時間がかかりそうです。 楽天 (最後に) ほんの5球程度しか観ていないので、評価づけはできません。ただ投げ込まれる球の勢いは、ドラフト指名選手としてはやや劣ります。更に投球フォームには課題が多く、実戦型とは言えません。 そのことを考えると、もう少し投球をじっくり観たとしても、恐らく指名リストに名前を載せるような「旬」の時期には思えなかったと思います。かなり課題は多く、時間はかかる素材だと思われます。 思ったほど荒々しい素材型と言うよりは、投球ができるタイプとの印象を受けました。まずは、プロに必要な体のキレを身につけ、一つずつ課題を乗り越えて行って欲しいと思います。まず一年目は、ファームで基礎体力・基礎技術の修得に取り組み、実戦での登板が増えるのは2年目以降だと考えられます。その時に、どんな投球ができるのかにかかっているのではないのでしょうか。 この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |