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秋山 翔吾(西武)外野手のルーキー回顧へ



秋山 翔吾(八戸大)右翼 183/82 右/左 (創学館出身)





                     「最終確認!」





 下記の寸評にもあるように、6月の大学選手権の時点で、
を付け指名リストに残すことを決めていた秋山 翔吾。西武に3位指名された後も、秋の神宮大会にも出場することが決まり、改めて彼の最終確認を行ってみた。


(リーグ成績)


年度 試合数 本塁打 打点 盗塁 打率
1年春 .364
1年秋 10 359
2年春 10 .243
2年秋 10 .270
3年春 10 .226
3年秋 10 .353
4年春 10 14 .486
4年秋 10 .343

 1年春・3年秋・4年春と3度のベストナインに選出。特に4年春には、リーグMVPにも輝いている。特に4年春のシーズンにおいて、打点王と首位打者を獲得するなど、最終学年になり大いにその存在感をアピールできた。ここで、大学野手の実績の見方を説明したい。

1,リーグ戦で3本塁打以上は◯、5本塁打以上は◎

 1シーズンに、10試合ぐらいしかない大学生の試合においては、通常3本ぐらい放てば、ホームランのタイトルが獲得できる。更にプロと言う領域で考えるならば、5本塁打以上放つようだと申し分ない。秋山選手の場合、一年春で3本塁打こそ放ったが、この成績からもパンチ力はあるものの、けして長距離打者ではないことが伺われる。

2、打点は5点以上で◯、10点以上で◎

 5点以上の打点を稼いでシーズンが、実に8シーズン。更に文句なしの14打点の経験があるなど、かなり勝負強い打者であることが伺われる。

3、盗塁も5盗塁以上は◯、10盗塁以上は◎

 過去4シーズンで、5盗塁以上をマーク。特にに最終学年では、春・秋の両シーズンで走塁でもアピールできた。

4,打率は、3割5分以上が目安。4年間で一度ぐらいは、4割を超えていたい。

 3割5分以上を4回マーク。更に1シーズンは、文句なしの.486厘と言うハイアベレージを記録して、潜在能力の高さを示すことができた。ただその他のシーズンは、3割5分前後であり、地方リーグであることを割り引くと、やや対応力には不安が残る部分もある。


(データからわかること)

 1年春から鳴物入りでリーグ戦に登場し、その実力を示してきた。途中の2年時~3年春まで低迷するが、3年秋に復活。4年時は、極めて高いモチベーションで、プロに強烈なアピールをすることができた。





(走塁面)

 一塁までの塁間は、4.0~4.1秒台ぐらい。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。特に最終学年に入り、より盗塁への意欲が強くなってきた点は評価する。高校時代は、細身のスラッとした体型だった選手だったが、今はかなりウエートトレなどを行ってきたのか?身体が分厚くなった。その分動きが重苦しくなって見えていたが、実際のところは入学当時よりも、走力でアピールすることが多くなってきている。プロでも足が武器と言うほどではないにしても、、年間10~20盗塁ぐらいは期待できるかもしれない。

(守備面)

 高校時代は、あまり打球への勘が良い印象がなかった。しかしこの4年間で、だいぶ外野手のそれらしくなってきた。何より春先の試合前練習では、基準レベル以上の地肩はあるように見えたが、今回の神宮大会では、その強肩ぶりを遺憾なくアピール。プロでも肩を売りにできるぐらいの強さがあることがわかった。この点でも、高く評価して良いだろう。


 こと守備・走塁は、プロレベルに混ぜて中の上程度かと思っていたが、実際にはもう少し上のレベルであるように思えてきた。プロでもある程度走れる脚力と刺せる肩がある選手だと評価したい。この点では、私の評価は、春よりもワンランク上がった





(打撃スタイル)

 1年春こそ、3本塁打を放ち長打の片鱗を魅せたものの、その後のシーズンでは0~2本程度と、パンチ力がある程度に留まっている。元来オーバーフェンスを得意とするタイプと言うよりは、野手の間や上を抜けて行くような中距離タイプの打者だろう。特に成績の中で際立つのは、打点の多い勝負強さに現れている。

(打撃フォーム)

 下記の寸評にもフォーム分析が載っているので、春との違いについて注目してみたい。

<構え> 
☆☆☆

 春よりも前の足の引きが小さくなった気が致します。グリップの高さは平均的で、捕手側にかなり引いて添えるようになりました。腰の据わり・全体のバランスは並みぐらいですが、両目でしっかり前を見据えられているのは良いです。グリップ付近も軽く揺らぎ、緊張感の中にも、力み過ぎない工夫が見られます。ただ構えとしては、春の方が理にかなっていた気が致します。

<仕掛け> 
早めの仕掛け

 仕掛けのタイミングは、春と同じです。

<下半身> 
☆☆☆☆

 下半身の動作は、春と変わりません。

<上半身> 
☆☆☆

 バットを引くのが遅れ気味で、トップを作るのが遅れます。そのため速い球に立ち遅れやすいです。バットを上から下ろす意識を持つことで、「トップ」~「インパクト」までのスイングロスは少なくなりました。ただその分、ボールを捉える際にバットの先端が下がり気味で、ボールを広い面で捉えられなくなり、打ち損じが増えたのではないのでしょうか?

 また非常に大きな弧を描きつつ、フォロースルーまで力強く振りぬきます。フォロースルーも、春よりもだいぶ高い位置まで引き上げられており、ボールを遠くに運ぼうと言う意識が感じられます。ただかなり強引なアッパースイングになってしまっていて、春の完成度の高かったスイングが、再び全国レベルぐらいになると、粗さが目立つ振りになっていました。

<軸> 
☆☆☆

 頭の動きは、春よりも大きくなってしまっている気が致します。開きは我慢でき、軸足も安定しております。少し動きが大きくなり、荒っぽいスイングに変わっていました。

(打撃のまとめ)

 より強打者としてアピールしたかったのか?ボールを遠くに運びたいと言う、強打者としての色彩を濃くした秋のフォームです。そのため粗くなった分、対応力が低下してしまいました。ただその辺の微妙な違いは、産みの苦しみと言った段階で、それほど悲観はしておりません。


楽天


(最後に)

 守備・走塁に関しては、プロでもソコソコ売りにできるレベルにあると評価を修正。ただ、その打撃に関しては、少しファームで漬け込まないと、プロでの活躍は厳しそうだ。

 今年は、明らかに目の色が変わってきて点が、春先から伝わってきました。そういった意識・意欲が実際のプレーに現れるのが魅力です。まだまだプロの一軍レベルの打者に比べるとモノ足りませんが、何年かすれば、一軍で通用できる選手に育つかもしれません。評価的には、春と大きな違いは感じられず、評価は春と同じにしたいと思います。高校時代から見守ってきた選手だけに、無事プロ入りを実現できたことは、個人的に大変感慨深いものがありました。プロでの活躍を、祈っております。


蔵の評価:
 (下位指名級)


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・神宮大会)







秋山 翔吾(八戸大)右翼 183/82 右/左 (創学館出身)





                         「今年はひと味違う!」





 
毎年八戸大は、関東に春遠征して来る。その時、秋山 翔吾 を見て、今年はひと味違うなと思わせてくれた。横浜創学館時代から、三拍子揃ったアスリート系選手として神奈川では話題の打者だった。しかし現在は、高校時代のスラッとした体型から、ウエートトレで培ったのだろうか?ガッチリした体格が目を惹くようになり、バリバリの強打者に変貌している。


(守備・走塁面)

 下記にある高校時代の寸評にもあるように、塁間は4.1秒ぐらいで、中の上レベル。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

 実際に今の彼のプレーを観る限り、足を売りにするほどのスピード感は感じられない。足を引っ張るほどではないと思うが、積極的に盗塁を決められるほどのものはなさそうだ。

 高校時代は、身体能力はソコソコあったものの、打球への勘はよくなかった。しかし大学の4年間の間に、その辺は随分と解消されている気がする。また地肩も中の上レベルはあり、守備・走力共に、中の上レベルはあると考えて良いのではないのだろうか。


楽天


(打撃スタイル)

 そうなると指名の正否を決めるのは、打撃内容となる。けして長距離砲ではなく、むしろ対応力を重視したスタイル。今年の大学選手権の佛教大戦でも、ライト前や一二塁間を抜いてのヒットを放った。打球もオーバーフェンスと言うよりは、二塁打・三塁打を放つような、野手の間を抜けて行くような長打が多い。広角に打てる中距離ヒッタータイプと考えて良いのではないのだろうか。ちなみに春のリーグ戦では、打率.486厘で首位打者に輝き、1本塁打 14打点と言う圧倒的な数字を残し、リーグ3度目のベストナインに輝いている。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆☆

 前の足を引いて、ボールを見やすい体勢で構え、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり・全体のバランス。両目で前を見据える姿勢なども良く、理にかなった構えです。

 自分のリズムを刻んで打席に立てておりますし、リーグでの圧倒的な実績が、自信となってある種の余裕を感じさせます。

<仕掛け> 早めの仕掛け  投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動

 これが、現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな変化に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者は、この仕掛けを採用するケースが多い。ちなみに今回の熊代選手は、この段階での仕掛けを採用しており、
現在アベレージ打者の傾向が強いことがわかる。

<下半身> 
☆☆☆☆

 早めに引き上げた足を、地面に着きそうなところまで降ろしつつも、着地のタイミングを図る対応力の高い踏み込みができる選手です。そのため緩急などで、タイミングが狂わされにくいタイプです。

 真っ直ぐ踏み込むタイプなので、内角でも外角でも無難に対応できるタイプです。踏み込んだ足下のカカトを地面にめり込ませることで、インパクトの際の足下のブレを最小限に抑えることができています。

 タイミングの合わせ方、踏み込みの強さなどには非凡なものがあり、対応力の高い打撃が実現できているのも頷けます。下記の高校時代の寸評と比べると、いろいろ進化していることがわかります。

<上半身> 
☆☆☆

 打撃の準備段階であるトップ(バットを振り出す位置)に、バットを持って来るのが少し遅いです。そのためスピードボールに差し込まれやすいタイプだと思います。トップ自体は、弓矢の弓を強く引くが如く、しっかり深く取れているので、打球には勢いが生まれます。

 ボールを捉えるまでのスイングには可も不可もなしと言った感じで、インパクトの際にもバットの先端が下がることなく振り抜けているので、フェアゾーンにボールを落とす確率は高そうです。

 スイングの弧も大きく、最後までしっかりバットが振り切れております。その辺は、高校時代のひ弱なイメージとは違い、今は力強さを感じさせます。ただフォロースルーの段階で、グリップを高い位置まで引き上げて来るようなタイプではないので、打球を遠くに運ぶと言うよりは、野手の間を鋭く抜いて行くタイプかと思います。高校時代の方が、仕掛けのタイミング・フォロースルーの形などを見ると、ボールを遠くに飛ばす傾向が強かったようです。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭の動きも小さいので、目線は大きく上下動しないので、ボールを的確に捉えやすいはずです。身体の開きも我慢できておりますし、軸足にも力強さを感じます。体軸がしっかりした選手だと言えるでしょう。

(打撃のまとめ)

 技術的には、「トップ」を作るのが立ち後れないことを注意すれば、しっかりしたものを持っております。ボールを捉えるセンスも良いですし、力感もプロの基準レベルに到達しております。プロに混ぜても、全く打てないとは考えられません。





(最後に)

 一番のネックになるのは、プロで何を売りにして行けるのか?と言うこと。守備・走力もソコソコ、打撃もそれなりとはいえ、長打力が売りのタイプではありません。それだけに、右の外野手を欲している球団ならば、リストアップすると思いますが、そういった選手が多いチームは、無理して混ぜても、埋もれてしまう可能性があります。

 そういった需要があれば、下位指名~育成枠レベルでの指名もありだと思います。ただそこから這い上がって来るには、もう一つキラリと光るものが欲しいかなと思います。ただすでに一定レベルに到達している選手なので、1年ぐらいファームで漬け込めば、2年目以降一軍を意識できる存在になるかもしれませんね。個人的には、ボールを的確にミートポイントで捉えられるセンスと三拍子のバランスを評価して指名リストに名前連ねてみたいと思います。できれば秋に、生でもう一度確認できればと思っております。


蔵の評価:
 (下位指名級)


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(2010年 大学選手権)








 昨夏の予選では、2番打者として出場。春季大会では、3番・中堅手で出場しており、チームの中心打者に成長している。特に秋には、4試合連続本塁打を放ち、神奈川を代表する強打者として注目されている存在だ。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.15秒前後。左打者としては、プロの基準を上回るなど、ソコソコの俊足選手である。上のレベルで足を売りにするのは厳しいが、足を引っ張ることはないだろう。

 中堅守備に関しては、地肩の強さは基準以上だ。上のレベルでも外野手として、やって行ける身体能力を兼ね備える。ただし打球への判断などが、まだまだで、キャッチング・打球への目測などにも課題を残す。当日センター前へのフライをダイビングキャッチするも、腕を巻き込んでしまい負傷退場するのだが、これも一歩目の反応がよければ、もう少し余裕のあるキャッチングが出来たのではないかと言う印象は受けた。

(打撃スタイル)

<対応> 初球か2球目あたりにスイングを仕掛けて来るなど、積極的なタイプだろう。

<狙い球> 速球に的を絞っていることが多い。

<打球> レフト方向やセカンド方向など両方向への打球が観られる

 4試合連続本塁打を放ったと言うことだが、本質的には思いっきりこそ良いが、スラッガーではない。むしろコースに逆らわず対応する好打者である印象さえ受ける。まだまだ線の細さも感じるので、それでも打球を飛ばすと言うことは、リストが強いのか球を捉えるタイミングに優れているものと思われる。

(打撃フォーム) 昨夏のフォームを参考

<構え> 
☆☆☆ 線が細く威圧感に欠ける

 ほんの少し前の足を引いているが、ほぼスクエアスタンスだと観て良いだろう。グリップは平均ぐらいの高さなのだが、身体に近くに置き、あらかじめ捕手側に添えられている。腰の据わり・バランスは並程度だが、前の見据え方はしっかりしている。ただまだまだ線の細さを感じさせ、構えた時の威圧感に欠ける。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 好打者に感じられたのは、この仕掛けの影響かもしれない。投手の重心が沈みきった底のあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力をバランスよく打ち分け中距離打者やポイントゲッタータイプが多く採用し、彼のプレースタイルにも合致している。

<足の運び> 
☆☆☆

アウトステップもカベをキープ

 足を引き上げ、大きくベースから離れた方向に踏み出すアウトステップ打者である。アウトステップに踏み出すと言うことは、真ん中~内角よりの球を強く意識したスタイルで、外角の球に対しては、強く叩くと言うよりも逆らわず流すことを意識したスタイルだ。彼の打撃を観ているとまさにそんな感じだ。

 ただ気になる点をあげるとすれば、かなり足を内側に送り込んでから踏み込むので、タイミングを一致させるのが難しいのが気になるところだ。ただし踏み込み自体は強く、足元もインパクトの際にブレないでスイング出来ている。アウトステップでも、アウトコースの球にもしっかり対応出来るのは、この足元の盤石さがカベを長くキープ出来るからだろう。

<リストワーク> 
☆☆☆

スイングの弧は大きい

 トップは非常に深く取っている。そのため少しグリップは奥に入り気味だが、悲観する程ヘッドの滑り出しは悪くない。上からバットを振り出す意識があるので、スイング軌道もインサイドアウトになって悪くない。無駄が少ない上に、スイングの弧は大きく、フォロースルーはしっかり取れていなくても、打球はツボにはまれず遠くに飛ばす術はある。

<軸> 
☆☆☆

打球を遠くに飛ばす資質は持っている

 頭の動きは並程度。アウトステップのために腰の逃げは早いが、足元が盤石なので、ある程度のところで開きを抑え込むことが出来ている。軸足は強く安定しており、打球を遠くに飛ばせる源は、この軸足の強さとスイングの弧に秘密があると思われる。

(最後に)

 怪我の度合いが、どの程度なのか心配される。ただ、まだまだ身体の芯には力強さを感じず、資質だけで本塁打を打っている部分もある。タイプ的には中距離打者なのだろうが、筋力が備わるに連れ、飛距離を活かすタイプへと変貌して行くかもしれない。大学・社会人と身体が出来上がって行くにつれ、どんな選手に育って行くのか注目される。

(2006年 4月20日更新)